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中東紛争がもたらす農業サプライチェーンへの影響(後編) 芝原三千代氏 

2026年05月22日
     
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【ホルムズ海峡混乱で世界的な肥料不足に】

 国連食糧農業機関(FAO)の屈冬玉(チュードンユイ)事務局長は「食料安全保障および肥料へのアクセス支援」について地中海・南欧諸国閣僚会議で、ホルムズ海峡における混乱に起因する世界的な肥料不足が、20

【ホルムズ海峡混乱で世界的な肥料不足に】

 国連食糧農業機関(FAO)の屈冬玉(チュードンユイ)事務局長は「食料安全保障および肥料へのアクセス支援」について地中海・南欧諸国閣僚会議で、ホルムズ海峡における混乱に起因する世界的な肥料不足が、2026年後半から27年にかけての収穫量の減少および食料供給の逼迫(ひっぱく)を招くことになると強調した。

 農業は、延期することのできない農事暦に(のっと)って営まれている。「作物の生育サイクルにおける特定の時期に肥料の施用を行わなければ、その後に何が起ころうとも、収穫量は減少してしまう」とチュー氏は語った。

 FAO主席経済学者のマキシモ・トレロ・クーレン氏は、湾岸諸国からの供給ショック+収穫量を確保する肥料依存度という二重の脆弱(ぜいじゃく)性を鑑みると、アジア諸国を中心に深刻な問題を抱える国々が明確に浮かび上がってくると言う。「肥料の過半数とエネルギーのほとんどを湾岸諸国に頼るバングラデシュ、35%という高い湾岸諸国への依存度を抱えるインドやタイなど世界的な主要生産国などは非常にリスクが高い。インドのメディアは、すでに国内の肥料工場が少なくともひとつ閉鎖され、他の工場もガス不足と高騰する原材料のために生産を削減していると報じている」

 現在見られる影響は、単に足元の肥料原料価格の変動にとどまるものではなく、次期の収穫へと波及していく。その結果が、今年後半から来年にかけて食料供給が逼迫することにつながっていく。


【より遠方からの輸入遅延や不足の発生も】

 距離的には遥か遠い国々で起こってる紛争であるが、「結局のところ、農業における最大の連鎖的金融リスクは、集約度の高い農業慣行と、湾岸諸国への依存度が極めて高い上に脆弱なサプライチェーンを併せ持つアジア経済圏に潜んでいる」とマキシモ・トレロ氏は述べる。「こうした国々は、北アフリカや欧州など、より遠方の供給元から肥料を輸入するために、大幅な割増料金の支払いを余儀なくされる可能性がある。肥料の供給遅延や不足は、今年後半にかけて、米、小麦、トウモロコシといった主要作物の収穫量減少を招く恐れがある。これらの作物は、食料消費の大半を占め、食料安全保障の中核を成しているため、人口密度の高いアジアの各地域にとって特に深刻なリスクとなる」

 いかなる国もこの危機から無縁ではいられない。アジア太平洋地域の外交専門誌『ザ・ディプロマット』は、日本は原油の90%以上を中東地域から輸入しており、その需要の80%以上をアラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアの2カ国のみで賄っている。事実上の海上封鎖状態により燃料価格が急騰し、その結果、食料や農産物の輸送費および生産コストが上昇している、と報じた。

 マキシモ・トレロ氏は、リスクを軽減し、レジリエンス(強靭(きょうじん)性)を構築するためには、世界各国の協調的な政策対応が差し迫った重要課題であるとする。「短期的には、代替的な貿易ルートの確保、市場の監視、輸入依存度の高い脆弱な国々への的を絞った支援、そして農家に対する財政支援が、サプライチェーンを安定させ、人々の生活を守る上で極めて重要となる。中期的な戦略においては、輸入調達先の多角化、地域間の連携、および不測の事態に備えた計画策定を優先すべきである」

 また、同氏は「一方、長期的な施策としては、国内農業の拡大、持続可能な肥料生産、再生可能エネルギーへの投資、そして根強い価格変動やバイオ燃料に起因する需要構造の変化に対応するための構造調整に重点を置く必要がある」。


【代替ルート確保など強靱性の維持に対応】

 インドのグローバル政策研究機関『オブザーバー・リサーチ財団』は、日本政府は現在、法的制約とのバランスを取りつつ、代替のエネルギー輸送ルートを確保し、サプライチェーンのレジリエンス(強靭性)を維持するという喫緊の課題への対応を進めている、と報じた。

 マキシモ・トレロ氏は続ける。「こうした多層的な取り組みを補完するものとして、緊張緩和とホルムズ海峡における航行の自由確保に向けた外交努力こそが、世界のエネルギーおよび食料市場を安定させるための、依然として最も効果的な手段であり続けている」

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