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吸汁ゲリラ・カメムシの叩き方 神奈川・平塚市 小巻秀任

2026年06月12日
     
180㌢のトンネル支柱(両端を15㌢ほど刺す)に幅210㌢の防虫ネットを使用し、30㌢の垂らしをつけた
成長したカメムシは素早いので、軍手で葉の上からパッと押さえつけて割りばしでつかみ、500㍉㍑ペットボトルに入れて捕殺
2023年に初めて飛来した、体全体が茶色のチャバネアオカメムシ
羽化直後のカメムシは産まれた葉に群生しているので、葉ごと切り取り捕殺
普通のチャバネアオカメムシ
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 私は旬の野菜が好きである。特に冬の畑はダイコン、カブ、白菜など、代表的なアブラナ科のオンパレード。ところが近年、招かれざる客が増えている。その一つがカメムシだ。アブラナ科に飛来するカメムシの種類も数も増えており、野菜の守り方も変わった。当

 私は旬の野菜が好きである。特に冬の畑はダイコン、カブ、白菜など、代表的なアブラナ科のオンパレード。ところが近年、招かれざる客が増えている。その一つがカメムシだ。アブラナ科に飛来するカメムシの種類も数も増えており、野菜の守り方も変わった。当農園で行っている対策を紹介する。


生態を知る

[[チャバネアオカメムシ]]

 アブラナ科のカメムシといえばミナミアオカメムシ(緑色)とナガメ(黒とオレンジ色)。昔からよく見てきたものたちで、今まではこの2種のみに気を付けて栽培すればよかった。

 しかし近年、新たに野菜につくカメムシが登場した。チャバネアオカメムシである。以前からいるにはいたが、2020年ごろから数が増えている。大型で、しかも大群で来ることもあり、芽が出たてのダイコンが大きな被害を受けたこともある。これはまずいとよく調べてみると、独特の習性があるようである。

▼じつはアブラナ科も好き

 本来ならスギの果実や花粉を好んで食べるはずの彼らだが、何かの理由で増えすぎると、アブラナ科にも飛来することがあるようだ。かなり食性が広いことがよくわかる。

 この広食性はカメムシ類ではよくある特徴の一つ。アブラナ科で繁殖するナガメも、キク科やセリ科の野菜や雑草、サルスベリなどの花{{か}}蕾{{らい}}にも飛来することがある。カメムシが種の生存のため、持ち前の機動力を駆使して、環境に合わせて多様な養分を摂取できるように進化したからと考えられる。

▼食事の時だけ飛んで来る

 チャバネの発生時期は、私の畑では4~6月と8~10月。真夏を除いた春と秋に多い。もっとも多いのは8月中旬~9月終わりにかけて。秋冬ダイコンのタネ播きや、白菜、キャベツ、ブロッコリーなどの苗の植え付けを行う大切な時期だ。

 24年の主な被害は9月中旬。秋冬ダイコンの本葉が出たころに大量に飛来し生長点を吸汁されたことで、1千株のうち約3割が枯れた。近隣でも、芽が出たてのダイコンがいきなり消えるという事態に困惑しておられた方もいた。

 特徴的な習性は「食事の時のみ畑に飛来する」ことである。普段は繁殖場所であるスギやヒノキの木(ホテル)に集団でいて交尾などをしているが、日中は多くの個体がエサを求めて畑(レストラン)に飛来する。畑の近くにスギやヒノキの木があれば、飛来する可能性があるので注意が必要である。

[[ミナミアオカメムシとナガメ]]

 これらは共に4~10月に発生する。

 ミナミアオカメムシは、春のアブラナ科のナバナやブロッコリーの花蕾が大好物。例年、飛来する数は少なく被害は小さいが、蕾がある新芽付近を狙われて野菜が弱ることがあるので侮れない。とくに7~8月の梅雨から真夏にもっとも多く発生する。

 繁殖場所は畑の周辺のイネ科やタデ科の雑草。いつもはそこにいて、チャバネと同じく食事の時のみ畑に飛来する。まれに食事中に出会った雌雄が交尾することもある。

 いっぽうナガメは、期間中は昼夜問わずアブラナ科の野菜の上にいる。春に咲くナバナの葉や茎などをまんべんなく食害する。大量発生すると野菜を衰弱させて収量を低下させることがある。

 最大の特徴は、アブラナ科の野菜に寄生すると「野菜の上で繁殖を始める」点だ。植物の上から移動することがないことを踏まえた対策が必要になる。


二刀流で対策

 当農園では①食事の時にのみ飛来するタイプは防虫ネット、②野菜の上で繁殖するタイプは捕殺で対応している。

①食事で飛来するタイプ――ネットを垂らして張る

 チャバネアオカメムシ、ミナミアオカメムシが該当する。ポイントは防虫ネットの張り方。日中以外、木に帰っている間に張るとよい。また、カメムシはネットの上を歩くため、普通に張っただけでは風などで隙間ができて入られてしまう。そこで有効なのが「垂らし」だ。使用するトンネル支柱(ダンポール)よりも広めの防虫ネットを使い、トンネルの前後左右の垂らし(余る部分)を長めにとるやり方である。垂らしは左右に25~30㌢はほしい(写真下)。

 これは「カメムシをあきらめさせる大作戦」である。カメムシは重い体を持ち、かつ飛行するので、エネルギー消費の激しい燃費の悪い生き物だ。速やかにエネルギーを補給する必要があるが、垂らしがあると容易には入れない。結果、時間稼ぎとなり、あきらめて去っていく。

 カメムシを観察するとわかるが、野菜にネットをかけると、1日目は何とか入ろうとがんばるが、入れないとわかると、翌日以降は学習するのかその場所をスルーして他の場所へ行く個体が多くなる。あきらめは早いようである。

 なおこの垂らしはモンシロチョウやカブラハバチ、コナガやヨトウムシなどの虫にも有効なので、ぜひ試してみてほしい。

②野菜で繁殖するタイプ――早期発見して捕殺する

 ナガメが該当する。アブラナ科の野菜の上で繁殖するので、一度定着してしまうと、防虫ネットをかけてもその中で増えることがある。防虫ネットをかけて新たな個体の飛来を防ぎつつ、侵入してしまった場合は「早期発見→捕殺」による対処が有効だ。

 早期発見するには、葉や新芽付近に注目するとよい。ナガメはアブラナ科の野菜に定着すると、葉の裏に30個前後の卵を産む。羽化した幼虫は、まずは産まれた葉の上での吸汁を始める。その段階で発見できれば、葉ごと切り取って捕殺して一網打尽にできる。

 ある程度成長すると、他の葉や新芽に移動するようになり、とても素早くなるので捕殺が難しくなる。当農園では葉の上から押さえて割りばしで捕まえてペットボトルに入れている。

[[茶色のチャバネが襲来]] 私が畑でカメムシを観察する中で、一つ驚いたことがある。23年のこと、全体的に茶色が強く、比較的細身の個体を確認した(写真右上)。見たことがない色と形だったので農業試験場で確認してもらったところ、他の地域、または他県からゲリラ的に飛来してきたチャバネアオカメムシの可能性があるという。

 普段は緑色が強いチャバネが、繁殖しすぎて飛行能力の高い群生色(相変異で茶色になった)となり、エサを求めてかなり長い距離を移動してきた可能性が出てきた。これはまれな例とのことであったが、今後、気候変動によりまた起こらないとも限らない。備えあれば憂いなし。対策は常に必要であると考えさせられた。

(記事提供 「現代農業」 農文協)

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