将来の日本農業はどこへ向かうか―再認識すべき家族農業の役割を!前編 宮部芳照氏
近年、農水省は、スマート農業技術を導入して、少数の農業経営体が大規模に生産する、いわゆる「大規模農業生産システム」の構築を主導してきた。しかし、本生産システムを主体にした施策で将来の日本農業を救えるのか、国民へ持続可能な食料供給を保証でき
近年、農水省は、スマート農業技術を導入して、少数の農業経営体が大規模に生産する、いわゆる「大規模農業生産システム」の構築を主導してきた。しかし、本生産システムを主体にした施策で将来の日本農業を救えるのか、国民へ持続可能な食料供給を保証できるのか、強い危惧の念を感じる。
そもそも、日本農業は戦後から今日まで、大規模な農業生産に不利な構造になっており、必然的に小規模な家族農業形態が主流を占めてきたのには、それなりの背景がある。
わが国は、平地が少なく農地は国土の約11%、しかも狭隘な区画圃場が多い=図1。欧米のような広大な農地で少数の経営体が大規模生産を行うには地形的な制約があまりに大きい。
また、戦後の農地改革で農地の小規模化と分散化が進み、さらに農地法により農地は厳しく管理され、大規模化を困難なものにしてきた。加えて、補助金への依存体質や先祖代々の農地への執着など、日本農業の構造的な問題が今も残っている。おのずと大規模化に限界がある=図2。
「国連家族農業の10年」が意図するもの
国際的には、世界の農場数の約9割、食料供給の約8割を占める家族農業のもつ役割を重視して、国際連合は2019年~28年を「家族農業の10年」と定めた。加盟国および関係機関へ食料安全保障の確保と貧困・飢餓の撲滅に大きな役割を果たす家族農業をSDGsの主役として位置づけ、気候変動や農村女性の権利保障などの達成に寄与する農業形態として環境・社会政策の中心に据えるよう求めてきた。
わが国の家族農業への関わり方は、FAO(国連食糧農業機関)などが事務局になり策定した「世界行動計画」に沿って家族農業経営の強化安定を図っている。環境保全や文化継承、若手層の就農支援、所得安定対策、多面的機能の維持強化、国際シンポジウムの開催などを実施している。
さらに、夫婦や親子間で経営方針や役割分担、所得配分などについて合意した「家族経営協定」の締結を進め、農業経営の発展と男女共同参画、経営継承などをめざしている。その他、種々の家族農業支援への方針を示し施策が実施されてきたが、諸外国に比べてまだまだ取り組みが浅く、歩みが遅い。特に、国連「家族農業の10年」が意図したものは、農業のみならず他の生物や環境を含む持続可能な社会への転換を求めた、いわゆるアグロエコロジー的農業(自然の生態系の仕組みを生かしながら社会、経済、文化まで含めた持続可能な食料生産システム〈農業生態学〉)への道を開く取り組みであることを再確認すべきだ。
<筆者プロフィール>
1966年、北海道大学大学院農学研究科農業工学修了。元鹿児島大学農学部教授。農学博士。専門分野は農業機械学、農業システム工学、農作業学。











