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父の夢実現した酪農経営 京都・京丹波町 ミルクファームすぎやま

2026年04月03日
     
杉山裕亮さんと妹の牧さん
ゆったりした環境の牛舎
きめ細やかな繊維が特徴の京丹波のモッツァレラチーズ(上)とさけるチーズ
生乳と食塩のみでつくる人気のモッツァレラチーズ
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 「牛、人、町の幸せが詰まった酪農経営を進めていきたい」。こう話すのは、京都府京丹波町にある㈱ミルクファームすぎやまの杉山裕亮(ゆうすけ)代表取締役(45)。同社は創業家のきょうだいが発酵粗飼料(WCS用稲)の生産、乳牛の飼養・搾乳、乳製品

 「牛、人、町の幸せが詰まった酪農経営を進めていきたい」。こう話すのは、京都府京丹波町にある㈱ミルクファームすぎやまの杉山裕亮(ゆうすけ)代表取締役(45)。同社は創業家のきょうだいが発酵粗飼料(WCS用稲)の生産、乳牛の飼養・搾乳、乳製品製造・販売などを一貫して行う。円安などで影響が大きい輸入飼料への依存を減らしてコストを低減し、排せつ物は堆肥化して耕種農家に還元、地域内で資源循環する。

 

 京都府農牧学校のあった京丹波町は、日本3大農業教育発祥の地として明治時代から酪農が盛んに行われてきた。1958年ごろ戦後開拓で入植した裕亮さんの祖父が、国の制度を利用して乳牛を導入したのが同社の酪農の始まりだという。

 2代目だった父の明さんは「酪農を後継者が育つ憧れの職業に」との夢を抱きながら、経営規模を拡大。4人きょうだいの長男・裕亮さんは北海道の運送会社に勤めていたが、2006年に24歳で帰郷し就農。経営参画して14年に法人化、18年に明さんの他界で遺志を継ぎ、経営継承した。

 同社では、乳質が安定するように個体ごとに管理を徹底。食べた飼料の量、搾った乳量などをデータ化して分析、状態を把握し、適正な乳質管理と体調管理に努めている。牛舎は、可能頭数の65%程度とゆったりした飼養環境で、フリーストールで個体管理を実践。自由に歩き回れるフリーバーンで極力ストレスを与えないように気を配っている。

 搾乳は従来からのミルキングパーラー(パラレルパーラー)と、24時間稼働する自動搾乳システム(搾乳ロボット)の2方式を使い分ける。

 排せつ物の堆肥化は、裕亮さんら酪農家で構成する農事組合法人が行っており、その完熟堆肥は黒大豆をつくる耕種農家に供給する。

 同社では飼料用稲を栽培して自らWCSとして活用、耕畜連携を進めている。粗飼料の乾草は、コンテナ買いで低コスト。濃厚飼料や未利用資源のビール粕(かす)、醤油(しょうゆ)粕、酒粕を配合して与える。

 後継牛を育てるため、牧場で生まれた雌牛は最初6カ月間飼育した後、JAを通して北海道の公共牧場に預託する。そこで人工授精を行い妊娠牛にして、分娩予定の2カ月前に戻す。裕亮さんは「飼養管理にかかるコストや労力の負担が減り、搾乳に集中できる。5カ月間放牧されるため、運動量が増え足腰が鍛えられて生産寿命も長くなる」と利点を強調する。


 取締役でチーズ職人の長女・杉山牧(まき)さん(43)は搾りたての生乳を使い、日本の食卓に合うチーズをつくる。地元高校の食品科学科で乳製品加工などを専攻、「微生物がつくるチーズの奥深さに魅せられた」という。卒業後12年間、北海道のチーズ工房などでナチュラルチーズやアイスクリームの製造に携わり、同町にUターンした。

 倉庫を改造してチーズ工房を開設した13年、チーズづくりと販売が始まった。ポンプの使用や過度の攪拌(かくはん)による泡立ちは酸化につながるため、搾った生乳は乳缶で運ぶ。1日に使う生乳は100㍑。毎朝、200個のチーズを包装から出荷まで1人で担う。

 チーズの製造には、全てロボット搾乳の生乳を使う。生乳と食塩のみのフレッシュタイプ(熟成させない)のモッツァレラは、生乳本来のうまみを味わうことができる。研修で訪れた本場・南イタリアのナポリで食べた水牛の乳で作ったモッツァレラとの出合いがきっかけだった。消費拡大に貢献する「京丹波のモッツァレラ」、醤油などで味付けした「京丹波のさけるチーズ」は、リピーターが多い。道の駅で販売するほか、京阪神や東京の小売店、イタリアンレストランなどに卸し、ふるさと納税の返礼品として活用される。

 牧さんは「酪農があるからこそできるチーズづくり。京都産牛乳の素晴らしさをアピールし続けたい」と目を輝かす。


【経営概要】経産牛125頭、未経産牛(預託中の育成牛含む)60頭。生乳出荷量1400㌧(24年度)。WCS用稲15㌶。労働力6人。


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