【もっと自慢しようよ新潟!①】料理研究家・田中稔子さん 前編



今号から新しいテーマです。農業者の皆さん、丹精込めて育てた農産物の「おいしさ」や「日本の食を支えていること」をもっと自慢しませんか。各地の食を通じて、シリーズ化していきます。お楽しみに!
「素晴らしい素材を一生懸命に作ってくださる農家さん
今号から新しいテーマです。農業者の皆さん、丹精込めて育てた農産物の「おいしさ」や「日本の食を支えていること」をもっと自慢しませんか。各地の食を通じて、シリーズ化していきます。お楽しみに!
「素晴らしい素材を一生懸命に作ってくださる農家さん。どうぞ、誇りあるお仕事を大いに自慢してください」と語るのは、料理研究家の田中稔子さんだ。豊富な知識に裏打ちされた話は尽きることがなく、あっという間に時がたつ。当たり前のようでも大切なこと、その深く温かい思いを伺ってきた。
〇季節を食べ、冬に備える知恵
「伝統的な料理というと、私はやっぱり地元のおばあちゃんやお母さんの郷土料理だと思います。その地にある旬の食材だけで上手に作り、暮らす人々の体質に合った『無理のない食事』。広い新潟県で、地域ごとの気候や食材を生かした料理が受け継がれてきたのでしょう」
田中さんの生まれ故郷・上越市では山菜やキノコを塩漬けにし、冬に里芋と煮る。とろみがついて下越の「のっぺ」と似ているが、くず引き(あんかけ)になっており、温かいまま食べる。
中越の三条や長岡では、正月に向けてゼンマイを何日もかけて戻し、油揚げやニンジンなどと美しく煮上げる。下越の「かきあえなます」も、夏ならカブやキュウリ、ミョウガ、秋はレンコンなどを組み合わせる。このように、遠くから無理に季節外の素材を運んでくるのではなく、自然に逆らわず、目の前にあるもので作るのが本来の郷土料理なのである。
〇畦から生まれた保存食文化
保存食の「打ち豆」も新潟ならでは。大豆を水に浸して柔らかくした後に木槌{{きづち}}でつぶし、乾燥させる。一般的な乾燥大豆のように、一晩水に戻して何時間も煮る手間が不要。おみそ汁や煮物にぱらぱらと入れればすぐ食べられ、良いうま味が出るから化学調味料もいらない。
「かつては田んぼの畦に大豆を植える『あぜ豆』が盛んでした。根粒菌が土を肥やすことを、農家さんは経験的に知っていたのです。収穫した大豆は、みそや打ち豆にして冬用に保存します。今では新潟名物として親しまれる枝豆も、昔は保存に回さず食べる特別なごちそうでした。こうした背景を知ると、食への感謝がより深まります」
近年、作り方がわからずに市販の総菜を買う人もいる。しかし、田中さんと一緒に復元することで、「昔食べたおばあちゃんの味。ぜひ孫にも作りたい」という循環も生まれている。枝豆が旬を迎えるこれからの季節、「あぜ豆」を話題にしてはいかがだろう。知らない消費者も多いのではないか。【次号に続く】
【料理研究家・田中稔子さん】
T&Tクッキングスタジオ・フレッシュ主宰。人気パーソナリティー近藤丈靖氏のラジオ番組で『目指せ三ツ星 おいしさはF』(木曜放送)を担当。多彩なレシピを持つだけでなく、食材の健康効果を生かす薬膳理論から家庭料理を提案。料理教室の開催申し込みは、Facebook(田中稔子)まで。
(写真・文 フリーライター・大平マミ)
次回は8月28日付








