大阪府内で活躍する女性の農業委員と農地利用最適化推進委員で構成する「おおさか農業委員会女性協議会」が今年3月、設立された。府内の女性委員の相互研さんや交流、情報交換・共有を通じて資質向上を進めるとともに、多様な経験を生かして活動を強化。地域農業の振興につなげることが目的だ。本年度は、府内38市町村で委員改選を控えており、同協議会での取り組みを通じてさらなる女性登用の促進と、女性委員の活動の活性化が期待される。
【3度の研修会で つながりを構築】
農業委員会への女性参画は、男女共同参画社会の推進に加え、地域農業に多様な視点を取り入れる観点からも重要性が高まっている。国の食料・農業・農村基本計画でも農業委員に占める女性の割合について30%の目標が掲げられている。女性委員の組織化で農委活動の活性化や、さらなる登用促進に結びつくと期待が高まっていた。
こうした情勢を踏まえ、大阪府農業会議では2025年度の事業計画において、女性委員の研修や交流を充実させ、その活動を地域農業の活性化につなげていく方針を位置付けた。
府内の女性委員らを対象に3度の研修会を開催。農業委員会活動についての講演を行ったほか、学識者を助言者に迎えた意見交換、さらに近隣府県の女性委員組織の視察・交流など活動を重ねた。その中で、女性委員同士のつながりを構築し、意見交換などを通じておのおのの活動に活かしていく重要性について認識を深めた。
これらの活動を経て、「おおさか農業委員会女性協議会設立総会」で議決、3月に正式に設立した。同会の趣旨に賛同する農業委員会会長や行政関係者をはじめ、会員となる府内女性委員らが見守る中、会長には熊取町農業委員会の大屋満喜委員を選任。副会長3人を含む理事15人が選任された。
【取り組みの共有の場に 熊取町・大屋満喜委員】
初代会長に就いた大屋委員は、同協議会設立の発起人の1人で、4期にわたり農業委員を務める。息子夫婦と約2・8㌶で営農している。ほぼ毎日自身の農産物を直売所へ出荷する道すがら、担当区域の農地を巡回するなど地域農業・農地の実態にも明るい。
同町農業委員会にもう1人いる女性委員とは、日頃から何かと連絡を取り合える間がらだ。女性委員が複数いることで相談や連携がしやすくなるという実感があるという。
また、青年層の農業委員についても今後は複数人単位での登用を進める必要があると考えている。
同協議会については、「地域ごとの課題や優れた取り組みを学び合う重要な場になる。女性委員同士で共有する機会を多く持ち、それぞれの地域での日々の活動に活かしていきたい」と意欲を示す。
同協議会では今後、こうした交流や研修などで女性委員の活動の活性化を進めるとともに、府内でのさらなる女性登用の促進を後押ししていくことが期待される。

津市では「令和版営農会議」を開き、農業関係者を集め、現場の生の声を共有している。津市農業委員会(喜多義幸会長、81、農業委員24人、農地利用最適化推進委員86人)もその一員として関係者と顔の見える関係を作り、解決策を検討している。
三重県の県庁所在地・津市は、2026年に2市6町2村が合併。面積は東京23区とほぼ同じ711平方㌔あり、県内最大の面積を誇る。広域化で、従来に比べて行政やJAなど関係機関の横の連携の希薄化や農村現場の生の声が聞こえづらくなるなどの課題も出ていた。市は19年から、農業関係者が農村現場の課題や解決策を検討するため、「令和版営農会議」を開催。津市農業委員会も参画する同会議は、内容が新たな農業施策に反映されるなど成果を上げる。
同会議のきっかけは、前葉泰幸市長との地域懇談会の場で、参加した推進委員からの「県や市はもちろん関係する団体や機関が一堂に会して話し合う場を設けてはどうか」の一言だった。この言葉が前葉市長を動かし、組織の枠を超えて地域の課題に向き合う場として同会議がスタートした。
会議は、地域性を考え市内12カ所で年2回開く。参加するのは市農林水産政策課、JA、県の農業改良普及センター、担当地域の農業委員・推進委員。話題は、獣害や担い手対策、小区画農地での営農条件悪化など、平場から中山間まで地域が抱える課題についてだ。農業委員・推進委員が日ごろの現場活動で得た情報を会議の場で共有し、解決に向け議論を深めてきた。
この結果、24年度には「耕作条件不利農地借受奨励金」や「小規模機械導入支援」など、①耕作放棄の防止②持続的な営農体制の強化③獣害・虫害から農地を守る――の三つのテーマ別に、農家を支える七つの支援策で構成する市独自の「営農継続支援事業」が創設された。
また、同会議が現場で今何が必要かに重点を置いて議論することに対し、農業委員会では、将来の市農業振興に必要なことは何かについて議論する「地域別事業推進会議」も開いている。
委員の任期3年間に合わせ、1年目は各地域の将来に向けての課題取りまとめ、2年目は市へ取りまとめた意見提出、3年目は提出した意見の政策などへの反映状況の検証などを行っている。
同市農業委員会では、「引き続き農村現場の声を委員が取りまとめ、地域の実情に即した営農の継続と農地利用の最適化に取り組んでいく」としている。

埼玉県比企地域の女性農業委員・農地利用最適化推進委員で構成される「比企地域女性農業委員・農地利用最適化推進委員連絡会」。改選を迎える農業委員会の市町村長と農業委員会会長を訪問し、女性委員の登用を求める活動を展開。会員の女性委員は連絡会で経験を積み、農業委員会活動を活性化させている。
農業委員会の女性の登用は、農業委員会の男女共同参画を促進するための重要な施策だ。2025年に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」でも、農業委員の女性割合を23年度の14%から30年度までに30%にするKPIを掲げている。
同連絡会は04年4月に比企地域の女性農業委員10人で発足。当時は同地域の9市町村のうち女性農業委員がいるのはわずか5町だった。立ち上げメンバーの小井川敏子さんは「手探りの状態だったが、仲間の輪を広げるために前向きに意見を出し合った」と振り返る。
連絡会は、農業委員としての資質向上のため、農業関連組織や施設の視察、情報交換を密に行った。また毎年の活動実績を各地の農業委員会会長らに書面で報告し、女性農業委員を増やすための支援を呼び掛けてきた。
この取り組みは女性農業委員登用の推進活動として、農業委員・推進委員が任期満了を迎える市町村の首長らに直接要請する活動に発展。26年度現在、同地域内8市町村で合計19人の女性委員が在職している。地域の女性農業委員は全体の2割に向上し、2市町では3割を超える。
山田富子農業委員は「横のつながりを大切に、みんなで楽しみながら続けた結果。サポートしてくれた人たちにも感謝したい」と笑顔で話す。
同地域では、女性委員の発案により農地集積を促進した事例も多い。
飛び地の田畑が多く作業効率が悪いことに課題を感じた委員が、地域住民へのアンケートを実施。意向を反映させた農地集積案を策定して、農地中間管理事業の活用につなげた例もある。集積につなげた久保田節子農業委員は「『このままではいけない ! 』という想いで動くことが大切。会の仲間と事例共有して、それぞれの活動につなげている」という。
同会の会長は1年ごとに交代する。会に参加する多くの女性委員がリーダーとしてスキルアップする機会になっている。地域内には女性が農業委員会会長を務めるところが2市町あるなど、経験を重ねた委員が女性活躍のモデルを示している。
同連絡会は昨年度、「農山漁村女性活躍表彰」(主催・農山漁村男女共同参画推進協議会)の「女性登用・組織参画部門」で農林水産大臣賞を受賞した。同年に会長を務めた杉田京子農業委員は「地域の声と丁寧に向き合い、課題解決に尽力したい」と先を見据える。

遠野市農業委員会(藤田優一会長、農業委員18人、農地利用最適化推進委員26人)は、11地区の地域計画の検討会に年2回参加し、「白地農地」の解消に取り組む。新規就農者の受け入れなど、地図で情報を共有し関係者から意見を聞く。
集積・集約徹底し白地激減
遠野市は岩手県東南部に位置し、柳田國男の『遠野物語』で知られ、カッパや座敷わらしにまつわる言い伝えが残る「民話の里」。早池峰山など山々に囲まれた遠野盆地では、朝晩の寒暖差が育む農作物が実り、ビールの原材料「ホップ」の生産地でもある。
同市では2025年3月に11地区で地域計画を策定し、将来の受け手が位置付けられていない農地(白地農地)の面積割合が64%であることが判明した。そのため農業委員会では25年から26年にかけた秋と冬の2回、すべての地区でブラッシュアップのための地区検討会を開催した。
農業者延べ164人と農業委員、推進委員延べ64人が参加した検討会では、地域計画をブラッシュアップさせようと関係者で意見を交換。中山間地域等直接支払の協定を結んでいる集落営農組織を担い手として位置付け、改めて圃場整備地区の担い手への集積・集約を徹底することになった。その結果、白地農地の面積割合は48%まで減少した。
検討会を機に地元の理解醸成
26年2月に開催された上郷地区の検討会では、目標地図を広げ、耕作者の確認や農地交換による集約化を検討した。
同地区では地域おこし協力隊の隊員を次世代のホップ農家として育成しようと取り組んでおり、栽培に適した農地を集約化してあっせんするため関係者の意見を聞いた。こうした地域計画の話し合いが、新規就農者・参入者に対する地元の理解醸成にもつながっている。
検討会に参加した農業委員は「まだまだ参加者が少ない。もっと小さい地域単位での話し合いが必要かもしれない。話し合いの結果を地域に浸透させていくことも重要」と語っている。
藤田会長は、「水田1~2㌶規模の70代ががんばっている。リタイアしたとき遊休農地とならないように次世代へ引き継ぐため、常に担い手候補を意識した最適化活動を行い、農業委員会の力を発揮したい」と今後の抱負を語った。
同市では、本年度も2回の地区検討会を予定しており、農地集約アプリを活用したマッチング方法も取り入れるなど、若手農業者が気軽に参加できる検討会を企画している。

長崎県松浦市農業委員会(佐々木龍二会長、73、農業委員19人、農地利用最適化推進委員18人)は、2024年度から所有者不明農地対策について能動的な取り組みをスタートさせた。現在は地域計画のブラッシュアップに向けて中心的役割を担い、農地集積を推進している。
報告書通じ各申請を支援、委員はすべての案件関与
松浦市では、農地の貸借や売買の相談は農業委員と推進委員を通すことが定着。農地の権利移動や設定事務は、担当した農業委員・推進委員の氏名を記載し提出される「掘り起こし活動実績報告書」からスタートする。農業委員会事務局は、貸借期間満了の5カ月前に出し手と受け手に対して文書で通知し更新などの意向を把握。通知文書には、当該地区担当の委員の連絡先が載る。
委員は、出し手・受け手の意向や賃料などを確認し、作成した報告書を事務局に出すため、すべての農地の貸借などに関与することになる。
市単独予算の「市担い手農地集積促進借り手助成金」の活用もこの報告書を経て申請される。過去5年間の実績は新規・更新合わせて1293件、343㌶と活発だ。
経験活かした所有者不明対策
同市農業委員会では「所有者不明農地制度」の活用も積極的に進める。
農業委員会事務局では、期間満了予定の通知をする際、登記名義人を確認。地権者名が異なる場合、農業者からの相談を待つことなく農地バンクの委託費で農業委員会に設置する推進員2人が相関図を作り、同制度の指導をする。
これは24年に、更新予定の農地が所有者不明農地であることが判明したことがきっかけだった。すでに相関図を作成していたため、すぐに各委員が出し手・受け手の意向確認し公示。円滑な手続きで、同年内に利用権を設定することができたからだ。
それ以降も名義人が異なる場合は事前に探索しており、これまでに5件、1万4412平方㍍の農地を、同制度を活用して利用権を設定する。現在も4件を処理中だ。
14年の農地バンク法が施行された当初からバンクを通じた農地の貸借事務を農業委員会が担当してきたこと、また、すべての貸借などに委員が関与していることで地域の担い手と農地について最も詳しいことが功を奏した。
地域計画集約へ検討進む
また、同市農業委員会では、実行やブラッシュアップなどの地域計画業務を一体的に実施。農業委員会で行うことが効率的と考え、25年度から中心となって進めている。
本年度は地域計画の地区数を現在の22から16に集約することも予定する。土地改良区は単独の地区としていたが、集約対象にすることにした。土地改良区も他の地域計画と地権者などが重複する場合が多く、農業者が効率的に参加できるようにすることがねらいだ。
地域計画などに関する地域での話し合いは、農業委員・推進委員が進める。会場の予約や当日のファシリテーターも委員が行う。委員の負担は小さくないが、佐々木会長は「これからも農地のことは何でも相談してもらえる、頼れる農業委員会として取り組んでいきたい」と話す。

広島市農業委員会(福島幸治会長、78、農業委員19人、農地利用最適化推進委員42人)は、日ごろの活動で得られた調査結果や知見から、同市の農業に関する指針を取りまとめた。また、それをもとにした意見書を広島市長に提出するなど精力的に活動している。
めざすべき姿実現へ市長に意見
同市農業委員会は2025年6月に改選。新体制のもと25年11月5日に「農地等の利用の最適化の推進に関する指針」を策定した。
これは広島市の農業が業として成り立ち、農業者が定着し、持続可能な産業となり活力ある農業・農村を築くことをめざした内容。指針では遊休農地の発生防止・解消について、今まで実施してきた利用状況調査結果をもとに3年後の遊休農地の割合を0.3%以下に維持する目標を掲げた。
新規参入の促進については、毎年49経営体の増加を目標に、「ひろしま活力農業研修生」などの担い手に農地をあっせんし、地域に定着できるよう就農支援を行う計画としている。
また、同市農業委員会は25年10月、広島市の松井一實市長に対して「令和8年度広島市農政に関する意見書」を提出。指針内で定めた「めざすべき農業・農村の実現」に向けて日ごろの活動から得られた知見を意見書に取りまとめた。「農地の利活用に関する事項」や「多様な担い手の育成・支援に関する事項」、そして「有害鳥獣対策の強化に関する事項」の3点を盛り込んだ。
松井市長は「農業振興をまちづくりと一体で捉え、農地利活用、多様な担い手の育成・支援、有害鳥獣対策などの課題に対して、現場目線の伴走支援型の対策を行っていく」と述べた。
意見交換会で担い手の声聞く
同市農業委員会では今年2月、担い手の経営課題や意向を把握するため、認定農業者と農業委員・推進委員との意見交換会を開いた。「担い手と経営対策」をテーマに都市部と中山間地域に分かれてグループ討議を実施。多くの班から、農業資材の高騰で経営が圧迫していると意見が出た。その中で、中山間地域の班では「人手不足を解消するためには早期退職した自衛官など若い力を活用するのはどうか」などと意見があった。
また、担い手育成を進めるためには、幼少期から「食農教育」や「地産地消」を推進することが大切だという意見も出た。
同市農業委員会事務局の浅木研一次長は、「認定農業者との意見交換会は農業委員会活動の充実にもつながる。市への意見書提出については、現場の声を市へつなげる重要な取り組みと位置づけ、今後も継続していきたい」と語る。

「京都農業経営塾」で若手経営者を支援
京都府農業会議(栗山正隆会長)は、府農業をリードする若手農業経営者を支援するため、府と連携して2018年度から「京都農業経営塾」を開講。卒塾生は各地で活躍している。
〇強み弱み整理し経営理念磨く 実現に向けた道筋も計画化
府農業会議が実施する京都農業経営塾は、1年間に八つの講座と個別相談を受けられる、経営者の育成に特化した塾。コロナ禍による中断もあったが、すでに1期生から7期生まで70人が塾を卒業した。卒塾生は「企業的農業経営者」として府内各地で活躍している。
経営塾の講座は、座学とグループ討論を通じて受講生が自分の強みと弱みを整理し、各自の経営理念を磨き上げる。それとともに、財務管理や労務管理について学び、今後の事業計画を策定するカリキュラムがある。
経営理念の確立に向けては、過去に経験したできごとを何度も振り返り、データを分析。その際の改善策を考え、経営者として進む方向を明確にしていく形で進める。
「農業を通じた社会の幸福の増進をめざす」「社員と家族の幸せを考え、顧客の要望に応える」などの経営理念を決め、その実現に向けた道筋も事業計画に落とし込む。
そのために、自身の生産物の販売先や消費者からの評価、購買者の属性などを把握。販路に応じた生産や雇用による労働力確保を検討し、数年先までの事業計画を組み立てる。
〇卒塾生の多くが各地で活躍 悩み相談しレベルアップも
経営塾には、農業改良普及センターなど関係機関の職員が企画段階から参画し、受講生への声かけから、研修後のフォローまで行っている。塾生は、充実した個別相談を活用して、短期間で経営者としての能力を高め、経営計画を完成させて巣立っていく。
卒塾生の多くは、府の指導農業士や青年農業士、府農業法人経営者会議の役員として府内各地で活躍している。
年1回の「OBの集い」では、新旧の卒塾生が交流し、悩みを相談しあう。さらに、塾で作成した経営計画を発展させてレベルアップした経験を先輩から後輩に伝えるなど、府農業の未来を担う仲間のネットワークとして機能している。
多くの卒塾生が、「自分の経験を後輩に伝えて、みんなに成功してほしい」と願い、知り合いの若手農業者に経営塾の受講を呼びかけている。

愛知県の春日井市農業委員会(松浦成司会長、57)は、2024年度末までに農業委員や農地利用最適化推進委員が参画して地域計画を策定。同市廻間地区をモデル地区にし「地域まるっと中間管理方式」を導入し、一般社団法人に農地を集積・集約した。現在も法人を軸に地域の農業を盛り上げている。
モデル地区で 「まるっと方式」 活用
サボテンで有名な春日井市は、名古屋市の東北部に隣接。交通の利便性が高いことから、都市化が進む。農業の担い手が不足し兼業化、高齢化も進んでおり、農地の管理をどのようにするかが課題となっていた。
春日井市農業委員会は24年度、農業委員・推進委員らが中心になって地域計画を策定。話し合いの中では、「耕作者の高齢化」や「後継者が確保できない」などの声が多く出たという。
同市農業委員会では解決方法を模索し、福井県の先進事例の視察や話し合いの中で、「地域の農地は、地域で守っていかなければいけない」と認識を統一した。
地域計画の基本的な方針は、同市の水田主体の8地区を対象に集落営農組織が核となる法人を設立し農地を集積することになった。多面的機能支払交付金の活用も含めた形で地域住民の参加も促すことで合意した。
計画の実行について、モデル地区に廻間地区が選ばれた。この地区は、1977年に土地改良事業を実施しており17・6㌶に団地化された農地だが、所有者は126人で平均年齢75歳、平均の農地面積は7・2㌃で経営する農業者の高齢化や農地の細分化が目立つ地域だった。中心的な担い手が不在のため、「地域まるっと中間管理方式」を活用。地権者を構成員にした一般社団法人が農地中間管理機構を介して農地を借り受けて経営することができるこの方式が、廻間地区の実情に合致していたからだ。
松浦会長が法人の代表理事になり、2025年4月に「(一社)エースファーム」を設立。農地集積を進め、地域の農地面積の86%となる15㌶を集積した。そのうち法人への集約率は約42%の約7・4㌶だった。
近隣農地も集め営農、後継者確保へ
農地の集約化に当たっては、同法人の役員と市が協力して地権者を一軒ずつ訪問して使用貸借の合意を得たという。
代表理事の松浦会長は、「法人設立のため何度も公証役場に相談に行った」「設立したばかりの法人なので、地権者の理解を得ることに苦労したが、役員が水利組合や土地改良区の役員も務めているので信用を得た」と懐かしみながらも、「役員や市役所の協力で立ち上げができた。ご先祖さまが残していただいた農地を大切に守っていきたい」と話す。
同市では、近隣の地区についても同法人に集約化を進める方針だ。営農することで地域の農地を維持・管理をしていくことはもちろん、多面的機能支払交付金を活用し地域住民との協力で草刈りなどを計画している。
また、効率的な営農で、若手の後継者の確保をめざしていくなど課題解決に意欲的だ。

群馬県の東吾妻町農業委員会(中井毅彦会長、70)は2025年4月から、町の特産作物の在り方や持続可能な農村づくりを検討するための二つのワーキンググループを始動。また、農業委員会などを中心に新規就農の促進にも力を入れる。
同町農業委員会で始まったのは、「農業振興(AGRI)」と「持続可能な農村づくり(LIFE)」のワーキンググループ。農業委員12人と農地利用最適化推進委員18人の全員は、どちらかのグループに所属している。
農業委員会活動の中で、両委員が顔を会わせるのは年3回程度だったこともあり、中井会長の「農業委員と推進委員が連携した活動を行いたい」という想いと、町の農業振興の発展を後押しようと、25年の改選に合わせて動きだした。
ワーキンググループではこれまで、基幹作物であるコンニャクに代わる新たな作物の検討を進めている。土地利用型のコンニャクの生産が減ると遊休農地の増加につながることが課題となっており、その発生防止や解消、解決策などについて検討している。
同町は、23年に農業者の高齢化と担い手不足の解消、新規就農の促進を目的に、「東吾妻町農業担い手受入協議会」を設立した。町・県・農協・農家が連携し、新規就農希望者の支援に取り組んでいる。
同協議会は町農業委員会と連動。今年2月、県内で開催された新規就農相談会へも参加し、7人の就農希望者と面談した。
希望者からは「現役農家と話せてよかった」「農産物の実物展示でイメージしやすかった」などの声が寄せられ、協議会も手ごたえを感じており、今後も力を入れていく方針だ。
多彩な補助を支援
同町では独自の新規就農支援として、「農業機械導入事業補助金」は20万円以上の農業用機械とアタッチメント、農業用運搬機具などの購入に対しての補助などがある。他にも2泊3日の短期滞在で地域や農業を試せる「お試し移住住宅」や、町内の農業情報をまとめた「東吾妻町はじめての就農ガイド」を刊行するなど、新規就農者に有益な情報発信や受け入れる体制整備を進めている。
移住後は空き家バンクで賃貸・売買物件を紹介する仕組みにもなっており、相談窓口と連携してスムーズに移住・営農を開始できる。
23年に就農した堀込智喜さん(52)は「父が耕してきた畑を守りたかった。協議会ができたことでスムーズに就農できると思う。地域の先輩農家や行政の支援を頼りながら、自分らしい農業を見つけてほしい」と語る。町も「住宅・農機への補助は全国でも高水準。受け入れ体制の拡充も検討したい」と話す。
中井会長は、「農地を守ることはもちろん大切だ。その農地を支える農家の暮らしが成り立たなければ意味がない。これからも農業振興と持続可能な農村づくりの検討を行っていきたい」と語った。

おいらせ町農業委員会(松林勝智会長、71、農業委員14人、農地利用最適化推進委員5人)では、地域計画のブラッシュアップのため、農業委員が中心となって各地区の集落座談会などで話し合う。そこでは集積・集約化に向け、農地の将来像を共有。また、町とも連携を進め、農地中間管理事業を活用し、一丸となって集積率向上に向けて動いている。
県東部にあるおいらせ町は、ヤマセと呼ばれる太平洋からの冷たい風の影響で気候は冷涼。この気候と奥入瀬川と稲生川からの豊かな水を生かした農業が特徴で、ダイコン、ナガイモなどの畑作や水稲作が盛んな町だ。
農地の集積に当たっては、小学校の学区を基準に管内を五つに分けて地域計画を策定している。地区ごとに60~80%の集積率目標を設定し、中間管理事業の活用や担い手の確保、適地適作化などを行い、2030年度までの目標達成をめざす。
農業委員会では、目標達成に向けて農地の状況確認を徹底する。毎年8~10月、農地パトロールを実施し、遊休農地の発生や違反転用に目を光らせる。パトロール終了後の総会では、再生可能と判断されたいわゆる「緑区分」と、基盤整備事業などの条件整備が必要となるいわゆる「黄区分」の遊休農地の所有者には利用意向調査を実施する。
解消へ向けた指導を徹底する一方、「B分類」と判断された農地については、非農地と判定して差し支えないか、慎重に審議する。非農地判定する場合は速やかに手続きを行い、解消へつなげる。
農業委員はこうした日頃の取り組みのなかで得た情報を持ち寄り、地区ごとの座談会において、中心的な役割を担う。
座談会では、農業従事者の減少問題、基盤整備の要望など、課題や将来のあり方について協議するほか、出し手が縮小意向の農地については、どの担い手が耕作していくかを話し合い、地域計画のブラッシュアップにつなげている。
松林会長は昨年から、地域おこし協力隊員とともに町民を対象とした農業体験イベントを実施している。
きっかけは、隊員が町内で農業に関するイベントの開催を模索していたことを知ったからだ。担い手が年々減るなか、管内170㌶ほどある遊休農地の問題に苦慮していた松林会長は、町民が農業に触れることが担い手確保の第一歩になると考え、自らが主催者となることを決めたのだ。
同イベントでは、豊原地区にある約10㌃の遊休農地を利用し、キャベツやブロッコリーなど野菜の植え付けから収穫までを体験させる。使用される野菜苗は、同町で花きや種苗の販売を展開する㈱パセリー菜(な)が無償で提供。こういった周囲の協力を得て、40人を超える参加者でにぎわい、参加者の中には将来的に就農も考えたいと話す人もいたという。
松林会長は、担い手への集積と並行し遊休農地の解消と農業の魅力を発信していくことも農業委員会の役割であると話し、「ゆくゆくは、参加者が担い手となってもらえれば」と展望を語る。









