群馬県の東吾妻町農業委員会(中井毅彦会長、70)は2025年4月から、町の特産作物の在り方や持続可能な農村づくりを検討するための二つのワーキンググループを始動。また、農業委員会などを中心に新規就農の促進にも力を入れる。

 同町農業委員会で始まったのは、「農業振興(AGRI)」と「持続可能な農村づくり(LIFE)」のワーキンググループ。農業委員12人と農地利用最適化推進委員18人の全員は、どちらかのグループに所属している。

 農業委員会活動の中で、両委員が顔を会わせるのは年3回程度だったこともあり、中井会長の「農業委員と推進委員が連携した活動を行いたい」という想いと、町の農業振興の発展を後押しようと、25年の改選に合わせて動きだした。

 ワーキンググループではこれまで、基幹作物であるコンニャクに代わる新たな作物の検討を進めている。土地利用型のコンニャクの生産が減ると遊休農地の増加につながることが課題となっており、その発生防止や解消、解決策などについて検討している。

 同町は、23年に農業者の高齢化と担い手不足の解消、新規就農の促進を目的に、「東吾妻町農業担い手受入協議会」を設立した。町・県・農協・農家が連携し、新規就農希望者の支援に取り組んでいる。

 同協議会は町農業委員会と連動。今年2月、県内で開催された新規就農相談会へも参加し、7人の就農希望者と面談した。

 希望者からは「現役農家と話せてよかった」「農産物の実物展示でイメージしやすかった」などの声が寄せられ、協議会も手ごたえを感じており、今後も力を入れていく方針だ。


多彩な補助を支援

 同町では独自の新規就農支援として、「農業機械導入事業補助金」は20万円以上の農業用機械とアタッチメント、農業用運搬機具などの購入に対しての補助などがある。他にも2泊3日の短期滞在で地域や農業を試せる「お試し移住住宅」や、町内の農業情報をまとめた「東吾妻町はじめての就農ガイド」を刊行するなど、新規就農者に有益な情報発信や受け入れる体制整備を進めている。

 移住後は空き家バンクで賃貸・売買物件を紹介する仕組みにもなっており、相談窓口と連携してスムーズに移住・営農を開始できる。

 23年に就農した堀込智喜さん(52)は「父が耕してきた畑を守りたかった。協議会ができたことでスムーズに就農できると思う。地域の先輩農家や行政の支援を頼りながら、自分らしい農業を見つけてほしい」と語る。町も「住宅・農機への補助は全国でも高水準。受け入れ体制の拡充も検討したい」と話す。

 中井会長は、「農地を守ることはもちろん大切だ。その農地を支える農家の暮らしが成り立たなければ意味がない。これからも農業振興と持続可能な農村づくりの検討を行っていきたい」と語った。

 おいらせ町農業委員会(松林勝智会長、71、農業委員14人、農地利用最適化推進委員5人)では、地域計画のブラッシュアップのため、農業委員が中心となって各地区の集落座談会などで話し合う。そこでは集積・集約化に向け、農地の将来像を共有。また、町とも連携を進め、農地中間管理事業を活用し、一丸となって集積率向上に向けて動いている。

 

 県東部にあるおいらせ町は、ヤマセと呼ばれる太平洋からの冷たい風の影響で気候は冷涼。この気候と奥入瀬川と稲生川からの豊かな水を生かした農業が特徴で、ダイコン、ナガイモなどの畑作や水稲作が盛んな町だ。

 農地の集積に当たっては、小学校の学区を基準に管内を五つに分けて地域計画を策定している。地区ごとに60~80%の集積率目標を設定し、中間管理事業の活用や担い手の確保、適地適作化などを行い、2030年度までの目標達成をめざす。

 農業委員会では、目標達成に向けて農地の状況確認を徹底する。毎年8~10月、農地パトロールを実施し、遊休農地の発生や違反転用に目を光らせる。パトロール終了後の総会では、再生可能と判断されたいわゆる「緑区分」と、基盤整備事業などの条件整備が必要となるいわゆる「黄区分」の遊休農地の所有者には利用意向調査を実施する。

 解消へ向けた指導を徹底する一方、「B分類」と判断された農地については、非農地と判定して差し支えないか、慎重に審議する。非農地判定する場合は速やかに手続きを行い、解消へつなげる。

 農業委員はこうした日頃の取り組みのなかで得た情報を持ち寄り、地区ごとの座談会において、中心的な役割を担う。

 座談会では、農業従事者の減少問題、基盤整備の要望など、課題や将来のあり方について協議するほか、出し手が縮小意向の農地については、どの担い手が耕作していくかを話し合い、地域計画のブラッシュアップにつなげている。


 松林会長は昨年から、地域おこし協力隊員とともに町民を対象とした農業体験イベントを実施している。

 きっかけは、隊員が町内で農業に関するイベントの開催を模索していたことを知ったからだ。担い手が年々減るなか、管内170㌶ほどある遊休農地の問題に苦慮していた松林会長は、町民が農業に触れることが担い手確保の第一歩になると考え、自らが主催者となることを決めたのだ。

 同イベントでは、豊原地区にある約10㌃の遊休農地を利用し、キャベツやブロッコリーなど野菜の植え付けから収穫までを体験させる。使用される野菜苗は、同町で花きや種苗の販売を展開する㈱パセリー菜(な)が無償で提供。こういった周囲の協力を得て、40人を超える参加者でにぎわい、参加者の中には将来的に就農も考えたいと話す人もいたという。

 松林会長は、担い手への集積と並行し遊休農地の解消と農業の魅力を発信していくことも農業委員会の役割であると話し、「ゆくゆくは、参加者が担い手となってもらえれば」と展望を語る。