新規就農者の約5割が60歳以上-農業の人材確保に向けて(前編)-横田茂永氏
農業の人材確保においては、農業従事者、とりわけ基幹的農業従事者の減少と高齢化が問題とされており、新規就農の推進が求められているが、それとは逆に新規就農者の数は、2006年の8万1030人から25年には4万2850人まで半減するとともに、6
農業の人材確保においては、農業従事者、とりわけ基幹的農業従事者の減少と高齢化が問題とされており、新規就農の推進が求められているが、それとは逆に新規就農者の数は、2006年の8万1030人から25年には4万2850人まで半減するとともに、60歳以上が約5割を占める状況にある。高齢化についていえば、入り口ですでに高齢化が始まっていることになる。
60歳以上の新規就農者 90%が農家の後継者
新規就農者という言葉を聞くと、都市部の非農家の若者が農業を始めるイメージを持つことも多いと思われるが、68%が新規自営農業就農者、いわゆる農家の後継者である。就学や他産業従事から自営農業が主になったときに新規自営農業就農者にカウントされるが、多くの場合それは定年後となっており、60歳以上の新規就農者の90%が新規自営農業就農者である。
このような現実を見ると、まずは後継者が早い段階で自営農業を主にすることが解決策の一つと考えられる。しかしながら、他産業を定年した後に定年がない自営農業に従事するというライフスタイルは、個人レベルでは合理的でもある。就農を早めるのが困難であるとしたら定年前の兼業での農業従事のウエートを可能な限り上げることも選択肢として検討すべきことになるだろう。新規就農者を増やすことにはならないが、事実上の人材確保にはなり得る。
若い世代は新規雇用就農者や新規参入者
49歳以下の新規就農者に限ると1万4410人であるが、全体に比べると新規自営農業就農者の割合が35%まで縮小している。逆にいうと若い世代には、相対的に新規雇用就農者や新規参入者が多いことがわかる。とりわけ20代に限ると新規雇用就農者が65%と圧倒的に多い。
農業での雇用というと、近年では外国人労働力、技能実習生のイメージが強いが、新規雇用就農者の数には技能実習生や特定技能で受け入れた外国人は含まれていない。また、雇用前に農業に従事している場合も除かれる。一方で、農家の後継者が研修も兼ねて、自家以外の農業法人などで新規雇用就農者となるケースが見られる。
農家の後継者や雇用就農は経営資源の取得で有利
就農においては、農地、資金、経営技術という三つの経営資源を取得する必要があるが、農家の後継者は、これらを親元から引き継げるため非農家出身者に比べて圧倒的に有利となる。これに加えて、若い世代の新規自営農業就農者は、労働力の確保でも有利性を発揮することができる。親あるいは祖父母による熟練労働力が確保されていることが多いからである。
非農家出身者も新規参入であれば三つの経営資源などを取得しなければならないが、雇用就農であればその必要がない。若い世代の非農家出身者が農業を始めようとする場合に、新規参入よりも雇用就農に流れるのは当然といえる。25年の新規雇用就農者は1万250人(20代2890人)、うち学校を卒業して就農する新規学卒就農者は1680人(20代1210人)である。
大学校や専門職大学など人材育成に大きな役割
この新規学卒就農者の育成には、道府県に設立されている農業大学校41校および静岡県立農林環境専門職大学短期大学部の貢献が少なくない。学生のうち非農家出身者が全体で7割近くを占めていることもあり、24年度の卒業生のうち519人が雇用就農している。この数字を学卒就農者と比べると約3割、20代の学卒就農者に限ると約4割となる。自営農業従事と雇用就農を合わせると754人で、24年度の大学813校からの農林業従事者731人(農学科出身377人)、短大297校からの農林業従事者81人(農業科出身66人)と比べても農業人材の育成に大きな役割を果たしていることがわかる。
(出典=文科省「令和7年学校基本調査」、全国農業大学校協議会「令和7年度全国農業大学校等の概要」)
<筆者プロフィール>
2003年東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程修了、博士(農学)取得。旧・JC総研主任研究員、全国農業会議所専門員、京都大学大学院「農林中央金庫」寄付講座特定准教授などを経て、静岡県立農林環境専門職大学短期大学部准教授、24年より同短期大学部教授・学科長。











