所得補償により農地確保を図るEU農政
ドイツ、フランス、オーストリアなどEU各国の農村地帯をバスや車で移動すると、どこまでも続く畑地が、牧草地帯も含めて整然と耕されている。イタリア人はおおらかな気質だと日本人は思っているかもしれないが、中部山岳地帯を数十㌔行っても、耕作放棄地
ドイツ、フランス、オーストリアなどEU各国の農村地帯をバスや車で移動すると、どこまでも続く畑地が、牧草地帯も含めて整然と耕されている。イタリア人はおおらかな気質だと日本人は思っているかもしれないが、中部山岳地帯を数十㌔行っても、耕作放棄地は見つからない。
EUは1962年に開始した「共通農業政策」(2003年に大改革)で、食料安全保障(EU市民への食料の安定供給)のため、農家への補助金を、品目や生産額単位でなく農地面積ごとに所得補償として支給することにした。
100㌶の穀物農家を例にすると年間約500万~700万円程度の直接所得補償を受けることが一般的であるという。支給条件は、農地をきちんと管理していることである。支給額は収穫量や販売額に左右されない。
その結果、EUの農地は荒れることなく維持される。何よりも農家の所得が安定する。国家が生産品目を指示しなくとも農家は市場で求められている、従って値のつく品目を選択して生産しようと努める。その販売額は農家の収入となる。
03年の改革のポイントは、生産量と切り離した所得補償に転換したことである。所得が補償されるから農家経営が継承される。予算はEUから支出されるが加盟国も一定割合を負担する。過剰生産が起こりにくいから価格が安定し農家の所得は一層確保されやすい。
数年前にEUの環境派が「農業が環境を破壊する」と主張して所得補償の対象農地を減らそうとしたが農家がトラクターデモを実施するなどしてそれを阻止した。
日本の場合は相続税を支払うために農地を手放す例が多い。フランスでは農業経営を構成する資産全体について相続税・贈与税の優遇措置が設けられていて、畜舎や倉庫も優遇の対象となる。ドイツも同様である。オーストリアには相続税がない。
日本の食料自給率がカロリーベースで37%まで低下したのに対しEU各国がおおむね100%以上をキープして食料輸出国が多いのは、農家と農地を保全する政策を強化しているからである。日本も個別補助金政策から所得保障へと舵を切るべきではないか。
◇次回は9月25日付
@明治大学名誉教授・青山佾








