【いしぶみを温(たず)ねて 22】小麦研究記念碑・札幌市北区

2026年08月14日
     
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 札幌市北区の北海道大学構内に、三つの円柱が、中心の大きな石を囲むように配置された「小麦研究記念碑」=写真=がたたずんでいる。現代のコムギ育種や遺伝学の基礎を築いた、坂村徹(1888~1980)、木原均(1893~1986)両博士の偉業を伝

 札幌市北区の北海道大学構内に、三つの円柱が、中心の大きな石を囲むように配置された「小麦研究記念碑」=写真=がたたずんでいる。現代のコムギ育種や遺伝学の基礎を築いた、坂村徹(1888~1980)、木原均(1893~1986)両博士の偉業を伝える碑だ。


 札幌農学校を前身とする北海道大学の農場には、明治の初期から世界中の麦類の種などが集められていた。これらを用いて、坂村博士は世界で初めてコムギの正確な染色体数を突き止め、1918年(大正7)に論文に発表した。その研究を引き継いだ木原博士は、私たちが日常的に口にしている「パンコムギ」の遺伝の解明に挑み、ドイツのウィンクラーが提唱する「ゲノム」(生物などがもつ遺伝情報の全体)の概念を発展させ、その構成を調べる「ゲノム解析法」を30年(昭和5)に世界に先駆けて確立した。


 記念碑のデザインは、当時の高橋萬右衛門教授(後の農学部長)が考案したもの。三つの丸い御影石は、パンコムギが持つ「3種類の異なるゲノム」を象徴している。木原博士は、異なるゲノムが三つ組み合わさることで、私たちが現在食べているふっくらとしたパンコムギが誕生したという進化の歴史を解明。44年(昭和19)には、その祖先種をも突き止めた。DNAの二重らせん構造が発見されるよりも前の時代に、交配実験と顕微鏡の観察だけで遺伝の核心に迫ったのだ。


 この地から始まったコムギの遺伝研究は、単なる基礎科学にとどまらない。後に世界的な食糧危機を救い、70年(昭和45)のノーベル平和賞にもつながったコムギの劇的品種改良「緑の革命」。その立役者となった背の低い多収品種「小麦農林10号」の遺伝的特性の解析や、その有用性を解明する上でも、木原博士らのゲノム研究が大きな役割を果たした。


 木原博士が(のこ)した「地球の歴史は地層に、生物の歴史は染色体に記されてある」という言葉は、今なお生命科学の金言として知られている。


 【小麦研究記念碑】

 ▽所在地=札幌市北区北10条西10丁目北海道大学構内

 ▽建立年月=1976年9月

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