抹茶ブームで緑茶の輸出好調 煎茶→てん茶の切り替え相次ぐ

2026年08月14日
     
「産地の機運は高まっている」と話す松永さん
茶樹に被覆資材をかける組合員
被覆資材がかかった〝白い〟茶畑
同組合が導入したネット型てん茶製造機
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 緑茶の輸出が好調だ。2025年の輸出額は721億円で、前年の約2倍。この10年間で見ると約7倍に拡大している。背景にあるのは、欧米諸国を中心に海外で巻き起こっている抹茶ブームだ。生産現場ではこの追い風に乗ろうと、「煎茶」から抹茶の原料にな

 緑茶の輸出が好調だ。2025年の輸出額は721億円で、前年の約2倍。この10年間で見ると約7倍に拡大している。背景にあるのは、欧米諸国を中心に海外で巻き起こっている抹茶ブームだ。生産現場ではこの追い風に乗ろうと、「煎茶」から抹茶の原料になる「てん茶」に生産を切り替える動きが相次いでいる。


 静岡県静岡市の足久保ティーワークス茶農業協同組合(松永哲也代表理事組合長、53)が本格的にてん茶の生産に乗り出したのは、25年秋。それまでは生産の9割以上を煎茶が占めていたが、今春の一番茶・二番茶では7割がてん茶になった。松永さんは「販売先からのオファーがきっかけ。煎茶中心では経営が厳しくなっていたことも、てん茶の導入を後押しした」と説明する。


 てん茶は新芽が1~2枚開き始めたころから、茶樹を被覆(遮光)して栽培するのが特徴だ。渋味成分であるカテキンの生成が抑えられるほか、鮮やかな緑色に仕上がるなど効果が得られる一方で、煎茶より栽培に手間がかかる。「16人いる組合員も高齢化が進んでいて、当初は反対意見も多かった」と振り返る松永さん。それでも「産地を守るためにはてん茶が必要」と説得し、足りない人手は組合員同士でカバーし合うことで栽培を軌道に乗せた。


 静岡市内の生産者としては初めて、てん茶の製造に必要な専用の加工施設も整備した。こだわったのは生葉を蒸す機械の処理能力。最も需要が見込まれる飲料・お菓子などの加工品向けのてん茶(抹茶)製造を重視し、1時間当たり700㌔と処理能力の高い機械を導入した。総事業費は1.5億円に及んだが、てん茶の生産を後押しする国や市の補助金を活用。負担は半分程度に抑えられた。


 てん茶の導入効果は早くも現れている。キロ単価は煎茶の約3倍と好調で、収量は元々2倍ほどとれるのがてん茶。相場が変動する煎茶と違い価格が一定のため、慌てて収穫する必要もなくなった。松永さんは「『お茶を続けていきたい』と話す組合員が増えるなど、生産意欲の向上につながっている。苦しい時期が長かった分、この状況は本当にうれしい」と笑顔を見せる。


抹茶ブームを実感


 市内で数少ないてん茶の加工施設とあって「茶葉を持ち込めないか」という打診も少なくない。ただ、すでに処理量の半分ほどが組合員以外の生産分となっており、これ以上受け入れるのは難しいのが現状だ。松永さんは「各地でてん茶の加工施設が整備されている関係で機械は2年待ち、中東情勢の影響も重なって被覆資材も不足していると聞く。早めに動き出してよかった」と話す。


 海外の抹茶ブームは肌で感じている。ヨーロッパや北米、アジアなどの各国から旅行を兼ねて同組合を訪れる観光客も多く、中には「直で取引できないか」という打診もあるのだ。生産量との兼ね合いから断らざるを得ないケースがほとんどだが、カナダやオーストラリアに一部出荷するなど、取引につながったケースもある。


 抹茶の魅力について松永さんは、さまざまな食品に活用できるなど、煎茶と比べて手軽に楽しめる点をあげる。抹茶ブームにより煎茶からてん茶への栽培転換が進み、煎茶が不足する事態も発生しているが「抹茶がきっかけでお茶に興味を持ち、より奥が深い煎茶に魅了されていく人も少なくない。そういう意味でも、この抹茶ブームは歓迎している」と松永さんは話す。


 ただ、日本の伝統的な煎茶の栽培技術もしっかりと継承していく考えだ。松永さんは「抹茶ブームのおかげで体力も付きつつある。静岡という伝統ある煎茶の産地を守っていくためにも、今後は改めて煎茶の生産にも力を入れていきたい」と意欲を見せる。

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