梅の認知度向上と人づくりに活躍 「梅不二子」が地域で奮闘 越生町・山口由美さん









「梅の町として盛り上げたい。梅づくりは人づくり」――。埼玉県越生町にある梅の里おごせ山口農園代表の山口由美さん(58)は梅を語り出すと止まらない越生の梅のセールスウーマン。自ら「梅不二子」と称し、町の在来種「越生べに梅」=下
「梅の町として盛り上げたい。梅づくりは人づくり」――。埼玉県越生町にある梅の里おごせ山口農園代表の山口由美さん(58)は梅を語り出すと止まらない越生の梅のセールスウーマン。自ら「梅不二子」と称し、町の在来種「越生べに梅」=下記ことば参照=の生産、塩だけで漬けた梅干しなど加工品の開発・販売、カフェ、体験プログラムなどブランド化と知名度向上に奮闘する。発想力、行動力、ネットワークを存分に活かし、6次産業化による地域活性化の大きな力になっている。
「やるなら楽しく」と経営継承
都心から1時間圏内の同町は、関東屈指の梅の名所として知られる里山のまちだ。
このまちの梅をブランド化し、知名度向上に貢献したことが認められた由美さんは、農山漁村で活躍した人を讃える2025年度農山漁村女性活躍表彰(主催=農山漁村男女共同参画推進協議会)の女性地域社会参画部門(個人)で、最優秀の農水大臣賞を受賞した。
そんな由美さんは大阪府生まれ。サラリーマン家庭で育ち、幼稚園の先生を経て1993年に農家の長男だった夫・博正さん(65)と26歳で結婚した。博正さんの実家は100年以上続く梅農家で、3人の子育てと病気、同居する重い障がいがある叔父(義父の弟)の介護など苦労の連続だったという。
これらを乗り越え、町内4カ所の栽培面積約1・6㌶で越生べに梅など9品種、約300本から梅を年間約10㌧生産し、加工、販売を担う。栽培方法や加工方法を教わったのは、義父や他の梅農家からだ。
経営を引き継いだのは、義父が病で倒れた2010年。夫は地方公務員だったため、自身が3代目に。由美さんは「農業やるなら楽しく、私らしくと思った」と話す。
意見取り入れ付加価値化
梅の収穫は例年、5月中旬から始まる。傷がつかないように一粒ずつ手もぎで収穫する。
由美さんは、付加価値をつけて自園商品として販売したいと考え、12%の減塩で漬ける製法を受け継ぐなど敷地内に加工場を作り梅干しの製造を開始。「種が口に残って食べにくい」との義父の言葉をきっかけにペースト状にした「おにぎり梅」や、野菜炒めやスープに合う「万能梅みそ」も開発した。
地元の高校や大学と新商品も研究する。交流する武蔵越生高校、城西大学の生徒・学生と連携してスポーツ和菓子「JOSAIコラーゲンようかん べに梅味」を開発し、同大の坂戸キャンパス内で販売する。
パッケージやデザインにもこだわり、女性の感性を取り入れ、目に留まることを意識する。越生べに梅は、町の産地協議会とロゴマーク(商標登録)を作成、シールを貼って販売。百貨店や製菓店、梅酒メーカーに販路を開いた。無印良品のオンラインショップでも販売している。
体験通じて梅の魅力発信
地域への来訪者に「体験」を提供することも考えている。
青梅の収穫や梅の枝染め、加工体験プログラムを企画して地域貢献に尽力する。ここからカフェの経営に発展し、多角的に事業を行う。21年に「体験だけでは伝えきれない梅の魅力や可能性を料理で伝えていきたかった」と敷地内にあった養蚕小屋を改装し、「梅凛caffe」をオープン。梅づくしのランチプレートが人気だ。曜日でシェフが替わるシェアキッチンスペースとしても活用し、子ども食堂としても開放する。
この場で品種や味の違いが楽しめる梅干しの食べ比べ、規格外の梅を使ったジュースやお酒の飲み比べも楽しめる。
参加型の祭典「梅凛フェス」も開いた。梅の開花時期に来訪者、住民との交流を深めるため、高校生や地域おこし協力隊員と連携して農園の一部を開放。梅の花のライトアップや音楽イベント、大道芸人、キッチンカーも呼び、盛り上げた。
また、地域住民や生産者同士の悩みを話し合える仲間づくりとして、農水省の農業女子プロジェクトへ参加。「全国梅生産者女性サミットinおごせ」も開催したという。
就農者育成や害虫など課題解決へ
梅の作付面積を広げるため、先輩農家と苗木の育成にも力を入れる。生産目的の梅苗木を1本1千円で販売している。果樹の苗木の購入費用については、町の「生産拡充・苗木購入費補助金制度」の創設にもかかわった。「友人、出会った人たちに育ててもらったから今度は恩返しで人を育てたい」との考えからだ。
就農希望者や援農ボランティアの受け入れも積極的に行う。埼玉県川越農林振興センターと連携して活用できる園地を優先して新規就農者に貸し出す制度を設け、園主との調整役も担う。これまで20~30代の新規就農者を3人育てている。
今後の課題は、梅を加害する重要害虫・クビアカツヤカミキリへの対応だという。
幼虫が樹木内部に侵入、食い荒らし枯死させる特定外来生物だ。幼虫の動きが盛んになる前に防除するため、成虫の発生時期には対策ネットを樹木に巻いて抑える。老齢樹は伐採、改植で対応する。
由美さんは「行政と連携して梅の産地を守り続けたい」と力を込める。
(ことば)越生べに梅=越生町の生産用在来品種。果実は、香り高く薄皮で果肉が厚い。完熟するとフルーティーな香りで、表面に紅色がさす。








