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人と野生鳥獣の共生を ―中山間地域の再興が必要―① 元鹿児島大学教授・宮部芳照氏

2026年05月01日

〇駆除するだけでは根本解決にならず


野生鳥獣が活発に活動する季節になった。人との共生について元鹿児島大教授の宮部芳照博士に解説してもらう。(全3回)

 近年、野生鳥獣による被害が拡大している。特に、昨夏からクマの出没が頻繁に報道されているが、ク

〇駆除するだけでは根本解決にならず


野生鳥獣が活発に活動する季節になった。人との共生について元鹿児島大教授の宮部芳照博士に解説してもらう。(全3回)

 近年、野生鳥獣による被害が拡大している。特に、昨夏からクマの出没が頻繁に報道されているが、クマ被害に象徴される野生鳥獣被害は人身被害のみならず、農作物に多大な被害を及ぼしていることに注目すべきだ。

 2024年度、全国の野生鳥獣による農作物被害額は188億円(前年度比24億円増)、被害面積は4.4万㌶(同4千㌶増)だ。主なものはシカ、イノシシ、クマで、鳥類ではカラス、ヒヨドリの被害額が大きい。他に森林被害面積4.3万㌶などで毎年増加する経済的損失は甚大である(農水省・林野庁)。最近は、特にクマ被害が全国的に注目されがちであるが、野生鳥獣被害全体ではシカ、イノシシ、鳥類の被害が深刻である。

 また、25年度のクマによる人身被害は全国で216件、被害者238人、死者13人で統計を取って以来最悪である(環境省速報値、26年3月末)。これら増大する人身被害や農作物被害は単に短期的、局所的問題ではなく、深刻な社会全体の問題として捉えるべきだ。

 そもそも、野生鳥獣被害は耕作放棄地や遊休農地などの拡大により、以前どこでも見られた「里山」と呼ばれる人と野生鳥獣との緩衝地帯の減少が深く関わっている。さらに、個体数の増加や異常気象によるエサ不足、農地の荒廃など複雑な要因が絡んでいるが、人と野生鳥獣の生活圏・生息圏が縮まったことは確かである。野生鳥獣が出没したから駆除するだけの対症療法では根本解決にならず、今後も被害が続くことは必至である。

 いかにして人と野生鳥獣が共存・共生できるか、人と()み分けできるか、行政リードで実効ある施策が強く望まれる。野生鳥獣との緩衝地帯になっていた、かつての豊かな「里山」を取り戻すことが今こそ必要だ。


〈プロフィル〉 宮部 芳照(みやべ よしてる) 1966年、北海道大学大学院農学研究科農業工学修了。元鹿児島大学農学部教授。農学博士。専門分野は農業機械学、農業システム工学、農作業学。

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