【ネーミング&ブランディング②】嗜好品に不可欠の心理的価値


前回「…ニーズは細分化し、農産物にも嗜好性が求められ…」と書いたが、理論的にはどういうことか、消費者が求める「価値」という観点から、戦後の日本をなぞって振り返ってみたい。
まず、戦後から昭和末期にかけて――収穫された農産物は「物
前回「…ニーズは細分化し、農産物にも嗜好性が求められ…」と書いたが、理論的にはどういうことか、消費者が求める「価値」という観点から、戦後の日本をなぞって振り返ってみたい。
まず、戦後から昭和末期にかけて――収穫された農産物は「物理的価値」さえ満たしていれば、十分だった時代である。
美味い不味いは関係ない。「空腹が満たせれば幸せ」「たくさん食べられれば嬉しい」という価値観で、これを捉えたのが大量生産・大量流通というシステムだった。
だが、平成期に移行すると――輸入農産物の危険性や偽装が問題視されるようになり、栽培では「無農薬・無化学肥料」や「安全安心」、流通では時間やエネルギーの無駄を省く「コンビニ」や「直販・直売」が台頭するようになっていく。
消費者は「物理的価値」だけでなく、少し賢くなって「知性的価値」という側面からも損得計算するようになった時代だ。
さらに平成中期になると――消費者は「物理的価値・知性的価値」だけでなく、「心理的価値」も含めて判断するようになった。
風味や食味の満足、視覚的・感性的な満足、虚栄心や自尊心の満足…といった、目に見えぬ心理的な価値まで求めるようになったのである。
これを示したのが図であるが、今後、私たちの農産物は、より明確に「日常的な必需品」と「非日常的な嗜好品」に二極化していくだろう。
また、ブランド化の範疇にある後者はニーズがさらに細分化していくだろうから、いっそう「心理的価値」に重点を置いた商品開発の発想が必要になってくる。
ちなみに前回、例に掲げた和菓子などはむしろ「心理的価値」だけで成立していると言っても過言ではない――だとするなら農産物も、嗜好性の強いブランド化をめざすなら固有名称が極めて大事になることは「言わずもがな」である。
しかも固有名称は、実物やビジュアルが無くても、口コミだけで波及するし、その名称が優れていれば、受け取る側がその言葉の印象によって食味や文化、歴史や物語などを自由に妄想してくれるのだから、これほど便利なツールはない。
ゆえにネーミングを…というのが本年度の連載テーマの理由であり、次回からはいよいよその詳細と手法を順次、解説していきたいと思う。
(つづく)
事業戦略構築研究所AX代表 髙木響正








