地域ぐるみで取り組む鳥獣害対策⑥ 「イノP」取締役・楠田弘毅氏
「研修」「マップ作り」「集落点検」を経て、いよいよ住民同士で「合意形成」した対策を実践する段階に入る。しかし、焦りは禁物だ。事前準備なしに進めると、思わぬ失敗を招きかねない。
例えば「柵の設置」。人は時間がたてば忘れる生き物である。私たち
「研修」「マップ作り」「集落点検」を経て、いよいよ住民同士で「合意形成」した対策を実践する段階に入る。しかし、焦りは禁物だ。事前準備なしに進めると、思わぬ失敗を招きかねない。
例えば「柵の設置」。人は時間がたてば忘れる生き物である。私たちが関わってきた地域では、設置作業に入る前に、もう一度「柵」について学ぶ機会を設けている。イノシシ用電気柵なら、4千㌾以上を保持すること、地際からの電線の高さは20㌢、40㌢とすること、舗装道から50㌢以上離すこと、アース棒はしっかり土に埋めること――など、設置の要点を全員でおさらいするのだ。
さらに重要なのが、現場の下準備である。設置予定ルートの草刈りや、地面の凹凸の平坦化などの環境整備は欠かせない。畦畔の田んぼ側か、道路側か、あるいは中央か。設置後の草刈りなどの維持管理や、日々の農作業の動線をイメージして設置場所を吟味する。時には作付面積を多少減らしてでも、効果が確実に発揮される場所を選ぶ覚悟も必要だ。
こうした地道な作業は、数人で行うには骨が折れる。だが、ここまでのプロセスを通じて危機感を共有し、地域ぐるみの協力体制が構築されていれば、多くの住民が作業に参加してくれるはずだ。
そして、柵は「張ってからが本番」である。一度作物の味を覚えた獣の執着心はすさまじい。4千㌾を下回っていないか、柵が破損していないか。日々の見回りと維持管理こそが最大の防御となる。
「苗半作」という言葉があるが、鳥獣害対策も同じである。念入りな下準備と日々の管理こそが成功のカギを握る。「研修」「マップ作り」「集落点検」「合意形成」「復習」「下準備」。万全の態勢を整えてから、対策の実施へと駒を進めよう。全6回でお伝えした「地域ぐるみ」の取り組みが、鳥獣害に立ち向かう皆さまの一助となることを心より願っている。
この項はおわり









