米のコスト指標 初公表から1カ月 押さえておきたいポイントと課題





米穀機構が4月7日に公表した米のコスト指標。生産者が押さえておきたいポイントや課題を整理する。
精米5㌔当たり2816円
コスト指標とは、売り手と買い手が価格交渉する際に参照する費用の参考値のこと。食料システム法に基づき、コスト指標作成団
米穀機構が4月7日に公表した米のコスト指標。生産者が押さえておきたいポイントや課題を整理する。
精米5㌔当たり2816円
コスト指標とは、売り手と買い手が価格交渉する際に参照する費用の参考値のこと。食料システム法に基づき、コスト指標作成団体として認定された米穀機構が他の指定品目(野菜・飲用牛乳、豆腐・納豆)に先駆け、初めて米の指標を取りまとめた。
生産段階の指標(4月時点)は図1のとおりで、玄米1㌔当たり税込み342.3円(対前年比3・4%増)。生産・集荷・卸売り・小売りの4段階の合計は506.9円(2.9%増)で、これを精米換算すると5㌔当たり2816円と算出した。
費用の内訳は、生産費統計の全算入生産費に係る全ての費目を対象としており、家族労働費は同統計と同年次の「毎月勤労統計」の時間当たり労働費単価を適用している。ただ、生産費統計の公表データは2年前のもの(2024年産)であるため、最新のコストになるよう農業物価指数などを使ってデータを補正している。
対象範囲は全国の産地で、米の種類や作型は区分していない。一方、収量などには条件を設けており▽食用目的の水稲を作付けし、玄米600㌔以上を販売する経営体▽代表性のある作付け規模(1㌶以上3㌶未満)――を対象に、その費用を使用している。
利潤・ブランド力も加味 指標の活用イメージ
実際の取引イメージは図2のとおりで、指標は合理的な根拠のある情報として取引に活用できる(省令)。ただし、指標で示された「5㌔2816円」など、その額に沿った取引を強制するものではない。米穀機構のコスト指標作成等委員会で議長を務めた日本大学の西川邦夫教授は4月7日の記者会見で「(取引が)この2816円に拘束されるということではない」と述べ、むしろ指標は前年とのコストの変動率が価格交渉で利用される面が大きいのではないか、との見方を示した。
作付け規模層が論点に
指標の作成方法をめぐり、同委員会では1㌶以上3㌶未満層の生産費を使用することの是非が論点になった。流通段階の委員は、流通量の7割が3㌶以上層によって占められており、全平均の生産費を用いるべきと主張。生産段階の委員と意見が対立した。最終的に1㌶以上3㌶未満層のみで100万㌧(全体の2割弱)を超える流通量があり、同層における生産は国民への安定的供給に不可欠として流通段階の委員の意見を退ける格好となった。西川教授は、どの規模層を取るのが適当なのかは、それぞれ認識があり、それぞれ一定の妥当性があるとし、委員会における今後の議論の中で「認識の齟齬を少しずつ埋めていければ」と述べた。
指標の改定は年1回、3月公表が原則。ただし、原油高がコストに与える影響などを踏まえ、同委員会が期中での改定を判断する可能性もある。
米価が指標下回る際機能するか
宇都宮大学助教 松平尚也
米の需給と価格が不安定な状況にある中、今回のコスト指標は一つの重要な基準になると思う。一部で「1㌶以上3㌶未満」に対する批判的な報道もあるが、これら中小規模層を含め、経営が持続できる指標が作成されたとして産地側からは高く評価されている。JAの中には概算金の設定においてコスト指標を参照するとの声も出ているようで、そうした意味でも農家にとって重要な指標になったと思う。
ただ、モデルとなったフランスのエガリム法は、生産コストを出発点とした価格交渉を制度として位置づけ、流通や小売りとの関係の中で価格に反映させていく点に特徴がある。一方、日本の食料システム法はコストを踏まえた協議を求める仕組みにとどまる。そのため、米価がコスト指標を下回る局面でどこまで機能するかが課題となる。出来秋以降は価格下落も見込まれる中、取引の在り方が問われている。








