ファミリーで未来開く畜産 鹿児島・霧島市 窪田畜産

2026年08月07日
     
家族らが集合した(写真の一部は窪田畜産提供)
窪田さん夫妻
移動式ミルクカートで授乳する
肥育牛
窪田牛の精肉
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 「人と牛をハッピーにする畜産は、未来を切り開く希望の場所」――。鹿児島県霧島市国分で黒毛和牛の繁殖・肥育一貫経営をする㈱窪田畜産(窪田(さとし)代表取締役社長、43)は先端技術を導入して効率化。繁殖雌牛の放牧管理で安定した子牛生産も実現

 「人と牛をハッピーにする畜産は、未来を切り開く希望の場所」――。鹿児島県霧島市国分で黒毛和牛の繁殖・肥育一貫経営をする㈱窪田畜産(窪田(さとし)代表取締役社長、43)は先端技術を導入して効率化。繁殖雌牛の放牧管理で安定した子牛生産も実現する。取締役で妻の加奈子さん(44)は、食肉加工・販売の6次産業化に取り組む。


経営に社員目線活かし成長


 「黒毛和牛の自家産ブランド・窪田牛を全国に届けたい」と話すのは和牛繁殖農家3代目の敏さんだ。敏さんは、県立農業大学校酪農科を卒業し、(公社)国際農業者交流協会の海外研修プログラムで2年間、アメリカに農家留学。帰国後、2005年に就農した。


 一方、幼い頃から動物が好きだった加奈子さんも同協会のプログラムでデンマークに1年間の農家留学をした後、同県鹿屋市で酪農ヘルパーに就任。経験を積んだ。その際、同級生だった敏さんの仕事を手伝うことになり再会。結婚し、6人の子宝に恵まれた。


 同社の社員は、親せきなどファミリーが中心になって経営する。得意分野を活かした分業制で誰もが経営の一端を担う。牛舎も皆で建て、コストを3分の1に抑えた経験もある。社員間での情報共有はSNS(交流サイト)を使うなど社員の目線を経営に活かすことで省力化が進み、規模拡大が実現できたという。


スマート農業で効率化重視


 同社では17年、畜産物の安全性を確保するため「農場HACCP(危害要因分析必須管理点)認証」を取得し、飼養管理工程をマニュアル化した。衛生管理の徹底と外部認証による安全性が担保されたことで、消費者から信頼を得ている。


 消費者からの支持は、飼養頭数の拡大につながった。このため生産や繁殖の効率化へ、機械化・スマート農業化を進める。200馬力以上の大型トラクターや牧草を刈るフロントモアコンディショナーなどの先端機械の導入はもちろん、カメラ画像で監視しアプリで確認できる分娩予兆検知システム(モービー)、耳標型のイヤタグセンサーによる発情発見システム(ユーモーション)も取り入れてきた。病気や治療、人工授精も記録し、出荷を個体ごとに管理するシステム(ファームノート)も導入しており、加奈子さんは「ほぼ機械で済むので重労働という感覚はない。でも自分の目で確認することが大切」という。


 子牛の肥育でも効率化を重視する。子牛は生育に合わせ、区画に分けて管理。哺乳ロボットと移動式ミルクカート(ミルクモービル)を活用して授乳を自動化した。給与する乳量や回数が1頭ごとに設定できることから健康に育ち、社員の労力も軽減。子牛の事故率も2%弱に減ったという。また、繁殖雌牛の平均分娩間隔を13・7カ月に短縮したことで子牛の生産頭数を増やし、所得の向上につながったという。


 飼料は自社で生産し、自給率100%を実現して高止まりする飼料費を抑えた。地元の稲作農家が収穫した稲発酵粗飼料(WCS)や飼料用稲も活用し、自社から発生する牛糞堆肥を提供することで、循環型農業にも取り組んでいる。


 また、放牧期間を長めに取ることで、飼料費や社員の労働時間も減ったと話す。所有する草地・山林のうち約17㌶分を放牧地にして、22年から常時20頭の妊娠した繁殖雌牛を放牧する。期間は、妊娠鑑定後から分娩1カ月前まで。健康が保たれ、牛のストレスの軽減になるという。


 敏さんは「目の行き届く範囲で飼養管理するため、近い将来、牛舎を増設して繁殖牛800頭に広げたい」と意欲を燃やしている。


〝やるなら黒字〟6次化実現


 同社では可奈子さんが先頭に立って6次産業化に力を入れる。「窪田牛のお肉が直接食べたい」という顧客からの要望を受け、25年にJAの店舗を改装し念願の直営店をオープンさせた。「やるなら黒字」と敏さんと約束したという。食肉の委託加工から販売までを行っており、卸先を増やしネット販売で売り上げを伸ばす。精肉のほか、ハンバーグやウインナーソーセージ、ジャーキーなどが人気商品だ。


 商談会やマルシェに積極的に参加する加奈子さんは、姶良地域(霧島市、姶良市、湧水町)で黒毛和牛を飼養する女性畜産家グループ「(あい)LOVE(ラブ)和牛女子」の主要メンバー。女性目線で仲間づくりや経営力の向上、技術研修や情報交換をしながら鹿児島黒牛の魅力を発信・消費拡大に取り組む。また、農水省が全国で展開する「農業女子プロジェクト」の鹿児島県代表も務め、商品開発や販路拡大など多方面で精力的に活動する。


【経営概況】 繁殖牛458頭、肥育牛83頭、子牛360頭。「A4」ランク以上の格付率96.7%。フリーストール牛舎10棟。牧草地約29㌶。労働力は11人(窪田さん夫婦と父、母、弟、叔父、いとこ2人、雇用3人)。売上高約2億円(24年度)。25年度の全国優良畜産経営管理技術発表会((公財)中央畜産会主催)で最優秀賞の農水大臣賞に輝いた実績を持つ。

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