重要性増す米の新市場開拓 北海道・芦別市芦別RICE

2026年09月04日
     
沼田さんが「自慢の仲間たち」と話す芦別市24戸の農家のみなさん
荷台に積まれた輸出用米
米輸出の契機となった香港フードエキスポ
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 「需要に応じた生産」を規定した改正食糧法の成立により、米の国内需要の減少を見据えた海外需要の取り込みが重要性を増している。天皇杯の受賞事例から輸出拡大のヒントを探る。


 芦別米・北海道米を世界へ――。10年ほど前から米の輸出に取り組む㈱芦別

 「需要に応じた生産」を規定した改正食糧法の成立により、米の国内需要の減少を見据えた海外需要の取り込みが重要性を増している。天皇杯の受賞事例から輸出拡大のヒントを探る。


 芦別米・北海道米を世界へ――。10年ほど前から米の輸出に取り組む㈱芦別RICE(北海道芦別市)。香港を皮切りにシンガポール、米国、欧州に販路を広げ、2025年産は24戸の仲間とともに1290㌧(2億900万円)を海外に送り届けた。26年産の申し込みも前年産を47%上回る1900㌧に達している。農家が直接、米輸出に取り組む例はまだ多くなく、その規模は全国でも最大級の一つに数えられる。


 そもそも若手農家3人で始めたこの取り組み。「きっかけは海外への憧れだった」――そう振り返るのは同社取締役会長の沼田哲男さん(61)。何となく抱いていた海外へのステータス感。「動機は不純です」と笑う。


 一方、沼田さんは地域の農地と人口の減少に危機感を感じていた。JAの合併で消えつつあった「芦別米」の名称を何とか残したい。そんな思いも抱いていた。これが沼田さんと仲間2人による110㌶の集落営農の立ち上げ(02年)、同社の設立(10年)へとつながり、輸出への挑戦がスタートラインに立つことになった。


 しかし、当時は米の輸出など誰も信じてくれなかった。周囲の反対に心が折れそうになることもあった。それでも諦めず「芦別から世界へ」という夢に向き合い続けた。


 構想から2年間は輸出に至らなかった。そんな中、ある先輩の助言でJETRO主催の香港フードエキスポに3年間出店することに。これを契機に香港の業者を紹介してもらい、3㌧の輸出にこぎつけることができた。長年描いてきた夢がついに動き出した。


 徒手空拳で始めた米輸出。次の課題はロット(供給量)の確保だった。まだ実績がない中での仲間集め。相手を説得するためにしたことは「ホラを吹いた」。沼田さん流の言い回しだが、そのホラは「うそ」や「でたらめ」にはならなかった。


 転機となったのは㈱クボタとの出会い。同社の玄米輸出と連携することで、海外への扉が大きく開いた。19年、同社は米の登録検査機関になり、農家の名前入りで出荷することが可能に。これが一人一人の品質に対する責任感や生産意欲の向上につながった。


 25年には国際基準のFSSC2200を取得し、欧州への精米輸出をめざして精米施設を整備。さらに同年、芦別市の農家24戸と道内の農家17戸による「芦別RICE北海道米輸出拡大推進協議会」を設立し、戦略的輸出基地が整った。


 24、25年産の主食用米の価格高騰は逆風とはならなかった。10年のスパンで見ると圧倒的に輸出用米の方が手取りが高く、同社に(ひも)づく24戸はブレることなく輸出用に仕向けた。


 同社は、新技術に関心のある若者の雇用、ドローンスクールの運営受託、道の駅の農産物販売店の運営、地元の高校生による米袋デザインの採用など、地域活性化にも大きく貢献している。


 「農家は種を播く商売。20年前に播いた種がこのような結果になり、皆さんにかわいがってもらっている」と沼田さん。まだまだ走り続けたいと今後を見据える。


 日系レストランの海外進出などを背景に、日本産米の海外需要は高まっており、25年の米の輸出実績は4万6573㌧と、ここ5年で倍増している=図。


 ただ、同年の対前年の伸びは約3%にとどまっており、今年も上半期(1~6月)の実績が前年同期を下回るなど苦戦を強いられている。主食用米の価格高騰による輸出用米の生産量の減少と、その影響で輸出用米の価格自体が高騰したことが影響したと考えられている。


 政府は米の輸出量を24年実績から8倍増やし、30年までに39万6千㌧に引き上げる野心的な目標を掲げている。

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