特定外来生物の生態と防除対策⑤ (一財)自然環境研究センター 橋本琢磨
ヌートリアは動物園の人気者のカピバラに似た、水辺に住む巨大なネズミだ。東日本ではなじみのない動物かもしれない。しかし西日本では、所によっては農家の最大の悩みの種となっている。
ヌートリアは南米原産で体重は5㌔を超える。ずんぐりした体でノソ
ヌートリアは動物園の人気者のカピバラに似た、水辺に住む巨大なネズミだ。東日本ではなじみのない動物かもしれない。しかし西日本では、所によっては農家の最大の悩みの種となっている。
ヌートリアは南米原産で体重は5㌔を超える。ずんぐりした体でノソノソ歩く姿は、とてもネズミの仲間には思えない。しかし、泳ぎは巧みで、河川や池沼、水田など、水辺を主な生活空間とし、岸辺に穴を掘り、巣を作る。草食性で、ヨシなどの水辺の草のほか、ハクサイ、ダイコン、ニンジン、サツマイモ、スイカ、水稲などの農作物も好んで食べる。水路沿いに移動するという性質から、被害はその近くに集中する傾向がある。そのため被害金額は大きくないが、被害を受けた農家のダメージは大きい。
それだけではない。ヌートリアが作る巣穴がきっかけとなり、水田の畔や堤防が破壊されることがある。また、ヌートリアが生息する水辺では植物が消失し、そこをすみかとしている魚や貝がいなくなる。ヌートリアは地域の生物多様性を破壊する侵略的外来生物でもあるのだ。
そもそもは毛皮を利用する目的で戦前に日本各地で養殖され、その後野生化した。多くの外来生物に共通することだが、人の都合で連れてこられて放逐されたのが事の始まりだ。現在では東海・近畿・中国地方に広く定着し、分布の東端は浜松市を越えた。関東地方に姿を現すのも遠い未来ではないかもしれない。
ヌートリアの捕獲は各地で行われている。特に浜松市では東日本への分布拡大を防ぐため、熱心な捕獲を実施している。しかし、現状では分布の拡大傾向が続いており、ヌートリアを制御できていない。
だが、希望はある。ヌートリアは世界各地で外来種として定着しているが、その中には国全体から根絶を成し遂げた事例がある。イギリスでは専門のわな猟師を雇用し、1989年に根絶を成し遂げた。日本もあきらめず、根絶をめざして防除を続けていきたい。









