Home

記事

地域・くらし

あのまちこのまち

農作業事故ゼロへ高校生が安全対策作 新潟 村上桜ケ丘高校 農業科GAP班

2026年04月24日
     
シートベルト着用促進ポスター(左)と熱中症対策ポスターを持つ農産局長賞受賞の村上桜ケ丘高校の生徒
表彰状を受け取る小田さん
No items found.

 農水省が2025年度に新たに創設した「農作業安全表彰」制度(ことば参照)。最高位の農産局長賞に、新潟県立村上桜ケ丘高校農業科GAP班(生徒6人)の農作業事故ゼロの取り組みが選ばれ、今年2月に農水省内で表彰された。生徒がアンケートをとってト

 農水省が2025年度に新たに創設した「農作業安全表彰」制度(ことば参照)。最高位の農産局長賞に、新潟県立村上桜ケ丘高校農業科GAP班(生徒6人)の農作業事故ゼロの取り組みが選ばれ、今年2月に農水省内で表彰された。生徒がアンケートをとってトラクターのシートベルト未着用や熱中症対策の課題を掘り起こし、解決に向け主体的に声かけ活動を行ったことが評価された。


相次ぐ高齢者の死亡事故必ずシートベルト着用を

 同高校がこの研究に取り組んだのは、22年に生徒の住む近隣集落で乗用型トラクターの横転による高齢農家の相次ぐ死亡事故に衝撃を受けたことがきっかけ。同高校は、水稲の栽培で農業生産工程管理(GAP)認証を取得していることから、認証に労働環境への配慮が求められるため「本当に事故を防ぐことはできなかったのか」と、「農作業事故ゼロプロジェクト」を立ち上げた。

 同プロジェクトで、農業機械事故とシートベルト着用状況についてのアンケート調査を実施。シートベルトは回答者の81・5%が路上走行中などで着用していなかった。理由は「作業がしにくい」「着脱が面倒」「低速だから安全」という回答だった。一方で着用者の回答を見ると、腰の位置が安定して疲れにくいことから、巻き取り式シートベルトを選ぶ傾向にあった。ここに着眼し、巻き取り式の普及と着用の利点を啓発することにした。

 また、農水省の農作業死亡事故調査で農機事故の次に死亡事故が多いのが、農作業中の熱中症によることにも注目。熱中症に焦点を絞ったアンケート調査も行い、3割以上が熱中症になったことがあることがわかった。高齢者の割合が多く「約9割が夏場一人で作業をしていた」と回答。また、めまいや立ちくらみを初期症状ととらえていないこと、水分補給と時間で区切る休憩をとっていないことなども判明した。

 生徒たちは、作業前に飲むと深部体温を下げ、その後の体温上昇を抑制できることから、アイススラリー(流動性のある凍らせた飲料)の有効性に着目。休憩後すぐの作業は身体への負担が大きくなるため、外気温に慣らしてから行動することなど、適切な休憩と体を冷やす組み合わせを伝えることが大切と考えている。

注意喚起にポスター作製

 生徒は調査結果から得た対策を啓発・普及するため、「熱中症対策アンバサダー」の資格もとった。学んだ知識を活かして夏場作業の危険性を直接伝えるため、地元JAの職員と夏休み中に「熱中症パトロール」を行い、声かけ活動で安全意識を高めた。声かけでは「熱中症特別警戒アラート」が発表されたにもかかわらず、対策をとらず畦畔の除草をする70代の男性農家にスポーツドリンクを手渡し、小まめな休憩と水分補給を呼び掛けた。

 注意喚起の一環としてシートベルト着用促進と熱中症対策の啓発ポスターをそれぞれ作製。農家の目にとまるようにJAの入り口に掲示した。

 チームリーダ―の小田颯人さん(17)は「防げる事故はある。孫世代が命を第一に考える活動を進め、地域ぐるみで農作業安全の意識を高めたい」と語る。農業科の三浦隆幸教諭は「生徒が自主的に行動してくれたことがうれしい」と話した。


ことば

農作業安全表彰=農水省が、農作業安全に向け積極的に啓発活動に取り組む農家・農業関係機関を表彰する。優良事例の横展開を促すとともに現場での安全対策につなげる。

有料会員に登録すると会員限定の有料記事もお読みいただけます