集落の力と事業で獣害から脱却 ! 天草市・方原集落協定 人吉市・スマート捕獲事業
熊本県の有害鳥獣による農作物への被害額は2024年度に約6億8千万円に上り、年々増加傾向で深刻さが増している。県では、農作物の被害軽減に向け地域ぐるみで取り組む「えづけSTOP!対策」を推進。26年度は、11月16日から約1カ月を「鳥獣被
熊本県の有害鳥獣による農作物への被害額は2024年度に約6億8千万円に上り、年々増加傾向で深刻さが増している。県では、農作物の被害軽減に向け地域ぐるみで取り組む「えづけSTOP!対策」を推進。26年度は、11月16日から約1カ月を「鳥獣被害防止対策強化月間」と設け、対策の強化を図る予定。今回、天草市の集落と人吉市のスマート捕獲事業、この二つの鳥獣害対策の取り組みを紹介する。
天草市 方原集落協定
「ワイヤーメッシュ柵がなければ、集落の米作りは終わっていた」。天草市方原集落協定の会長・森下雅成さん(77)と副会長・福田健児さん(73)はこう話す。1960年代には約60世帯あったが、現在は26世帯にまで減少。集落で作った米は、JA共販や産直で販売している。
2001年、行政の助言で集落協定を締結。06年の圃場整備後、イノシシが集落中心部まで侵入。電気柵では十分な効果が得られず、収穫前の被害で作付けを断念する農家も出た。14年に、行政の支援を受け、集落全体でワイヤーメッシュ柵の整備に乗り出した。
住民総出で点検マップを作成し、3年かけて水田11㌶を囲む総延長9㌔の柵の設置を完了。農地を3ブロックに分け、各ブロックに責任者を置き、耕作者が日常管理と異常報告を担う。年2回、全員で見回る。
設置後、イノシシ被害はゼロとなり、効果は現在も続く。22年度には鳥獣対策優良活動表彰(被害防止部門)の農村振興局長賞を受賞。地域の結束が集落ぐるみの管理と「集落全体の柵」という意識を支えている。被害ゼロにより農地面積は維持され、高齢農家の活き活きとした姿に「定年後にここで米を作りたい」という声も。人口減少や担い手不足は課題だが、「続ける努力が大事。われわれが楽しくやっている姿を見せるだけ」と両氏は意気込む。
人吉市 スマート捕獲事業
人吉市は、国のスマート捕獲事業を活用し、2025年度からの3年間、デジタル技術を活用した有害鳥獣の捕獲・調査に取り組んでいる。
イノシシやシカ、サルなどによる24年度の鳥獣被害は、水稲や果樹、野菜などで約16㌶、約1150万円に上った。市は28年度までに現状から約3割減の、被害面積11㌶、被害額805万円を目標に掲げる。
先行して24年度には捕獲報告アプリを導入。従来、捕獲者が紙で行っていた報告を、スマートフォンを活用し、隊員や市職員の作業時間削減につなげた。
また、実証では捕獲が難しいサルに重点を置き、群れの中心となるメス1頭にGPSを装着し、行動と生態を調査。加えて、罠の遠隔監視・捕獲なども導入。温度センサー付きドローンの調査では、冬場に個体数や群れが増える傾向を確認し、イノシシやシカの状況も把握した。26年度は、電気柵の電圧・漏電監視を実証する。
25年度のデータ蓄積、26年度のGIS(地図情報システム)を活用した情報基盤構築を経て、27年度に捕獲の効率化と情報公開を図る予定だ。
近年は市街地や公園での目撃が増え、市民生活への影響も懸念される。将来は鳥獣被害の情報を市ホームページなどで共有し、農業被害の防止と住民の安全確保につなげたい考えだ。












