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夫婦でUターン就農、地域振興 環境に優しい農業実践 長崎市 野中果樹園

2026年06月19日
     
シャインマスカットの管理をする麻美さん
温州ミカンを管理する隆史さん
草が緑の絨毯(じゅうたん)のように土を包み込む草生栽培(写真の一部は野中果樹園提供)
長崎デザインアワードの銀賞に輝いたみかんBOX
規格外品で製造したシャインマスカットエール
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 ㈱野中果樹園は、大村湾を望む長崎市琴海地区に点在する園地で経営する。自然本来の味へのこだわりと環境に負荷の少ない農法をめざして有機質肥料を施用し、「草生(そうせい)栽培」を進める。代表取締役の野中隆史(たかふみ)さん(42)が柑橘類、取締

 ㈱野中果樹園は、大村湾を望む長崎市琴海地区に点在する園地で経営する。自然本来の味へのこだわりと環境に負荷の少ない農法をめざして有機質肥料を施用し、「草生(そうせい)栽培」を進める。代表取締役の野中隆史(たかふみ)さん(42)が柑橘類、取締役の麻美(あさみ)さん(36)はブドウと6次化部門を担う。大阪で出会って2人でUターンした。新規就農した麻美さんは日々の暮らしや農作業、自然の中で培った知恵をアイデアに結びつけ加工品を開発、SNS(交流サイト)で幅広く情報発信する。


<柑橘類の草生栽培が奏功>

 隆史さんは約40年続く柑橘農家の長男。露地とハウス約3㌶で温州ミカンやせとか、不知火(デコポン)などの中晩柑を生産する。

 宮崎大農学部を卒業後、神奈川県横浜市の青果会社で4年間、農産物の流通を学んだ。退職後、「世界を見たい」と1年間、世界一周の旅を経験。立ち寄ったブラジルやパラグアイで地平線の彼方まで続くプランテーション農園や、戦後移住して開拓した日系移民の姿を見ながら農業の大切さを感じた。帰国後、JA全農長崎県本部大阪事務所に勤務。この時代に県人会を立ち上げ、麻美さんと出会った。32歳でJA全農を退職し、県立農業大学校で1年間研修、2017年に父と別経営で柑橘を始めた。

 果樹園では、草生栽培を導入している。樹木の周囲に緑肥を撒き、有用な草が地表を覆うことで土壌を改良する方法だ。刈った草や根が土に有機物を供給し、微生物が活発になって果樹への栄養供給が促されるという。雨や風による土壌浸食も防ぎ、乾燥や高温のストレスを軽減。隆史さんは「持続可能な農業として、化学肥料や農薬を減らせる」と話す。

 「ミカンを好きになってほしい」とかわいらしさを打ち出したみかんBOXのデザインも考えた。2㌔箱と5㌔箱は部屋の中に置いてもなじむデザインに、贈答用は高級感を出した。みかんBOXは、県内の優れたデザインを表彰する「長崎デザインアワード2021」で銀賞を受賞した。

 また、大学生の提案を経営に活かす取り組みも続ける。フィールドワークとして長崎大経済学部のゼミ生8人が訪れ、農作業をしながら果樹の魅力や課題に向き合った。消費量を増やすため、大学生のアイデアでシャインマスカットの販売促進会「無料体験・コラージュBOXづくり」も開いた。気に入った箱紙にコラージュを施し、独自のラッピングBOXを製作できるブースを設置。果樹生産の理解醸成とファンづくりにつなげる。

水田絶やすまい

 担い手不足で管理できなくなった水田約1.1㌶を引き受け、米づくりも始めた。2年前からお米「たやすまい」(品種はにこまる)を生産し、販売は自社ECサイトで直営する。「地域をつないできた米づくりの共有財産を絶やすまい」(隆史さん)と離農農家から農地を借り、食料供給を支える。商品名に、農家の思いや地域のつながりへの願いを込めたという。


<需要や雇用考えブドウ導入>

 麻美さんは、同県雲仙市千々石町の生まれ。

 農業の経験はなかったが、興味を持ったのは諫早商業高校時代だ。知人が見せてくれたイタリアのブドウ畑の写真に憧れ、「いつかイタリアへ」と夢を膨らませた。

 大阪市内の旅行会社に6年間勤務し添乗員としてグリーン・ツーリズムに関わる機会もあった。

 その後、隆史さんとの結婚を機に長崎にUターン。17年に認定新規就農者となり経営開始資金の助成を受け、夫と別経営でアスパラガスの生産を開始。販売や雇用面を考え作目をブドウに変え、面積28㌃でシャインマスカットを主体に栽培する。シャインマスカットは経験が浅い人でも作りやすく、高値で出荷でき、皮ごと食べられる点が市場や加工需要に向くことから導入した。

 主枝を直線状に伸ばす樹形・一文字短梢剪定で生産する。一般的な栽培に比べ、生産性は高く品質が優れるとともに作業時間が慣行栽培より短縮でき、省力的という。


<災害をバネに6次化推進>

 20年7月、一つの試練があった。長崎を襲った豪雨・洪水による地滑りでハウスは倒壊、樹木が流される被害に遭った。

 SNSで状況を発信すると、見た知人から心配や応援する声が寄せられた。そこで復旧工事費の一部を調達する手段として、クラウドファンディングを利用。地域の人、友人や県人会員など賛同者350人から目標額を1.5倍も上回る支援金が集まったという。被害が大きかったせとかを大切に育てて返礼品とした。

 復旧後は、ホームページに直販サイトを開設。ふるさと納税、LINEなど販売チャネルをそろえていった。

 このことは6次化を進める契機になった。摘果した完熟前のせとかの香りを含むアロマミストやアロマオイルを委託製造で商品化。1年半冷凍熟成させた果実と白麹(しろこうじ)を使い、軽く爽やかな酸味を引き出したブドウのクラフトビールも造った。

農業委員として地域に貢献

 麻美さんは23年7月から、農業委員を務める。

 農業委員会会長や前農業委員から誘われたのがきっかけだ。農家の話を聞き、先輩委員と耕作放棄地の発生防止・解消、新規参入の促進などを進める。麻美さんは「資源を守っていくには地域と人の力が必要。地域の農業や農村生活のニーズを把握し、農地利用の最適化や地域計画の実行に貢献したい」と目を輝かす。

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