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法人設立と6次化で里山の未来守る 富山・魚津市 NOROSHI FARM

2026年05月29日
     
NOROSHI FARMのスタッフ。後列右から3人目が良太さん、4人目が史絵さん、5人目が髙橋農業委員
松倉地区に広がる棚田
米粉おやき
カウンターに並ぶおにぎり
キッチンカーで顧客を呼び込む
キッチンを担う史絵さんと柿澤さん(左)
今年3月に都内で開かれた農山漁村女性活躍表彰の受賞式(写真の一部はNOROSHI FARM提供)
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 富山県魚津市松倉地区にある㈱NOROSHI(のろし) FARM(ふぁーむ)は、米専業経営だ。稗苗良太さん(39)、史絵さん(43)夫妻が棚田が広がる里山で経営している。耕作放棄地を田に戻し、農村の暮らしや食文化を次代につなぐ。2人は担い手

 富山県魚津市松倉地区にある㈱NOROSHI(のろし) FARM(ふぁーむ)は、米専業経営だ。稗苗良太さん(39)、史絵さん(43)夫妻が棚田が広がる里山で経営している。耕作放棄地を田に戻し、農村の暮らしや食文化を次代につなぐ。2人は担い手となって農地を集め、農業法人を立ち上げた。付加価値を高めるため地元食材を使っておやきやおにぎりを販売、里山体験を通して人を呼び込み、地域をピーアールする。


役割分担し二人三脚で成長

 兼業農家に生まれた良太さんは東京国際大に在学時、ゼミの農村調査で東南アジア・ラオスを訪れた。自給自足の暮らしが続けられ、家族が助け合いながら豊かに生活していた情景は、幼少期の思い出と重なり就農を考えた。県内外の農家で2年間研修を積んでUターン。2012年、28歳で実家が耕作する農地約7㌶を引き継ぎ独立就農した。コシヒカリなど7品種を減農薬と無農薬の自然栽培で作る。傾斜のある変形田ならではの苦労は多いが、その分手間を惜しまずおいしい米を提供するのがモットーだ。

 史絵さんは、労務管理を担当するほか、加工・直売部門の責任者として直売所に設置する飲食店「のろしファームキッチン」を支える。デザイン系の短大を卒業後、ホームヘルパー、看護師、保健師の資格をとり企業の産業保健師として働いていた。良太さんと知り合い、米作りに対する考えに共感し、15年に結婚。それを機に前職を辞め、新規就農した。19年には夫婦間で家族経営協定を結び、良太さんと共同申請で認定農業者になった。

 良太さんと史絵さんは米袋を抱え、県内外のマルシェに出店を続け、顧客をつかんだ。直接契約する消費者は250人。毎月、近況を(つづ)ったレポートを同封する。お米は直売、自社ECサイトで販売。加工・直売の売り上げは就農時から20倍に増え、売上高に占める割合も6・5%から33・1%と成長中だ。


加工品で中山間地の魅力発信

 史絵さんは18年、生産者と消費者を結ぶことを意識し、6次産業化を進めることを考えた。

 自身の身内の大工に加工室を建ててもらい、過去の経験で身に付けたデザイン力や医療従事経験を活かして加工品を開発。料理研究家と協力して自社の米粉と天然酵母、地場野菜をたっぷり使った4種のおやきを作り出した。「ミスターおやき」としてブランド化し、キッチンカーでイベント会場、農産物直売所の駐車スペースに出向いて、売り上げを伸ばした。

 常時10種類のおにぎりをテイクアウトで販売する直売店も開店。商品の名は「おにぎーり」。富富富(ふふふ)やてんたかく、ミルキークイーンなどを使う。具材に合わせて米の種類や割合を変え注文を受けてから握り、米本来の味が楽しめると評判だ。

 キッチンの社員・柿澤祐花さん(25)は、新規就農者だ。史絵さんは同社で雇用し、製造や接客のスキルアップを学ばせるなど、右腕となる人材の育成に努めている。

 昨年は人を呼び込むきっかけづくりに、棚田イベントを企画。田植え、草刈り、ホタル観賞、稲刈り、餅つき、しめ縄づくりなど農家の1年を体験できる内容だ。そのほか、県内の中学2年生の職場体験学習「14歳の挑戦」も受け入れる。5日間、校外での学習で参加した中学生は農村の実情に触れ、生産への思いを強くした。


農委に就任、先輩と農地集積

 史絵さんは、20年に市やJA女性部の薦めもあり農業委員に就任。21年から地域の農地を集積する法人設立の構想が動き出したことから、地区全体の実情を熟知する先輩委員の髙橋順子さん(79)らと一緒に地域を歩いた。20軒以上の地権者を戸別訪問し、「10年先を考え、受け皿になる担い手が必要。里山の未来を託してほしい」と説得。稗苗さん夫妻が農地を引き継ぐことを決意したという。

 NOROSHI FARMは22年、地域に愛着を持つ3経営体が一つになり、農地を継承する形で生まれた。常時雇用9人、平均年齢は32・4歳と若い。稗苗さん夫妻の農地を含め、集まった農地は約28㌶で、300筆以上の棚田を日々耕作している。

 社名の由来は市に昔からある「戦国のろし祭り」から。なじみのある言葉を使うことで親しみを持ってもらうためだ。

 稗苗夫妻は「里山は多面的な役割を持つ国民共通の財産。米作りを通して人作りにつなげたい。小さな火種となり、中山間地の未来を開きたい」と力を込める。

 これらの活動が認められ、史絵さんは25年、女性活躍の優れた活動を表彰する「農山漁村女性活躍表彰」の女性新規事業・チャレンジ部門で、農山漁村男女共同参画推進協議会長賞を受賞した。

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