2157

地域ぐるみで取り組む鳥獣害対策③  「イノP」取締役・楠田弘毅氏

2026年10月02日
     
情報通信技術(ICT)を利用した捕獲通知システム。捕獲されると通知が来る
No items found.

 「もう農業ばやめようて思うとたい…」


 2016年2月、イノシシ被害に落胆するおばあちゃんの言葉をきっかけに「くまもと☆農家ハンター」は産声を上げた。地域を災害から守る消防団のように、鳥獣被害から地域と畑を守るため、若手農家が捕獲活動に立ち

 「もう農業ばやめようて思うとたい…」


 2016年2月、イノシシ被害に落胆するおばあちゃんの言葉をきっかけに「くまもと☆農家ハンター」は産声を上げた。地域を災害から守る消防団のように、鳥獣被害から地域と畑を守るため、若手農家が捕獲活動に立ち上がったのである。弊社イノPは、実はこの活動がきっかけで生まれた会社だ。


 彼らは地域の猟友会支部長や大学の先生のもとで技術を学び、実践を重ねた。重視しているのは「里に出てきてしまったイノシシを獲る」ことだ。里の味を知らない山中の個体をいくら捕獲しても、被害は減らない。農業や生活に実害をもたらす「加害獣」に狙いを定めている。


 また、活動を継続するため、情報通信技術(ICT)を利用した捕獲通知システムを導入した。農業と捕獲活動を両立させるには、見回りの負担軽減が不可欠だ。効果はてきめんで、これまで数時間かかっていた見回りが数分で済むようになった。このおかげで捕獲活動を続けられていると言っても過言ではない。


 拠点を置く熊本県宇城市三角町では、250頭ほどだった捕獲頭数がピーク時には1千頭と4倍に増加。これは捕獲の担い手が増え、技術が向上した確かな成果である。


 「地域と畑は自分たちで守る」。この合言葉に賛同する仲間は熊本県内に130人ほどに広がり、現在も対策に関する情報交換、技術指導をお互いに行う緩やかなネットワークが機能している。26年7月の熊本地震では、断水地域への水の供給など共助のネットワークとしても力を発揮した。


 くまもと☆農家ハンターの「☆」には、立ち上がった若手農家が「地域の希望の星」になるという願いが込められている。若手が獣害対策を通じて地域の信頼を勝ち取り、やがて地域と農業をけん引していく。獣害対策という「マイナスをゼロに戻す」取り組みを、地域にとっての「プラス」へと変えていく。そんな未来をめざして、彼らの挑戦は続く。


有料会員に登録すると会員限定の有料記事もお読みいただけます