多角的で革新的な経営で地域リード 徳島・小松島市 樫山農園









「樫山農業で世界を幸せにする」――。これは徳島県小松島市の ㈲樫山農園の経営理念だ。社員が仕事に誇りを持ち、耕作放棄地の受け皿となって地域と共生、農業を守っている。代表取締役社長の樫山直樹さん(47)は高糖度のフルーツトマトと水稲、コマツ
「樫山農業で世界を幸せにする」――。これは徳島県小松島市の ㈲樫山農園の経営理念だ。社員が仕事に誇りを持ち、耕作放棄地の受け皿となって地域と共生、農業を守っている。代表取締役社長の樫山直樹さん(47)は高糖度のフルーツトマトと水稲、コマツナと多角的に事業を展開し、地域農業をけん引。科学的根拠に基づいた先端の栽培技術と革新的な経営戦略を融合させ攻めの経営を進める。
科学的裏付けで論理的に生産
樫山さんは県内の阿南工業高等専門学校を卒業後、21歳の時に2年間、外務省主催の派米農業研修事業に参加。アメリカの大規模な農業法人で働き、人材活用や財務管理を学んだ。2002年の帰国と同時に家業の農業を継ぎ、父親と法人化、18年に代表となった。多品目を栽培することで労働力の分散と集中、リスク分散で通年雇用を実現している。
看板の高糖度フルーツトマトのブランド「珊瑚樹」は24年前に誕生し、他の商品と差別化するため販売と育成にはこだわって年間約200㌧生産する。
販売面では、糖度10以上で色と形が美しいものは「珊瑚樹S特選」、糖度8~10のものを「珊瑚樹特選」など格付け。
育成方法は、ビールの製造工程で出る麦芽の殻皮を乾燥、圧縮成形して炭化したモルトセラミックスという特殊培地を使う。
フェンロー型ガラス温室で多段採りの循環式養液栽培を実践し、10㌃当たり収量は約10㌧。統合環境制御システムと併せて日射量、温度、湿度、二酸化炭素(CO2)濃度、水分、養液内の成分調製に至るまで自動制御盤で行う。1千項目に及ぶ詳細なデータを分析・活用しており、最適な生育環境を確立して科学的な裏付けのもと、論理的に栽培する。
建設した選果場は、コンベアラインによる非破壊糖度センサーとカメラセンサーで選別する。糖度は規格を三つ、等級を5ランクに分け、基準を満たしたものだけを出荷する。極限まで品質のブレを無くす取り組みは多角的な販売チャネルを生み、卸業者や自社オンラインショップと販路を広げる。
地区を一つと見て効率的に営農
同社の水田は、県東部4市にわたって圃場が点在、合計110㌶でコシヒカリを栽培する。自社ブランド「泣く子もだまる米」は、ユニークな名前のとおりそのおいしさに納得する自信作だ。
安定した販路を確立するため、14年に水稲農家5軒で米の集荷販売会社を設立。18年にはJAの出資を受けて水稲農家4軒とライスセンターを敷地内に建設した。乾燥、調製、保管まで徹底した品質管理を行う。
生産基盤は、県農地中間管理機構と連携し「田んぼの駆け込み寺」として離農農家の農地などを1100筆預かり、大規模稲作を展開する。樫山さんは「耕作放棄地を引き受け、地区を一つの農場と見て効率的な農業を進める」と話す。
水田の管理には、営農支援アプリ「アグリノート」を取り入れており、圃場の位置や作業履歴がスマートフォンで管理され、正確で省力化された栽培を進めている。
生産方法にもこだわる。トマトの収穫が終わった残さを水田にすき込んで活用している。薬剤の使用量を抑えるため、温湯種子消毒を導入して環境への配慮も忘れない。
高温障害による収量減少を補う手段として、再生二期作への切り替えを進める。収穫後の切り株から伸びるひこばえ(二番穂)を栽培、再度米を収穫する方法に手応えを感じる。二期作目は育苗や移植が不要とあってコスト削減が実現でき、増収が見込める。
昨年には、5・5㌶分を多収米品種「にじのきらめき」の栽培に取り組んだ。施肥と防除で二期作目は10㌃当たりの収量が約150㌔を確保、一期と二期を合わせて10㌃当たり600㌔だった。手ごたえを感じたことから、今後は作付面積を広げていく予定だ。
コマツナ生産では、土壌分析・施肥設計を自前で行い、栽培期間中に化学肥料や化学農薬を使わない。近隣の菌床シイタケ協同組合と連携してコマツナハウスに廃菌床を堆肥として使い、循環型農業を実践する。「硝酸イオン濃度が低く、えぐみの少ないコマツナができる。生で食べてもおいしい」と樫山さんは話す。
目標100億円は地域の希望
同社は組織化の強化にも力を入れてきた。
各部門それぞれに責任者を置き毎年、各責任者は経営指針を作成、外部に公表する仕組みを設けている。社員自らPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回せる環境を築き、収益を伸ばす。また、職場環境の改善と業務の効率化を目的に5S(整理、整とん、清掃、清潔、しつけ)委員会を設置。作付計画、出来高集計などをデータ化して販売戦略に活かす。
樫山さんは「未来志向を重んじ、目的を共有し地域と共生する経営体になることが大切。20年後の目標として掲げる売上高100億円は、職員や地域にとって大きな希望を与える」と説く。
【経営概況】 樫山農園=栽培面積約112.7㌶(トマト7棟2㌶、水稲110㌶、コマツナ70㌃)。役職員49人、平均年齢35.2歳。売上高5億円。








