松田町農業委員会(鍵和田功会長、農業委員8人、うち女性農業委員1人)では、農地利用状況調査などを分担し丁寧な相談対応で遊休農地の解消などにつなげる。また、新規就農者など担い手の確保・育成、都市との交流を通じた農業の活性化などにも取り組んでいる。
松田町は神奈川県の西部に位置し、丹沢の山々など豊かな自然環境に囲まれている。小田急小田原線とJR御殿場線、東名高速道路、国道246号などが通る交通の要所でもあり、自然と文化が調和する町だ。同町では露地野菜やミカン、茶などが栽培されており、山間部に点在している農地も少なくない。
松田町農業委員会は毎年10月から11月にかけ、農地の利用状況調査を行っている。農地所有者などの意向は、各区域を農業委員で分担して確認してきた。調査では、道路に接していない農地で草木が茂り、筆界の確認が困難な場所もある。その際はドローンを活用し上空からの情報で判断したこともあったという。タブレットで位置を確認しながら実施することもあるが、道中で出会う農家には積極的に声がけをし、現状を聞くなど人との対話も大切にしている。
2025年度には遊休農地約200筆の所有者へ通知し、耕作状況に加え、意向聴取も行った。これらの活動が功を奏し、25年度は町内の農地面積およそ231.3㌶のうち遊休農地は20.2㌶になった。これは24年度調査時の遊休農地24.9㌶から約5㌶減少しており、目に見える形で遊休農地解消が進む。
農地所有者や農家からは「みかん山には樹齢50~60年になる木も多く、後継者を考えると改植に踏み切れない」といった声もあり、農業委員会では今後の農地活用についてもしっかりと相談対応をしていく意向だ。
同町では、町内外から作目や土地条件を明確にした新規就農者・新規参入の相談があり、円滑な参入に力を入れている。
それらの相談では、町の事業である「新規就農者等担い手支援補助金」や「遊休農地等再生事業補助金」の活用を促すなど支援する。
担い手確保・育成にも工夫しており、就農・参入希望者と農家との交流会の実施や、町主催で毎年11月にある「まつだ産業観光まつり」ではブースを出し、相談窓口を設置するなど積極的だ。
また、昨年9月、町農業委員会が主催した懇談会「まつだの農業を話そう」では、就農希望者や相続後の農地管理に悩みをもつ地権者など12人が参加。全農業委員で地域ごとの特色を説明したり、参加者同士で交流を深めたりし、3人の就農につながった。
同町ではまた、遊休農地を含むおよそ5千平方㍍の農地で栽培したサツマイモ・紅はるかを使い、旧寄村との合併70周年を記念した芋焼酎「710」を蒸留。地域振興事業の支援にも取り組んでいる。

利用改善組合とともにマッチング
長井市農業委員会(髙橋剛会長、農業委員17人)では、市内の農地利用の調整を行う各地区の農用地利用改善組合と連携し、農地の集積・集約に取り組んでいる。2026年3月現在の集積率は87・9%と県内トップ。市独自の農地マッチングの仕組みが農地の維持に役立っている。
地域の担い手ら中心に組合構成
「農地の貸し借りで困った時は、農用地利用改善組合へのマッチング依頼で解決できる」という信頼感が、農地の出し手と受け手をつないでいる。
同組合は、1970年に全国で始まった農用地流動化事業がきっかけで設立。農地の利用を白紙委任で担い手につなげる取り組みだった。当時、農業委員で後に会長となる勝見幸喜氏が仕組みづくりに大きな功績を残した。市独自の「農用地流動化奨励補助事業」も創設され、農地の流動化が進んだ。市内では54の組合が発足し、86年には全農家の意向調査を実施するなど農地の集積・集約や維持・管理に向け、地道な活動を続けてきた。組合は現在26組織。各地区の担い手で構成され、関係団体の役員や農業委員も加わる。
農業委員会が農地の出し手から相談を受けた場合、農業委員会からの依頼により、組合は受け手へのマッチングまでの支援を行う。組合員が集まって条件を調整し、受け手が決まれば農業委員会に結果を報告する。その際、各地区の農業委員もマッチングを確認。最近では、法人化希望の農業者が農地を探す際の話し合いを支援するなど、活動は多岐にわたる。
組合と農業委員会による取り組みを市もバックアップ。農用地流動化奨励補助事業を活用し、農地の利用調整が成立したときには、活動助成金を支給する。集積率向上だけでなく、遊休農地の発生防止にも大きく貢献している。
地域計画の前進へ連携強化
同市では年に1回、「農地利用最適化研修会(組合長会)」を農業委員会主催で開催しており、各組合長が参加。マッチングで注意してほしい事項、流動化奨励補助金の説明、新任の組合長に対しては組織の目的について説明する。今後の農地利用調整活動に役立ててもらうためだ。
組合の仕組みは、地域計画の策定時にも機能を発揮した。各地区の話し合いには、農業委員とともに組合も参加。協議が円滑に進むように協力しており、組合の下地があることで地図を広げた際の話し合いがスムーズに進み、利用調整がしやすくなったという。
髙橋会長は「高齢化による担い手不足、物価高騰などにより農業情勢はますます厳しさを増している。一昔前より農業委員に対して求められるものも大きくなっていると感じる」と現在の情勢を受け止め、「未来志向で地域計画はさらに前進していかなければならず、毎年のブラッシュアップは非常に重要」と語る。
今後の抱負として髙橋会長は「そのために今後欠かせないのが組合とのさらなる連携で、地元の農業委員としても組合の話し合いに積極的に参加するなど活動が円滑に進んでいくよう支えたい」と力を入れた。

西都市農業委員会(湯淺幸二会長、農業委員16人、農地利用最適化推進委員16人)は、農業者年金の加入推進活動に力を入れている。地域の農業経営の安定化に向け、未来を担う若い世代へのアプローチを強化。2025年度も新規加入者が増え、 (独)農業者年金基金が実施する農業者年金事業表彰でも上位入賞をするなど、加入推進活動が効果を発揮している。
綿密な話し合いで対象者選定
西都市は、宮崎県内でも屈指の施設園芸・畜産の盛んな地域だ。
同市農業委員会の農業者年金の加入推進活動は、JAと共同で年2回の戸別訪問を展開するなど、活発に行われている。
戸別訪問では毎年、認定農業者リストを基に「加入推進名簿」を更新。市内5地区に農業委員、推進委員を割り当てて綿密な話し合いを通じ訪問対象者を選定する。対象者は、新たに就農した若い担い手を最優先する方針だ。加入を断られた対象者には、3年程度の期間を置いた上で再び巡回するなど、きめ細かいフォローを継続している。
今年3月、同市農業委員会と加入推進を一緒に行っていた同市農業者年金受給者協議会が解散し、加入推進活動の停滞が懸念された。しかし、JAと農業委員会が二者でがっちりと手を組んでおり、引き続き活動は順調だ。
地区によって加入推進対象者の年齢にバラつきがあり、50代以上が中心の地区では加入が計画どおりに進まないなどの課題はあるが、若い世代が多い地区では着実に加入率が向上している。
脱サラ後、将来見据えて加入
若手農家の久永亮太さん(38)は今年、農業者年金に加入した。サラリーマンを辞めた後、21年に妻の実家がある西都市で就農。義父からの技術指導や農業改良普及センターの研修を経て、今年1月に経営主となった。
現在は水稲や施設ピーマン40㌃の経営全般を自らの責任で統括。今季は初めて田植機やコンバインを自ら運転して農作業を取り仕切ったという。
「将来、いつまでも元気で働きたい」と語る久永さんは、妻の両親からの強い勧めもあり、妻とともに農業者年金への加入を決意した。「加入したばかりでまだ実感は薄いが、節税できる点に大きなメリットを感じている」と話す。
実は久永さんの祖父も農業者年金の加入者であり、これで祖父母、両親、久永さん夫婦と、3世代にわたって〝農業者年金に加入する農業一家〟になった。
西都市の活動は、農業者年金基金が実施する「25年度農業者年金事業表彰」の「新規加入者数(全体)」が17人で全国7位、「新規加入者数(女性)」が11人で全国2位となり、2部門で全国表彰を受賞し高い成果を上げている。今後も若い世代への啓発と加入推進を進める方針だ。

善通寺市農業委員会(瀨川治会長、農業委員14人、農地利用最適化推進委員14人)は、市農林課、県農地機構と連携した市独自の「農地マッチング支援事業」を展開。また、市の公社と農業委員会による農地の保全管理にも力を入れており、農地利用の最適化を進めている。
善通寺市の実施する農地マッチング支援事業は、市内全7地区で策定された地域計画に基づく遊休農地の発生防止・解消が目的の事業。2025年10月からスタートした。
同市農業委員会、市、県が農地を貸したい・売りたい人(出し手)と借りたい・買いたい人(受け手)の間を取り持ち、農地の集積・集約を進める。昨年度は半年間だったが合計23筆、約2㌶の農地でマッチングが実現した。
仕組みは出し手が「農地マッチング支援事業貸付等申出書」を農業委員会に提出。農業委員会事務局との相談などを経て農地マッチング台帳に登録し、市農林課と県農地機構で情報共有する。
事務局はまた、登録後速やかに該当地区の農業委員、推進委員と情報を共有。登録内容や受け手の情報などを確認し、両委員がペアで戸別訪問などの「マッチング支援」に入る。農地中間管理事業の紹介や地域計画の実践活動を紹介するチラシなども使い、受け手候補者に声をかけるという。
水はけが悪いなどの条件があるとなかなか受け手が見つからないが、申し出のあった農地は所有者の了承を得てeMAFF農地ナビに反映する。
瀨川会長は「地域計画や県内統一の組織運動による農地利用の最適化活動への取り組みが重要であり、農地マッチング支援事業がそれを後押しするものとなっている」と事業の効果をあげる。また、「この7月の改選で新体制となったが、引き続き市農林課、県農地機構と3者連携して取り組んでいく」と話す。
善通寺市では農地マッチング支援事業などの農地集積・集約と合わせて、(公財)善通寺市農地管理公社(辻村修理事長)と農業委員会が中心となり農地の保全管理事業にも力を入れる。
同公社が保全管理や畦畔の草刈り作業を実施。25年度の実績は、保全管理作業が35.2㌶、畦畔の草刈り作業が5462㍍だった。また、同公社が主催となり農業に興味を持つ人たちが対象の野菜づくりの基礎を学ぶ「ゆめ楽農支援塾」の開催や、市外出身の若者の農業研修生の受け入れ・育成、ダイシモチ麦の特産品化など多彩な事業を展開する。
マッチング支援事業の中でも農業委員らは公社の活動を紹介し、農地所有者の意向や農地状況によっては公社の利用を勧めている。
同市の農業委員でもある同公社の髙畑強事務局長は「当公社は農地の保全管理の〝最後の砦〟」と語る。

山添村農業委員会(福山博一会長)では、農地の有効活用のため、村独自の農地バンク制度を立ち上げ、遊休農地解消に結びつけている。再生利用が困難な農地に対しては、積極的な非農地判断を行い、適正な農地利用を進める。
中山間地域に位置する山添村では、農業従事者の高齢化で離農が進み、遊休農地が増加している。同村農業委員会は課題解決のため、2023年から村独自の「山添村農地バンク」事業を立ち上げ、新たな担い手確保と遊休農地の発生防止と解消に向けた取り組みに力を入れる。
農地パトロールで発見した遊休農地の所有者に対して、農業委員・農地利用最適化推進委員が戸別訪問し意向を把握。情報とともに、地番や賃借料などの農地情報を同村農地バンクに登録し、ホームページで公開している。
借り受け希望があれば営農条件を確認するためまずは農業委員会で面談を行い、条件に合った候補農地を選定。その後、担当地区の農業委員・推進委員が現地案内から所有者・借り受け希望者の立ち合いまでの調整を行う。
両者の条件が一致すると、中間管理機構を通して貸借契約を締結。これまでに70筆(7.4㌶)の遊休農地が解消された。借り受け希望者は村外の企業を中心とした新規参入者が多く、新たな担い手の確保につながっている。
地元に精通している農業委員・推進委員からの説明や丁寧な調整活動が功を奏し、農地のマッチング率向上につながっているという。
同村農業委員会は、山林化している農地に対して、これまで161㌶を非農地判断している。
利用状況調査時に、県が作成した「非農地判断マニュアル」の判断基準に沿って、再生利用が困難な農地を特定。その後の農業委員会総会で非農地判断を行っている。
また、法務局の職権登記制度を活用して、地目変更の申し出を行うため、農業委員会事務局が所有者への通知や同意書の取得を農業委員・推進委員に依頼。委員が積極的に関わることで手続きが円滑に進んでいるという。
同村農業委員会事務局は「地域で守るべき農地を特定することで、日々行う農地パトロールの省力化にもつながっている」と話す。

富山市農業委員会(長谷幹夫会長、71)では、市独自の農地マッチングの仕組みを構築した。農業委員と就農希望者の話し合いから生まれたアイデアで、農地を使いたい人、農地を使ってほしい人などの登録者数は徐々に増えているという。
同市農業委員会が仕組みづくりを進めたのは、「農地と人のマッチング事業」だ。農地の「利用希望者」と「提供希望者」の間を農業委員会が仲介する。
利用希望者は、希望地域、耕作する作物・栽培方法などの条件を登録する。提供希望者は所在地や面積、農地の提供方法などを登録。委員会は、進入路や水路、農地の現況といった営農環境も確認し、全ての条件を精査する。条件が合えば双方に情報を提供し、直接交渉をしてもらい、お互いが納得すればマッチングが成立する。その後は、農地法3条、または農地中間管理機構法の手続きを進める形だ。
同事業誕生のきっかけとなったのは就農希望者からの声だった。県の就農準備校である「とやま農業未来カレッジ」の研修生と農業委員が2025年の夏、意見交換会を開催。現在の日本の農業では、すぐに農業を始めたい就農希望者が農地を確保しにくい、という現状が浮き彫りとなり、「農地を使いたい人と、農地を使ってほしい人をつなぐ仕組みが必要ではないか」という考えが生まれた。同市農業委員会ではすぐに着手し議論を重ね、25年末に形となって同事業がスタートした。
同事業には今年8月時点で7件の利用希望と18件の提供希望が寄せられている。登録者数は増えており、交渉も始まっているという。
課題も見えてきた。同市農業委員会の担当者は、「『すぐに農業を始められる』『現在も耕作されている』『草刈りなどの簡単な手入れですぐに利用できる』などの農地を求める利用希望者に対して、高齢化や離農などで耕作できなくなった農地の管理や譲渡を希望する提供希望者との間で隔たりがある」と分析する。
課題が浮かびあがる中、同市農業委員会では、農地を探す就農希望者と離農や規模縮小を考える農業者の双方が、より相談しやすい仕組みにし、地域農業の担い手確保につなげたいと考えている。「求められる農地と提供される農地の条件を正確に把握し、マッチングにつなげたい。農地の現況や所有者の意向が変わることもあるため、適切に登録情報を更新していかなければならない」と担当者は語る。
長谷会長は今後の取り組みについて、「新規就農者には今まで培った経験やこれから吸収する農業の知識を活かし、農業者として成長してほしい。本事業を利用してもらい相性が良い農地が見つかれば」と期待を込める。

市内全域の農地が市街化区域の東村山市は生産緑地が多く、独自の“農地バンク”を都内でいち早く設置した。貴重な農地を保全しようと、東村山市農業委員会(鈴木八百造会長、農業委員14人)が中心となりJAや市とともに貸借の意向を収集する。また、同市農業委員会では情報提供活動にも力を入れる。
東村山市は、東京の北西部に位置する人口約15万人の都市。狭山丘陵の八国山緑地や多摩湖に接した狭山公園など緑豊かな里山には武蔵野の面影が残る。
市内は農地の全域が市街化区域になっており、農地約132㌶のうち86%が生産緑地に指定され、特定生産緑地の指定率は83%を超える。
市では、都市農地貸借円滑化法が制定された2018年から4年後の22年1月に、同法を基にした市独自の農地バンク制度を創設。都内でいち早く貸借のマッチングを制度化した。以来、26年6月末現在で同法による同市内の農地貸借は12件、合計面積は3㌶にのぼる。
同バンク制度は、農業委員会とJA、市の3者が事務局となり生産緑地の貸借を支援。事務局がそれぞれの強みを活かした役割分担を行う。市は制度説明や情報管理を担い、JAは営農指導の機会に情報を集める。農業委員は担当地域に密接な立場として農業者からの相談を引き受けている。
マッチングの肝となるのは農地所有者(貸付希望者)と借受希望者の条件の把握だ。登録の際、借受希望者は経営概要のほか、農薬の使用、露地か施設かなどの栽培体系の細かな条件を記入する。貸付希望者は貸し付け相手となる者の条件(市内・外、個人・法人、認定農業者かどうかなど)を記入する。それぞれの希望に沿った貸借を実現することで、貸借後のトラブルの防止にもつながっているという。
同市農業委員会では、情報提供にも力を入れている。
毎年10月ごろに、市内の経営者組織「東村山市農業者クラブ」やJAとともに、農家座談会を市内5地区で共催。農業委員会の活動報告のほか、農地バンクや補助事業の説明、全国農業新聞と農業者年金の推進も行う。25年度は農業者ら延べ100人が参加した。
また、市農業者クラブでは、市議会議員も参加対象として市内の視察研修と意見交換会を実施する。農業者間の技術研鑽に加え、市議会との関係強化につなげている。
市内の農業者自身も情報発信の機会がある。市が22年に導入した地産地消情報発信アプリ「ロカスタ」は、市内の農産物直売所の場所や市産の農産物を使った飲食店の紹介に加え、農業者が直接、市民に情報を発信することができる。スマホなどで見ることができ、「庭先で販売する野菜や果物について、旬の時期に素早く発信できる」と農業者からも好評だ。
同市農業委員会の石田勉事務局長は「農業者と市民、行政がうまくつながりながら、東村山市の農業の魅力を発信したい」と話す。

大仙市農業委員会(細谷精悦会長、農業委員24人、農地利用最適化推進委員40人)は、所有者不明農地制度を活用するなどで耕作放棄地の解消・活用や農地のあっせんに努めている。農地パトロールでは市内を八つに分け担当者を設置し効率的な調査などに取り組んでいる。
大仙市は県の中央部に位置し、水稲を中心に畜産、園芸作物などの生産が盛んな、県内でも有数の農業地域だ。
同市管内では2018年の所有者不明農地制度の創設以来、特定の地域に限らず制度を活用し、担い手への利用権設定へつなげてきた。特に市南部の大曲・仙北地域では昨年度からこれまで、延べ4・3㌶の農地の活用が知事裁定されている。
中でも花館・四ツ屋地区では2年間、耕作放棄されていた約1・9㌶の所有者不明農地が解消に動いている。地区を担当していた推進委員の働きかけで地区外の農業法人が参入を決めたためだ。農地中間管理機構を通じ、10年間の利用権設定を受け、畑として活用する予定だ。
これを受けて、同地区の地域計画は今年5月に2回目の更新が行われるなど、将来設計の見直しが活発に進められている。
同市の農業委員・推進委員はそれぞれの担当地区で、農地の状況把握や今後の耕作者の調整、地域計画の更新に向けた協議へ積極的に参加。さまざまな形で地域計画の実現とブラッシュアップに取り組んでいる。
所有者不明農地の確知・活用に必要な取り組みの最初のステップは、農地パトロール(利用状況調査)だ。同市農業委員会では管内を事務局と分室を基準に八つの地域に分け、各地域に農業委員・推進委員を配置し、農地パトロールに取り組んでいる。特に、23年以降は5台のタブレット端末を導入して実施してきた。
農地パトロールの実施前には検討会を開催し、農業委員・推進委員が問題のある農地などを事前に確認する。
現地ではタブレット端末から農地の情報を得て状況を確認し、終了後は再度検討会を開いて問題のあった農地の情報を出し合い、解決方法について話し合っている。
細谷会長は「特にタブレット端末は、導入以降現地での情報確認が素早く確実にでき、非常に役立っている。今後も業務の省力化・効率化を図りながら地域の農業の発展、地域の振興のために努めたい」と話す。

大分県農業会議(木村房雄会長)は、県と合同で、地域農業の将来像を描く「地域計画」の実効性を高めようと住民参加型の話し合い技法や合意形成手法を学ぶ研修会を開催。今年は7~9月に全3回シリーズで開いており、市町農政担当課や農業委員会の職員、県普及員ら約50人が参加。これまでに2回を終えた。
地域計画は2024年度末までに県内各地473地区で策定されたが、策定期間が短く地元での協議が十分にできなかったことなどから、現況にほぼ近い内容にとどまる計画が目立つ。
地域農業を将来へ継続させるには、策定済み計画を練り直す「ブラッシュアップ」が欠かせず、農地の利用意向の丁寧な把握や幅広い関係者を交えた協議の場づくりなど、進め方自体の見直しが課題となっている。
研修では地方考夢員研究所の所長で全国農業会議所専門相談員の澤畑佳夫氏を講師に招いた。第1回は「ファシリテーター」の役割を学び、付箋を使ったグループ協議を体験。
第2回は「地域計画の考え方」という原点に立ち返りながら、同計画を進める上での課題をグループでアイデアとして整理し、発表・投票まで行う模擬座談会を実施した。
第3回では、地域の話し合いをより具体的にイメージできる形で、ファシリテーションスキルを活用するための実践的な技術を身に付ける予定だ。
受講した職員からは「お互いの話を聴き合うことが大事だと気づいた」「事前準備で話し合いが大きく変わると知った」などの声が上がった一方、「地区数が多いところは進めるのが大変」との声も出た。
澤畑氏は「地域計画が大事なことは皆分かっているが、どう進めればよいか分からないと感じている。何のために計画を作り、そこへたどり着くまでに何をするのか道筋が見えれば、格段に進めやすくなる」と話す。
地域計画は農業者や住民が主体となって将来像を描くものだが、それを支える行政の役割は大きい。職員がファシリテーション技術を身に付ければ、地域での協議を円滑に進め、合意形成を後押しできるようになり、計画の実効性が一段と高まることが期待されている。
あわせて、地域に根差し地域の人とのつながりも深い農業委員や農地利用最適化推進委員の協力も欠かせず、県農業会議は農業委員会と連携し、委員向けの研修機会の創出にも力を入れていく考えだ。
県は本年度から各市町にモデル地区を設け、ブラッシュアップの進め方を県内全域で横展開する取り組みも始めている。研修と現場実践を両輪で進めることで、「地域計画の実現」を着実に前進させる構えだ。

美馬市では、地域農業の持続的な発展をめざして市農業委員会(河野耕八郎会長、農業委員19人、農地利用最適化推進委員18人)など関係機関と連携。農地のマッチングを活性化させ、農地利用の最適化に向けた取り組みを進めている。
美馬市では2025年5月、担い手がいない農地や将来的に耕作放棄地となるおそれがある農地の情報を集約し、地域の担い手に効率的に紹介する仕組み「美馬市版農地バンク」を構築、取り組みを進めてきた。
同制度は市農林課が実施する農地のマッチングサービスで、農地の「出し手」と「受け手」の調整役となる「地域プロジェクトマネージャー」を配置し、農地利用の最適化を進める。市の担当職員や地域プロジェクトマネージャーが間に入り、農地の紹介や条件調整など農地所有者と耕作者の橋渡し役を務める形だ。
同制度の利用料は無料。農地を貸したい所有者(出し手)が市へ貸付登録を行う。登録には、農地に1年以上の賃借権などが設定されていないこと、現況地目が田または畑であること、境界が明確であること――などの条件がある。借り手(受け手)が決まるまでは、農地所有者が適切に農地を管理することも求められる。
一方、借りたい人も借受登録を行い、希望する地域や面積、栽培作物などの条件を登録する。
市は登録情報を基に双方の意向を調整し、条件が一致すれば、徳島県農地中間管理機構を含めた三者による契約を締結する。
同制度を支える重要な存在が、地域プロジェクトマネージャーの山田洋一さん(47)だ。
地域プロジェクトマネージャーは、総務省の制度に基づき、地域課題の解決や活性化を目的に、行政と住民、農業者、関係機関をつなぐコーディネーター役を担う。山田さんは3年間、美馬市地域おこし協力隊で活動後、公募の選考を経て25年4月から同マネージャーに着任。農地の貸し付けについての相談対応や各種登録申請書の作成・サポート、関係機関などとの連携役を務めた。25年度は約8㌶の農地でマッチングが実現、27年度末までに20㌶のマッチングをめざしている。山田さんは「少しでも地域に貢献したいという思いで、一つ一つの相談に丁寧に向き合っていきたい」と熱く語る。
農業委員会でもこの取り組みに積極的に協力する。農地利用状況調査などで、遊休化している農地の所有者に利用意向調査を行う際などに美馬市版農地バンクのチラシを同封し、制度の利用を呼びかけている。
河野会長は「耕作放棄地の増加を食い止めるためだけではなく、規模拡大を考える担い手にとっても非常に良い制度だと思う」と語る。

西脇市農業委員会(宮崎隆会長、77)では、「地域の農地は地域で守る」をモットーに、市と連携して市内52集落で地域計画を策定した。現在は新たな担い手が誕生するなど、計画の実現に向けて活動している。
同市では、最高品質の酒米「山田錦」や高級和牛として有名な黒田庄牛をはじめ、イチゴ・施設野菜などの農畜産物の振興を進める。しかし、他の地域と同じく、農家の高齢化や担い手不足による耕作放棄地の増加が課題だ。
宮崎会長は、2016年に地元集落での「人・農地プラン」を推進して以来、「地域の農地は地域で守る」をモットーに農地利用の最適化などの農業委員会活動を進めてきた。
人・農地プランを推進する中では、300年以上の歴史を誇る愛知県名古屋市の酒造会社が同市に農業法人を設立。市内の農地で山田錦の自社栽培をすることになった。
また、地域計画の話し合いを進めた際、地元の建設会社が耕作放棄地で水稲栽培をスタートさせることになり、新たな担い手が誕生している。
宮崎会長は「地域計画で担い手を明確化した。新たな取り組みも始まっており、大切な農地を次の世代に伝えていきたい」と笑顔で語る。
同市住吉町で建設会社「㈱今村建設」を営む今村要さん(48)は、農地利用最適化推進委員の竹谷保夫さん(72)から声をかけられ、24年に新たに「㈱奥畑アグリラボ」を設立。農業参入を決めた。住吉町地区内の耕作放棄地を含めた2・1㌶を同社で取得し、本業の重機を活用して水路などを復旧、25年から水稲を栽培している。
竹谷推進委員は、「20年以上も前に営農組合が解散し耕作放棄地が問題になっていた。解決するには、まず農地を元に戻す必要があり、建設会社を営む若い今村さんに声をかけた」と話す。
今村さんは、兄の勝豊さん(50)や弟の君人さん(45)、建設会社の社員とともに、山間部に広がる耕作放棄地の整備からスタート。長年放置され、大量の土砂に埋もれた水路の復旧や、効率的な農作業を実現するための法面も補修した。
今村さんは「現時点で農業だけで採算を取るのは難しい。しかし本業の重機も活用し、兄と弟、社員と協力して、継続可能な農業経営を図りたい」と話す。
君人さんも「生まれ育った地域のために兄弟と社員で農地を守っていきたい」と抱負を語る。
同社が農業に参入した経緯には、地域計画の策定を進める際の農業委員会をはじめとした周囲の人々の働きかけが大きい。地域計画の実現に向けて、同市でスタートした「新たな取り組み」に期待が集まっている。

十日町市の目標地図は、同市農業委員会(村山隆義会長、68)が作成し、「話し合いの場」では農業委員・農地利用最適化推進委員がコーディネーター役を務めた。現在進められている地域計画のブラッシュアップにおいても、見直しに向けた話し合いの場で農業委員・推進委員が中心的な役割を担っている。
同市は市内を10地域のエリアに分け地域計画を策定した。目標地図は当初から農業委員会が担当。2023年9月に10㌃以上の農業者約6千人に意向調査票を配布した。同年11月末の回答期限には4割ほどの回答率だったが、その後農業委員・推進委員が未回答者を訪問し約8割の回答を得た。
その内容を地図に落とし込み、地域ごとの話し合いの場を経て、24年11月に素案を策定した。当時の様子は、十日町市農業委員会だより「妻有のきずな」にも掲載されており、委員から「地域の人との話し合いの場が多く参加した。担い手がいるところ、高齢化が進むところと集落ごとで差がある」「担い手が日常の管理が大変で農地をこれ以上受けられないという悲鳴が聞こえた」など、地域の課題がつづられている。
同市では地域計画のブラッシュアップを、全地域3年サイクルで見直す計画だ。
25年度は7月から12月までに24カ所で話し合いの場を開いた。そうした中、出席者の多い地域ほど「将来の地域営農に関心があり、危機感を持っている傾向がある」と同市農業委員会では感じていたという。
見直しの中心は当初の目標地図で将来の担い手が決まっていなかった「白い部分」に色(担い手)を塗っていくもの。村山会長は「10年先よりも3年先の方が農業者も答えやすいと考え3年サイクルにした。話し合いの場では委員が中心となって取りまとめている内容を聞きながら検討していくことで目標地図を完成させたい」と話し合いの場の意義を語る。
十日町市は本年度、農業委員会の改選年に当たることから本格的な取り組みは8月以降になる見込みだ。新たに就任する農業委員・推進委員には「目標地図は委員が中心となって地域住民と話し合って作成・見直していること」「話し合いの場の会場設定や、司会進行などは地域担当の推進委員が中心となって行うこと」などを引き継ぐことで、取り組みを継続していくことにしている。

銚子市農業委員会(坂尾清志会長)は、長年農業者年金の加入推進に力を入れている。委員と事務局が連携した丁寧な取り組みで、地域の農業者に農業者年金制度の魅力を伝え、毎年多くの農業者が新規加入している。
銚子市はキャベツやダイコン、メロンなどが中心の、県内でも屈指の農業産地だ。経営規模が大きい農家が多い一方、後継者の確保や収入の波による不安定さに悩む声も聞こえる。
「将来への不安を抱えながらも日々の作業に追われ、老後の備えまで考える余裕はなかなか生まれない」「農業者年金の名前は知っているが加入するメリットについては知らない」――そんな農家がいるのも珍しくない。
銚子市農業委員会はまず「制度を知ってもらうこと」を出発点に据えて加入推進活動を進める。
同市農業委員会は毎年10月から11月が加入推進月間だ。農業委員・推進委員が加入対象者に戸別訪問してチラシを配布し、制度を紹介。興味を示した農業者には、事務局が後日改めて詳しく説明する方法をとっている。委員と事務局が役割分担し、無理な勧誘はせず、農業者に寄り添うことを大切にして活動を進めているという。
農業者が農業者年金制度に触れるきっかけは、窓口での何気ない相談から生まれることも多いという。
農地の手続きなどで訪れた人に対し、農業委員会事務局は必要な情報を一から丁寧に伝えるが、会話の中で農業者年金も自然に紹介することにしている。支払った保険料全額が社会保険料控除になる点など、節税につながる「今すぐ役に立つ情報」を伝える。このため、毎年の収入の変化に応じて保険料を変える農業者が多い傾向だ。一方、過去の制度との違いや注意点も率直に説明する。この姿勢が信頼を生んでいる。
また、農業委員会事務局は「制度を十分に理解していなければ勧められない」という思いから制度内容を深く学び、相手が納得するまで何度でも相談に応じている。
こうした積み重ねにより、加入推進活動に力を入れ始めた約20年前から170人以上が新規加入した=グラフ。
特徴的なのは、手続きのワンストップ化だ。農業者年金と同時に加入する「国民年金付加年金」の書類など、必要な書類はすべて準備。加入者は農業委員会へ一度訪問するだけで手続きが完了する。忙しい農家の負担を減らすひと手間が、制度への安心感にもつながっているという。
同市農業委員会の農業者年金担当者は「農業者年金は農家の将来を守る良い制度。知らないまま損をしてほしくない」と話す。
委員・事務局が連携して制度を届ける仕組みが、市内の多くの農業者を支えている。

美里町農業委員会(伊藤惠子会長、農業委員16人)は、町認定農業者連絡協議会と共催で女性農業者の交流と意見交換の場である「みさとアグリカフェ」を開いている。農業施設の視察や農業者年金の加入推進、農業経営に必要な情報を広めてきた。農業委員候補の掘り起こしも進める。
美里町は宮城県北東部に位置し、面積が約75平方㌔で、面積の約7割を占める農地は平地にある。水稲を中心に、バレイショやナシが栽培されているほか、約8㌶の広大な敷地にレタス生産工場が稼働している。
みさとアグリカフェは、町の農業者年金加入者協議会が主催の農業先進地を視察する「女性農業者研修会」と、農業委員会が主催の「認定農業者との意見交換会」が前身だ。加入者協議会の解散や意見交換会参加者の減少で、2023年から二つを組み合わせて開くようになった。
カフェは、視察研修と意見交換で構成される。午前に町内の農業施設を視察研修。昼食を伊藤会長が経営する菜園レストラン「野の風」でとった後、コーヒーを飲みながら、意見交換を行う。
第4回のカフェは2月に開かれ、女性農業者18人が参加した。町内にあるみやぎ総合家畜市場で子牛の競りを視察した後、意見交換会に移った。
意見交換では「市場は身近にあるが行く機会なかったが、初めて競りを見られてよかった」という意見の他、参加者の体験から「都市部の販売会に参加した際、町の場所はどのあたりかを聞かれる」「町内産の小麦と青ジソを使ったクラフトビールなど、魅力のあるものや場所はたくさんあるのでPR活動は大事」といった声もあがった。
カフェの運営に関わる農業委員の鈴木幸博さんは「意見交換会をカフェ形式にしたことで、話しやすい環境となり、参加者はリラックスして意見を述べてもらえていると思う。いろいろな考えを聞けて参考になる」と話す。アグリカフェでは、将来の農業委員候補者探しと登用も兼ねている。農業委員の繁泉順子さんは過去のカフェ参加者で「これをきっかけに農業委員会について知った」という。
伊藤会長は「なにかを始めるときには仲間がいると心強い。カフェをきっかけに横のつながりを見つけてほしい」と語る。

熊本県益城町の赤井地区は、相続登記がされていない農地があることで圃場整備事業が進まない状況だった。担い手への集積・集約が進まず地域農業が崩壊する危機感から、町と同町農業委員会は権利関係の把握や相続人の確認・働きかけなど地道な取り組みを原動力に、所有者不明農地対策を進めている。
同地区は水稲作を中心とした水田地帯で、935筆、57㌶の農地が広がる。周囲の地区は30㌃区画の圃場整備が完了しており、同地区でも早期の実施が求められていた。
町では2019年、同地区の圃場整備事業計画に着手。計画の実施に当たって農地の権利関係を調べると、未相続農地が多いことがわかった。農業委員などの地域役員と町が協力して未相続農地の解消に取り組んだが、未相続の期間が長期のため相続人が多岐になる例や、所有者がわからない農地も多数あったことから計画が難航していた。
計画が再び動き出したのは25年。地域から整備を求める強い要望が出されたのを受け、農業委員会組織が取り組む「所有者不明農地対策事業」で進めることにした。
町は同年9月、農業委員会、県農業会議、県農業公社などの関係機関を集め、同事業で所有者不明農地の解消を進めることを確認、事業が動きだした。
具体的な活動は、町が土地登記簿を一括で取得し、農業委員会と連携して相続登記されていない農地の地図など関係資料を作成。それを基に、区長や農業委員など地区の役員が相続人に対して相続登記を働きかけた。地区を担当する井川寿範農業委員は、集落協議会の事務局として地域役員による相続人への登記の働きかけを指示するなど、中心となって動いた。
県司法書士会と連携協定を結んで市町村の取り組みをサポートする県農業会議は、登記事務を行う司法書士との協議を進めた。
今年2月にはこれら資料が完成し、地域役員が関係者に面談して相続登記をするよう動き始めた。3月には司法書士と関係機関による相続権利者の相談会も開催。現在、相続人全員への働きかけが終了し、司法書士の個別相談が続けられている。
農業委員会の松本三千輝会長は、「所有者と相続人が高齢化していく中、登記手続きを負担に感じることで、未相続農地が増加していくことが予想される」と将来を見据える。今後について、「現行制度では対応が難しい側面があるため見直しが必要だろう。引き続き、関係機関一体となり地域で未相続農地解消に向けて取り組みたい」と話す。









