「一頭丸ごと」の直売と、羊毛活用で堅実経営 酒井伸吾さん・啓子さん


白糠町で「羊まるごと研究所」を営む酒井伸吾さん(54)は、2001年に新規就農した羊農家だ。現在は放牧地などおよそ20㌶で、サフォークやテクセルなど350頭の羊を飼養する。23年からは同町の農業委員会会長を務める、地
白糠町で「羊まるごと研究所」を営む酒井伸吾さん(54)は、2001年に新規就農した羊農家だ。現在は放牧地などおよそ20㌶で、サフォークやテクセルなど350頭の羊を飼養する。23年からは同町の農業委員会会長を務める、地域農業のけん引役だ。
サラリーマン家庭に生まれた酒井さんは、帯広畜産大学で出合った羊に魅せられ、卒業後の2年間勤務した会社で羊牧場の立ち上げを担当。その後、20代半ばで単身モンゴルへ渡り、10カ月間、遊牧民と寝食を共にした。「目の前にあるもので暮らしを成り立たせる遊牧民の姿に、真の豊かさを見た」と酒井さんは振り返る。
帰国後に大学の後輩だった啓子さん(53)と結婚。羊農家での2年間の研修を経て、縁のあった白糠町で離農跡地を譲り受け就農した。
子羊の死亡率の低さと販売戦略が2人の強みだ。年間およそ150頭を、「1頭丸ごと」東京のレストランなどに直接販売する。「枝肉をさばけないシェフには売らない」と伸吾さん。その人間関係が功を奏し、コロナ禍でも注文が減ることはなかったという。プロのニット作家から高い評価を受ける羊毛の販売は、売り上げの1割以上を占める。「毛は副産物。手間はかかるが利益率は高い」とほほ笑む。
「周囲が『その経営ではやっていけない』と言うやり方であっても、本人が真剣に頭を悩ませ、覚悟を持って入ってくるなら、まずは話を聞く。足りない部分を補うアドバイスができる、そんな受け入れ側としての勇気と覚悟を持った農業委員でありたい」。自らがかつて「大丈夫か」と周囲に心配された新規就農者だったからこそ、農業委員会会長として、新しく地域に挑む人々へのまなざしは温かい。








