特定外来生物の生態と防除対策⑥ (一財)自然環境研究センター 辻井健太郎

2026年08月14日
     
地面に落下した果実を吸汁するツマアカスズメバチの働きバチ
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 ツマアカスズメバチは、南アジア、東南アジア、中国南部に広く分布しているスズメバチである。世界に12の亜種が存在しており、2000年代に入り、中国南部からインド北東部原産の亜種が韓国やヨーロッパをはじめ世界各地に侵入し、まん延した地域ではさ

 ツマアカスズメバチは、南アジア、東南アジア、中国南部に広く分布しているスズメバチである。世界に12の亜種が存在しており、2000年代に入り、中国南部からインド北東部原産の亜種が韓国やヨーロッパをはじめ世界各地に侵入し、まん延した地域ではさまざまな影響を及ぼしている。生態系への影響の他、人への刺傷被害や果物などの食害、ミツバチを捕食することによる養蜂業への影響などの農業被害が懸念されている。


 日本では、12年に長崎県対馬市で初めて侵入・定着が確認された。九州本土や長崎県壱岐市、山口県防府市でも侵入が確認された事例はあるものの、現時点では対馬市以外での定着は確認されていない。


 本種は、春~初夏にかけては土中などの閉鎖空間に巣を作るが、夏には開放空間である樹木や住宅、電柱といった高所に引っ越し、大きな巣を作る。引っ越し後の巣は、大きいものでは縦径1㍍を超えた事例も知られている。


 対馬市内では生態系や養蜂業などへの影響が懸念されており、巣の除去による防除の他、ジュースなどの誘引液を用いたベイトトラップでの捕殺が可能なことから、春季の女王バチ捕殺による防除が進められている。また、遅効性の薬剤を用いた防除も試験的に導入されている。


 対馬市内での防除を継続することで国内でのさらなる拡散と定着を防ぎつつ根絶をめざすことに加え、国外からの新たな侵入に警戒し、水際対策の徹底が継続されることが望まれる。


 本種はミツバチの巣箱の前で待ち構えるようにホバリング飛行している姿が特徴的である。未定着地域への侵入時にはミツバチの巣箱に飛来することが想定されるので、養蜂業を営む方々の協力が水際対策において極めて重要である。いつもと違うスズメバチを巣箱の付近で見かけた場合には、撮影するなどしたうえで、自治体や環境省地方環境局まで連絡いただくと早期発見につながる。


この項はおわり

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