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【ネーミング&ブランディング①】 商品価値を左右するネーミング

2026年04月17日
     
「麩の菓・おふや」の麩菓子「ころりふ」の三種セット
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 その昔、とある和菓子店の店主からこんな話を聞いたことがあった。

 「…旬の素材を使って新作の和菓子を考案する際、最初に考えるのは名称です。推敲(すいこう)を重ねて名称が決まったら、後は名称のイメージを大切にしながら形や色合い、味覚を試行錯誤

 その昔、とある和菓子店の店主からこんな話を聞いたことがあった。

 「…旬の素材を使って新作の和菓子を考案する際、最初に考えるのは名称です。推敲(すいこう)を重ねて名称が決まったら、後は名称のイメージを大切にしながら形や色合い、味覚を試行錯誤して…」

 基本的な生活の営みには不要な嗜好(しこう)品――和菓子はその最たる部類に入るのだろうが、ともあれ、そうした嗜好品にとっては見た目や味覚以上に「固有名称」が重要で、それが醸し出すイメージは商品価値を大きく左右するカギにもなっていることを示している。

 例えば、著名な東京銀座「宗家(そうけ) (みなもと) 吉兆庵(きっちょうあん)」の果実菓子には、シャインマスカットを求肥(ぎゅうひ)で包んだ「陸乃(りくの)宝珠(ほうじゅ)」、市田柿に(あん)を詰めた「粋甘粛(すいかんしゅく)」…といった名称が付けられている。

 実物を見なくとも日本や東洋の伝統文化、奥ゆかしい心や気品が伝わってくるようで、それは店名とも相まってさらに高貴な雰囲気を醸し出している。

 あるいは親しみやすい例で、静岡県三島市「()の菓・おふや」の「ころりふ」はどうだろう。

 一口サイズの麩に和三盆やメープルをまぶした菓子だが、彩り豊かで、頬張れば木の葉のように軽く上品に溶ける特性から「カラー+リーフ+麩」を凝縮。ポップでキュートな雰囲気をさりげなく伝える名称になった。

 こうした菓子類に比べて私たちの周囲にある農産物はどうか。

 例えば、「米」…それが生活必需品としての米なら、普通名称の「コメ」、もしくは品種名称の「コシヒカリ」などで十分に伝わる。

 しかし、栽培や品質、地域や歴史にこだわってブランド化をめざす米だとしたら「コメ」「コシヒカリ」ではその価値や雰囲気が伝わらない。

 ましてやニーズは細分化し、農産物にも嗜好性を求める昨今。ブランド化するような農産物なら、その価値を一瞬で伝える「固有名称」がいっそう重要になるだろう。

 そこで、本年度の連載では、嗜好性を追求する農産物のブランド化の際に不可欠な「固有名称」、つまりはネーミングの重要性や手法を筆者の経験から事例を交えながら解説したいと考えた。

 戦略体系の中でネーミングとは末端の戦術――商品計画に該当するが、それがブランド化を戦略的に構想する一つの端緒になれば、幸いである。

(つづく)

 事業戦略構築研究所AX代表 髙木響正

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