有機物を即座に分解 虫の糞は最強の肥料

2026年09月11日
     
チッソ量をそろえてサトイモを栽培。ミズアブ肥料区は化成肥料区と同等の収量だった(左から無施肥区、化成肥料区、ミズアブ肥料区)
ミズアブの成虫。孵化後1カ月ほどで成虫になる
筆者の家で出た生ごみ。ここにミズアブの幼虫を3千~4千個体入れた
2週間後、生ごみを食べて育った幼虫とフラス(糞)。食べきれなかった手羽先の骨やコーヒーフィルターなどが残った
だだちゃ豆の生育の違い
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 見た目はいわゆるウジで、にゅるにゅるとうごめく――多くの人が思わず顔をしかめる、アメリカミズアブの幼虫である。いま、この気持ち悪い虫ほど世界で注目を集める昆虫はない。その背景には、生ごみの処理問題がある。


 アメリカミズアブ(Hermeti

 見た目はいわゆるウジで、にゅるにゅるとうごめく――多くの人が思わず顔をしかめる、アメリカミズアブの幼虫である。いま、この気持ち悪い虫ほど世界で注目を集める昆虫はない。その背景には、生ごみの処理問題がある。


 アメリカミズアブ(Hermetia illucens)は北~中南米原産で、1950年代以降に日本へ定着した。成虫は15~20㍉と小さく、吸血も摂食もしない。幼虫は1~20㍉で食品や農作物の(ざん)()や家畜(ふん)をエサとして利用できる。たとえば、コンビニの廃棄物1㌔にミズアブの若齢幼虫を10㌘投入すると、わずか2週間で質量は約70%減少。ふくよかに育った幼虫(ニワトリなどの飼料になる)200㌘と水分が抜けたさらさらなフラス(主に糞、肥料になる)100㌘だけが残り、生ごみをほぼ完全に資源化できる。幼虫の密度を高めることで処理期間を数日に短縮することもできる。


ミズアブで生ごみを地域循環

 筆者が率いるプロジェクト「ヤマダイミズアブ」では4年間、山形大学農学部のコンビニで出た食品残渣を全量処理してきた。


 従来は自治体の焼却炉でCO2を排出して燃やしていたが、現在は学内で処理が完結。得られたフラスは庄内農業高校の圃場へ、同校が育てた野菜は鶴岡市立荘内病院の病院食へ――という地域循環イベントを3年連続で運営している。


 ミズアブ研究は海外では巨大プラント建設や法整備するまで急拡大し、国内でも東京大学や農研機構、大阪府環農水研などが協働して基盤を築いている。


 そのなかでヤマダイミズアブは、ミズアブをキャンパスで採取→学内の残渣で飼育→地域へ普及という超小規模・地域特化型の実装に徹している。幼虫はタンパク質や脂質に富んだ飼料となり、近隣の養鶏農家からは老鶏の産卵率が上がったとの報告もあるが、今回はフラスの肥効に焦点を当てたい。


初期から効き化成肥料並みの収量


 大学のだだちゃ豆圃場で、無施肥区と市販の豚糞堆肥区(10㌃当たり80㌔)、ミズアブ肥料区(10㌃当たりフラス250㌔)、化成肥料区(チッソ8%・リン酸8%・カリ8%)の4区を設け、投入するチッソ量をそろえて比較した。ミズアブの糞はエサによって肥料成分が変化するが、このときのものはチッソ2.2%、リン酸3.08%、カリ2.84%だった。


 ミズアブ肥料区の(さや)収量は1株当たり84㌘と化成肥料区の1株当たり85㌘に肩を並べ、豚糞堆肥区と無施肥区(ともに1株当たり約52㌘)の約1.6倍に達した。草丈やSPAD値(葉緑素量)も化成肥料区に匹敵し、可溶性アンモニウム態チッソの効果もあってか有機質肥料にありがちな初期生育の遅れはない。充実莢は無施肥区や豚糞堆肥区より29%増え、空莢は増えなかった。また、ミズアブ肥料区では土着天敵のゴミムシ類を中心とした捕食性節足動物がほかの区より多く、アザミウマの葉被害も最小だった。フラスは化成肥料と同等の増収効果を示しつつ、土壌生態系を底上げできる面白い肥料といえる。


 水稲やサトイモ、タマネギ、ニンニクなどでも試験をし、同様の傾向が見えてきた。現在も継続して栽培試験をしてミズアブ肥料の効果を調べている。フラスの肥料成分はエサや飼育条件で調整できるため、農家独自の肥料の開発も夢ではない。


糞を商品化した


 ミズアブ活用の最大の障壁は「なんとなく気持ち悪い」点である。そこでヤマダイミズアブ環境教育(YEE、Yamadaimizuabu Environmental Education)を立ち上げ、資源化過程を遊んで楽しむゲームを作り、「知らないから怖い」を「知って楽しい」へ転換している。昨年は国内外の児童から社会人まで約100人が参加し、今年はさらに規模を拡大する予定だ。


 今年から山形大学農学部の生協でフラス100%の肥料「はえっぺ」を195㍉㍑、330円(税込み)で試験販売している。庄内発ミニモデルが、全国の残渣・肥料・教育の課題解決に寄与することを願う。


山形大学農学部 佐藤 智

(記事提供「現代農業」農文協)


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