農地の番人だけでなく農地を動かす人に-重責を担う農業委員会(前編)-安藤光義氏
農地関連法改正5年後見直しで課題に直面
農業委員会は、法に基づいて市町村に設置が義務付けられている行政委員会である。農業者の代表である農業委員と農地利用最適化推進委員で構成され、農業委員は市町村長が議会の同意を得た上での任命、推進委員は農業
農地関連法改正5年後見直しで課題に直面
農業委員会は、法に基づいて市町村に設置が義務付けられている行政委員会である。農業者の代表である農業委員と農地利用最適化推進委員で構成され、農業委員は市町村長が議会の同意を得た上での任命、推進委員は農業委員会の委嘱により、選任される。
その最大の任務は、農業委員会の専属的権限に属する所掌事務である。具体的には、農地の権利移動についての許認可や農地転用の業務を中心とした農地行政の執行、農地に関する税制、農業者年金などに係る業務である。
また、農地中間管理機構の設立に伴い「農地等の利用の最適化」(①担い手への農地利用の集積・集約化、②遊休農地の発生防止・解消、③新規参入の促進)の推進が重要な業務となった。「農地の番人」としてだけではなく、「農地を動かす人」としての重責を担っているのである。そして、2025年3月末までに市町村に義務付けられた地域計画の策定に対して、農業委員会は目標地図を提出するかたちで協力、貢献してきた。
農委会が直面する課題
現在、直面しているのは22年の農地関連法改正から5年後の見直しである。私見ではあるが、⑴策定が法定化された地域計画のブラッシュアップにおける農業委員会の役割や権限をどのように設定するか⑵⑴の推進にあたって農業委員と推進委員の併存配置状況をどうするか⑶農地中間管理機構のあり方(市町村の農用地利用集積計画が機構の農用地利用集積等促進計画に統合されたことに伴う問題への対応、特に機構と市町村・農業委員会との役割分担の整理)⑷農地の取得に係る下限面積要件の廃止に伴って発生する問題への対応――の4点だと考える。
事務局体制強化が不可欠
順序は逆になるが、⑷は耕作者主義という農地法の根幹に関わる問題をはらんでいる。所有者不明農地、不在村地主の増加という状況のもとで、下限面積要件の廃止によって零細な農地所有者が増加すると、農地利用調整に関する問題を一層複雑にしてしまうことが懸念される。
さらに、ここに営農型太陽光発電や外国人による農地の権利取得への対応という新たな事態が加わってきている。
農業委員会は「農地の番人」として難しい判断を迫られるとともに、農地の権利関係の確定という厄介な業務を請け負うことになる。これに対応するには、必要に応じた法制度改正だけでなく、農業委員会の事務局体制の強化(人員増加と能力向上のための研修)が不可欠である。
機構の問題が農委会にも影響
次の⑶は直接的には農地中間管理機構の問題ではあるが、それが市町村や農業委員会にも影響する可能性がある。
22年の農地関連法改正によって農用地利用集積計画が農用地利用集積等促進計画に統合された結果、業務処理量が一気に増加し、機構は厳しい状況に追い込まれている。農地中間管理機構というよりも農地中間管理事務処理機構と呼ぶべき状態にある。
市町村と業務委託契約を締結していればまだしもだが、それでも契約更新は円滑に進まず、農地法3条での賃貸借に移行することもなく、ヤミ小作に潜るケースが増えているように思われる。
例えば、使用貸借の場合、賃料(地代)の授受はないので、耕作者、地権者双方にメリットはなく、書類の作成という負担が残るだけであり、これでは農地中間管理機構法のザル法化が進むのはやむを得ない。農地法のザル法化を防ぐため、そのバイパス法として農用地利用増進法が制定されたが、機構法のザル法化を防ぐために新たなバイパス法を制定しなければならなくなっているのかもしれない。さすがに朝令暮改とはいかないだろうが、水が低きに流れるのは自然の道理で、それを押しとどめることはできない。過ちては改むるに憚ること勿れ。
このような見直しが行われるかは分からないが、機構が機能不全に陥れば、それに対する支援が市町村や農業委員会に求められることになる。
だが、予算が十分に手当てされなければ協力は得られないのは当然のことである。また、市町村への業務委託が進めば、こうした事務処理機構を都道府県段階に置くことの意味が問われることになる。農地行政執行体制の冗長性は、確実に財務省に目をつけられる(私だったら目をつけるだろう)。その結果、再び市町村段階での推進体制に戻るかもしれない。
<筆者プロフィール>
1994年東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。博士(農学)。2015年から同大学大学院農学生命科学研究科教授。










