中山間地の農地を守り生かす 農委会中心に新規作物の栽培に挑戦 長野・麻績村







長野県中央部の中山間地に位置する、人口2300人余りの小さな村「麻績村」。農業委員会(塚原茂樹会長)を中心とした新規作物の試験栽培や、OMIMO(同) による市野川棚田の維持管理など、今ある農地を守り生かす取り組みが活発だ。
長野県中央部の中山間地に位置する、人口2300人余りの小さな村「麻績村」。農業委員会(塚原茂樹会長)を中心とした新規作物の試験栽培や、OMIMO(同) による市野川棚田の維持管理など、今ある農地を守り生かす取り組みが活発だ。
村内の農地面積は約300㌶で、そのうち約190㌶を70歳以上の農業者が耕作している。山間部を中心に遊休農地も増え続けており、今耕作されている農地をいかに遊休化させず次世代につなぐかが課題だ。そんな麻績村に2025年、二つの提案が舞い込んだ。さつまいもと、子実トウモロコシの栽培だ。
OMIのIMOを軌道に
さつまいも栽培は、県の農業技術課からの提案だった。さつまいもスイーツ専門店の「らぽっぽファーム」などを運営する白ハト食品工業㈱(大阪府守口市)が、さつまいもの調達量を増やそうと新規契約農家を探しており、県に相談が来ていた。
「麻績をローマ字表記し逆さに読むとIMO(芋)になる」と中学時代に気付き、芋で地域活性化できないかという思いを温めてきた村振興課農政担当の塚原弘紀さん(40)は、渡りに船と塚原会長(71)へ試験栽培を提案した。リンゴと米の生産が盛んな同村。リスク分散のためにも、収入源となる作物が他に必要ではないか――。そう考えていた塚原会長は「売り先も決まっているし、どの程度収量を上げればどの程度の売り上げになるか、試しにやってみよう」と他の委員に声をかけた。
ちょうど離農するタイミングだった農家の農地など約20㌃で、塚原会長を含む委員3人が紅はるかとゆきこまちを栽培。定植や収穫作業に、農業委員有志や地域おこし協力隊、地域の子どもたちも巻き込み、約1㌧を収穫した。
収量は目標の4分の1にとどまったが、塚原会長の表情は明るい。「活動を見て興味を持ってくれた人がいるので、今年は栽培面積を50㌃以上に増やせそう。目標収量は10㌧」と意気込む。
今後の栽培には、遊休化のおそれがある農地を積極的に活用していく予定だ。軌道に乗れば、定植機や掘取機の導入も見据え、生産組合の設立も視野に入れている。
子実トウモロコシとさつまいもの好循環ねらう
子実トウモロコシの栽培は、松本地域振興局から話があった。長野県箕輪町でタコスやブリトーを提供する飲食店が、生地に使うトウモロコシ粉の元となる子実トウモロコシを栽培してくれる農家を探していた。
昨年は塚原会長と2人の農業委員が、約5㌃で栽培に挑戦。シカによる食害で収穫できない圃場があるなどアクシデントはあったが、栽培したトウモロコシ粉を使ったタコスが村のイベントで販売され、好評だった。
国内で手に入るトウモロコシ粉は外国産が多いため、収量を上げ国産トウモロコシ粉として流通させられれば、農家の大きな収入源と成り得る。また、残渣をさつまいも栽培時の土壌改良に利用し、作物間の好循環を生み出せないかとも考えている。
スマート農業や加工品開発で棚田を守る
村内の山間部に広がる市野川棚田では、棚田を次世代につなごうと、OMIMOがさまざまな活動を展開している。
OMIMOは、東日本大震災で被災した福島県の子どもたちのサマーキャンプや、地元園児の農業体験の受け入れをきっかけに、村内在住者4人で任意団体として発足。25年に法人化し、代表社員を村で唯一の農地利用最適化推進委員である久保田芳永さん(65)が務めている。
OMIMOでは、少人数で中山間地の農業に挑むには省力化が必須と、スマート農業に積極的に取り組んできた。
最も危険で作業に労力も時間も要する草刈りは、スパイダーモアとラジコン式草刈機を併用することで所要時間が半日以上短縮された。
松本市の会社と提携したドローンによる播種作業や、田に設置した自動給水機で水管理を自動化するなど、さまざまな工程で省力化を進める。こうした技術を取り入れながら、棚田を中心に6㌶の遊休農地を解消。草刈りで維持管理を行ったり、社で借り受けた農地でもち麦やコシヒカリ、古代小麦、酒米などを栽培する。もち麦と古代小麦は、栽培期間中農薬・化学肥料不使用で育て、村内の直売所で販売するほか、小中学校の給食に提供している。
6次産業化にも積極的で、加工品を複数考案。中でも自社の製造所で作るもち麦シリアル「おみポン・もち麦編」は、日本食糧新聞社が主催する第10回介護食品・スマイルケア食コンクールで金賞を受賞した。その後、新潟フードメッセに出店したところ、2社と取引が成立し、販売先が広がりつつある。
全国展開も見据え、商品ブランドを「棚田の恵み」に統一した。
半農半X希望者の移住ねらう
OMIMO発足のきっかけにもなった農業体験には、毎年松本市の私立認定子ども園や村の保育園から園児が訪れる。子どもたちが泥まみれになり田植えや稲刈り、虫取りを楽しむ姿が見られ、棚田が賑わう。
今後は、他に本業を持ちながら農業を行う、半農半X希望者に向け、より本格的な農業体験も企画し、最終的に移住につながるような形を作りたいという構想もある。
久保田さんは「中山間の農地は一筆一筆の面積が狭小。だが裏を返せば自分1人でも手が行き届く農業が実現できるということ」と話す。この規模感が、半農半Xのような農業の形を志向する人々のニーズに合うのではないかと考えている。








