侵入を防ぐあの手この手 自分たちでできるサル対策(岐阜・郡上市 酒井義広)








写真1は、くくりわなにかかったサルです。場所は道路からほんの20㍍ほど入ったスギ林の獣道。獣道はイノシシやシカ、サル、その他中小動物が共用します。サルはわなにかかると高い所に上がる傾向があり、見回りに行くと、枝を揺らして威嚇してきました。
写真1は、くくりわなにかかったサルです。場所は道路からほんの20㍍ほど入ったスギ林の獣道。獣道はイノシシやシカ、サル、その他中小動物が共用します。サルはわなにかかると高い所に上がる傾向があり、見回りに行くと、枝を揺らして威嚇してきました。
菜園、放置果樹はサルのコンビニ
私は元県職員で、鳥獣害対策の専門指導員などを務め、現在は郡上市和良町で農業をしながら、農水省の農作物野生鳥獣被害対策アドバイザーなどもしています。わが宮地集落(50戸、農地20㌶、水田143枚の中山間地域)でも長年さまざまな鳥獣害対策に取り組み、イノシシやシカなど大型獣の被害はかなり抑えられてきました。しかしいまだ厄介なのは、ワイヤーメッシュをよじ登ったり電気柵をくぐったり飛んできたりする中小の鳥獣です。
とくに最近の市の鳥獣被害額はサルが一番多く、対策が緩い家庭菜園や放置果樹、イネの二番穂などがサルの「コンビニ」となり、群れが居付く原因になっています。写真のサルは雄で単独行動していたようですが、群れもよく見かけます。
しかしサルの捕獲数はシカやイノシシと比較して1割以下です。狩猟動物ではないサルは昔から銃猟師は撃ちたがりません。市内には高価なサルの大型囲いわなを補助事業で導入したところもありますが、あまり捕獲数が伸びていません。サルはエサを求めて巡回するので同じ場所に置きっぱなしでは効率が上がりません。またわなの中の仲間が人間に捕獲される場面を外から見てしまった個体は、もう立ち寄りません。サル知恵と闘うのは大変です。
山の奥まで追い払う
私は「鳥獣災害防止七策」を提案しています。①皆で②囲って③(エサ場・ひそみ場を)除いて④追い切って(追い払い)⑤捕って⑥食べ⑦里人で――。鳥獣害対策は住民主体で総合的に取り組むことが大事だと思います。また低コストで費用対効果の高い対策資材や器具、施設を開発し、普及にも取り組んできました。
山からやって来るサルを見たら、まず追い払います(④)。サルは(カラスも)視覚が優れ、すぐ人慣れが始まり、被害が多発します。ロケット花火での追い払いは昔からありますが、ちょっと脅かすぐらいではすぐに戻って食害を始めます。
そこで試行錯誤の結果、パワーが増すロケット花火の発射器具「退散鳥獣」を開発しました。これで発射すると、飛距離が20~40㍍の玩具花火も、風に負けず70㍍以上飛ばせます。2連発射式なので、サルが近くの山林に逃げ込んでも、すぐそこへ再発砲して追い払い切ることができます。
数を減らすことも大切
捕って個体数を調整することも重要です(⑤)。今や里山集落はサルにとってコンビニ状態(猿の惑星)。神出鬼没なサル軍団に対して住民がどう闘うか。しかし猟師は高齢化して担い手不足。私も60歳でわな免許を取得し、市の鳥獣被害対策実施隊員になりました。毎年さまざまな害獣の捕獲報奨金は確定申告しているほどです(サルは1頭3万円)。
低コストで簡単に設置できるサルの捕獲器具を求めて、実証を繰り返して開発したものを二つ紹介します。
▼移動可能な囲いわな「猿の落園」
サルは群れ全体で巡回を繰り返すので、出没場所に囲いわなを設置してタイムリーな捕獲を行います。大型囲いわなはなかなか移設ができず、何百万円もしますが、「猿の落園」は20万円ほどで手作りでき、簡単に移設できる3.6㍍四方の囲いわなです。町内の農業法人が補助事業により50万円ほどで施工などを請け負っています。数人いれば半日もかからず組み立てられます。
特にエサが少ない秋~春に、カキ、ミカン、カボチャ、クリなどをオリの中にまき、扉は開放してサルに自由に出入りさせます。慣れてきたある日、エサをまいて扉を閉めると、サルはなんとか入ろうと、天井に設置した唯一の侵入口から飛び降ります。這い上がれないので、そのまま捕獲できます。
▼お手軽くくりわな「獣道御用」
写真1のように、サルもくくりわなで捕獲できます。山際は獣道、ハウスや家庭菜園周りは入り口近くに設置。カキやクリなどの果樹にサルが来始めたら、樹の下や周囲に仕掛ければ間違いなく捕獲できます。とくに山際の畑や放任果樹周りは要注意。
「獣道御用」は、ガイド(埋め込み枠)付き、ステンレス製やプラスティック製の感度がよいくくりわなで、縁を踏まれることによる空はじきも防ぐつくりになっています。郡上市ではサルのくくりわなでの捕獲は囲いわなより多いです。
みんなが獣害対策の担い手
サル対策は侵入防止柵の設置(サルも防げるネット&電気柵「猪鹿鳥無猿柵」も作りました)も含めて、総合的に取り組まないと被害軽減は図れないと思います。また行政や猟友会任せじゃなく、有害獣駆除も追い払い活動も、集落みんなで闘うことが一番効果的です。
おかげでわが集落ではサル害に悩まされながらも、以前は30頭以上の猿軍団ばかりだったのが、最近は5頭以下の群れしか見なくなりました。
(記事提供「現代農業」農文協)
※今回紹介した器具は地元メーカーと共同開発。特許を取ったものでないので、ご自由にまねして作ってください。和良町の農業法人や工房が製作販売、設置工事、補助事業にも対応。








