市内全域の農地が市街化区域の東村山市は生産緑地が多く、独自の“農地バンク”を都内でいち早く設置した。貴重な農地を保全しようと、東村山市農業委員会(鈴木八百造会長、農業委員14人)が中心となりJAや市とともに貸借の意向を収集する。また、同市農業委員会では情報提供活動にも力を入れる。


 東村山市は、東京の北西部に位置する人口約15万人の都市。狭山丘陵の八国山緑地や多摩湖に接した狭山公園など緑豊かな里山には武蔵野の面影が残る。


 市内は農地の全域が市街化区域になっており、農地約132㌶のうち86%が生産緑地に指定され、特定生産緑地の指定率は83%を超える。


 市では、都市農地貸借円滑化法が制定された2018年から4年後の22年1月に、同法を基にした市独自の農地バンク制度を創設。都内でいち早く貸借のマッチングを制度化した。以来、26年6月末現在で同法による同市内の農地貸借は12件、合計面積は3㌶にのぼる。


 同バンク制度は、農業委員会とJA、市の3者が事務局となり生産緑地の貸借を支援。事務局がそれぞれの強みを活かした役割分担を行う。市は制度説明や情報管理を担い、JAは営農指導の機会に情報を集める。農業委員は担当地域に密接な立場として農業者からの相談を引き受けている。


 マッチングの肝となるのは農地所有者(貸付希望者)と借受希望者の条件の把握だ。登録の際、借受希望者は経営概要のほか、農薬の使用、露地か施設かなどの栽培体系の細かな条件を記入する。貸付希望者は貸し付け相手となる者の条件(市内・外、個人・法人、認定農業者かどうかなど)を記入する。それぞれの希望に沿った貸借を実現することで、貸借後のトラブルの防止にもつながっているという。


 同市農業委員会では、情報提供にも力を入れている。


 毎年10月ごろに、市内の経営者組織「東村山市農業者クラブ」やJAとともに、農家座談会を市内5地区で共催。農業委員会の活動報告のほか、農地バンクや補助事業の説明、全国農業新聞と農業者年金の推進も行う。25年度は農業者ら延べ100人が参加した。


 また、市農業者クラブでは、市議会議員も参加対象として市内の視察研修と意見交換会を実施する。農業者間の技術研鑽(けんさん)に加え、市議会との関係強化につなげている。


 市内の農業者自身も情報発信の機会がある。市が22年に導入した地産地消情報発信アプリ「ロカスタ」は、市内の農産物直売所の場所や市産の農産物を使った飲食店の紹介に加え、農業者が直接、市民に情報を発信することができる。スマホなどで見ることができ、「庭先で販売する野菜や果物について、旬の時期に素早く発信できる」と農業者からも好評だ。


 同市農業委員会の石田勉事務局長は「農業者と市民、行政がうまくつながりながら、東村山市の農業の魅力を発信したい」と話す。

 全国農業図書(東京都、全国農業会議所)はこのほど、「農業・農地の未来をつくる 地域計画のつくり方・考え方」を発行した=写真。著者は全国農業会議所専門相談員の澤畑佳夫さん。


 同書では、澤畑さんの経験から導き出した、地域計画ブラッシュアップのための30の視点を関連する事例とともに解説。「責めるのではなく学びとして共有する姿勢が大切」と、失敗した事例も数多く取り上げている。


 地域住民には「自分たちで考え、動き出すための第1歩」に、行政には「“伴走者としてのあり方”を見つめなおすきっかけ」となる一冊。注文は各都道府県農業会議か全国農業図書のホームページから。

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