国産バニラ栽培の先頭走る 長崎・大村市 YAMATO VANILLA BEANS








アイスクリームや洋菓子、お酒など、さまざまな嗜好品の香りづけに使われているバニラビーンズ。日本ではそのほとんどを輸入に依存する中、ここ数年で国産化をめざす動きが目立ってきた。その先頭を走っているのが、栽培から加工までを一貫し
アイスクリームや洋菓子、お酒など、さまざまな嗜好品の香りづけに使われているバニラビーンズ。日本ではそのほとんどを輸入に依存する中、ここ数年で国産化をめざす動きが目立ってきた。その先頭を走っているのが、栽培から加工までを一貫して手がけるYAMATO VANILLA BEANS(長崎県大村市)。栽培のポイントや導入するメリットについて、代表の清水大和さん(38)に話を聞いた。
胡蝶蘭・ブドウの技術活かす 鞘長く種多いバニラに
清水さんがバニラの栽培を始めたのは、6年ほど前。先祖代々続く農園を引き継ぎ胡蝶蘭やブドウを栽培する中で「新しい作物に挑戦したい」と考えたことがきっかけだった。清水さんは「花きを取り巻く環境は年々厳しくなり、危機感を抱いていた。ラン科のバニラなら胡蝶蘭の栽培技術を活かせる上、摘果などの作業ではブドウの経験も活きる。国産はほとんどなく、うまく栽培できればおもしろいと思った」と説明する。
現在、バニラの栽培面積は約7㌃。2棟のハウスでおよそ500株のバニラを管理する。栽培する品種は3種類で、中でも主力はブルボン種のブラニフォリア。世界で流通するバニラの9割近くを占める品種だ。
バニラ栽培が繁忙期を迎えるのは、開花が始まる3月。つまようじを使って一つずつ丁寧に人工授粉を行う。午後には花が閉じてしまうため、作業ができるのは午前中の数時間のみ。1千個以上の花が咲く日もある中、6月中旬ごろまで毎日作業が続く。
蔓の剪定がカギ
その後は収穫期(1~2月)を迎えるまで、蔓の管理がメインの作業になる。放っておくと10㍍近くまで伸びるというバニラ。蔓を適切に剪定することで実をつけやすい位置に誘引するなど、収量を確保する上で欠かせない作業だ。
温度管理も重要な作業の一つ。20~25度が適温とされる中、特に大変なのが夏場だ。高温にさらされると種の入りに影響したり、鞘が落ちてしまうこともあるという。清水さんは前が見えなくなるほどの霧で灌水し、蒸散熱で室温を下げるなど、さまざまな方法で対処する。冬場は暖房を焚いて最低でも15度を維持。ハウスの天井を4層構造にするなど、燃料代を削減する工夫も施す。
清水さんがつくるバニラの特徴は、鞘が長く種の量が多いこと。国際基準では14㌢以上がAグレードに分類される中、清水さんのバニラは平均で18㌢、長いものでは25㌢にもなる。清水さんは「蔓の太さや状態を見て判断する摘果作業などで、ブドウの経験が活かせているのではないか。輸入物ではなかなか見られないサイズで、取引先にも喜ばれている」と笑顔を見せる。
150パターン以上の加工を実践 甘み感じる強いバニラ香に
「栽培は経験を積めば慣れていくが、本当に難しいのはバニラの香りを左右する加工作業です」――。収穫したバニラの種は、約半年間かけて発酵・乾燥させるキュアリングの工程に進む。この初期段階で、ほぼ毎日行うのが天日干し。種の状態や香り、天候、気温などを見ながら、干す時間を細かく調整する。清水さんは「毎年30~40パターン、トータルで150パターン以上のキュアリングを実践し、ようやく納得のいく香りに近づいてきた」と話す。
こうした努力が全国各地のシェフの目に留まり、取引先は累計で100軒ほどを数える。評価されているのは、甘みを感じさせるほどの強いバニラ香。取引先からは「砂糖の使用量を減らせるようになった」などの声が届く。清水さんは「国産の珍しさや安心感が取引のきっかけになることも多いが、リピート率の高さは品質が評価されている証し」と手応えを口にする。顧客の要望に応じてキュアリングのパターンを変えられるのも、人気を集める理由だ。
現在の収穫量は加工前の状態で約100㌔。管理する500株のうち半数はこれから収穫が始まる株で、収量は2倍に増える見込みだ。今後はより省力的に栽培できる技術の開発を行いながら「まずは20~30㌃くらいまで栽培面積を広げたい」と清水さんは話す。
技術の普及にも力
栽培や加工の技術を広めることも目標の一つだ。清水さんは、バニラの輸入・販売などを手がける㈱アイベジの執行役員も務めており、同社の事業としてバニラ栽培の立ち上げ支援やコンサルティングなども行っている。清水さんは「栽培や加工のマニュアル化ができるように技術の基盤を固めつつ、加工品開発などにも力を入れていきたい」と先を見据える。
バニラは収穫できるようになるまで3年ほどかかり、ハウスや苗代など初期投資もかかる。一方で、加工が終われば長期保存が可能で、保管場所にも困らず、出荷の送料が安く済むなどメリットも多い。清水さんは「ハウスをもっている野菜や花きの生産者がサブ作物として始めてみるのが良いのでは」と話す。








