熊本県益城町の赤井地区は、相続登記がされていない農地があることで圃場整備事業が進まない状況だった。担い手への集積・集約が進まず地域農業が崩壊する危機感から、町と同町農業委員会は権利関係の把握や相続人の確認・働きかけなど地道な取り組みを原動力に、所有者不明農地対策を進めている。
同地区は水稲作を中心とした水田地帯で、935筆、57㌶の農地が広がる。周囲の地区は30㌃区画の圃場整備が完了しており、同地区でも早期の実施が求められていた。
町では2019年、同地区の圃場整備事業計画に着手。計画の実施に当たって農地の権利関係を調べると、未相続農地が多いことがわかった。農業委員などの地域役員と町が協力して未相続農地の解消に取り組んだが、未相続の期間が長期のため相続人が多岐になる例や、所有者がわからない農地も多数あったことから計画が難航していた。
計画が再び動き出したのは25年。地域から整備を求める強い要望が出されたのを受け、農業委員会組織が取り組む「所有者不明農地対策事業」で進めることにした。
町は同年9月、農業委員会、県農業会議、県農業公社などの関係機関を集め、同事業で所有者不明農地の解消を進めることを確認、事業が動きだした。
具体的な活動は、町が土地登記簿を一括で取得し、農業委員会と連携して相続登記されていない農地の地図など関係資料を作成。それを基に、区長や農業委員など地区の役員が相続人に対して相続登記を働きかけた。地区を担当する井川寿範農業委員は、集落協議会の事務局として地域役員による相続人への登記の働きかけを指示するなど、中心となって動いた。
県司法書士会と連携協定を結んで市町村の取り組みをサポートする県農業会議は、登記事務を行う司法書士との協議を進めた。
今年2月にはこれら資料が完成し、地域役員が関係者に面談して相続登記をするよう動き始めた。3月には司法書士と関係機関による相続権利者の相談会も開催。現在、相続人全員への働きかけが終了し、司法書士の個別相談が続けられている。
農業委員会の松本三千輝会長は、「所有者と相続人が高齢化していく中、登記手続きを負担に感じることで、未相続農地が増加していくことが予想される」と将来を見据える。今後について、「現行制度では対応が難しい側面があるため見直しが必要だろう。引き続き、関係機関一体となり地域で未相続農地解消に向けて取り組みたい」と話す。

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