ライチの安定生産技術を開発 香川・高松市 四国総合研究所
国産の流通量がわずか1%程度とされる亜熱帯果樹ライチ。そんなライチを国内で安定生産する技術を、㈱四国総合研究所(香川県高松市)が開発した。希少価値の高い農産物を新たな特産品として普及し、地域農業を活性化するのが狙い。2024年には同社から
国産の流通量がわずか1%程度とされる亜熱帯果樹ライチ。そんなライチを国内で安定生産する技術を、㈱四国総合研究所(香川県高松市)が開発した。希少価値の高い農産物を新たな特産品として普及し、地域農業を活性化するのが狙い。2024年には同社から技術提供を受けた県内の企業が試験栽培に乗り出すなど、社会実装に向けて着実に歩みを進めている。
自社製品駆使し栽培技術確立 大玉で高糖度の果実に
「収益性の高い農産物の栽培技術を広めることで、地域農業を盛り上げたい」――。そんな思いから11年に研究がスタートした。ライチに着目したのは、希少性が高いことに加え、流通段階で輸入品との明確な違いが出せるためだ。研究を主導してきた同社電子アグリ技術部の工藤りかさん(農学博士)は「中華料理のデザートなどで目にする輸入物のライチは、冷凍品のため皮が茶色に変色している。一方で国産の場合は生のまま流通させられるため、ライチ本来の鮮やかな紅色の状態で販売できる」と説明する。
研究は品種の選定から始まった。日本の気候やハウス栽培に適し、贈答用など高単価での販売に向く大きな実をつけるもの――。各地から取り寄せた12の品種から、それら条件に合致した一つの品種に絞り込んだ。
栽培技術の確立では、同社がそれまでの研究で生み出してきた製品や技術が役立った。その一つが、緑色光の照射により作物の病害抵抗性を高める「みどりきくぞう」。11年の販売開始以来、イチゴの炭疽病対策などで実績をあげている製品だ。工藤さんは「登録農薬が少ないライチとも相性が良く、導入したことで安定して栽培できるようになった」と話す。
適正な栽培条件の見極めにも、自社製品が活躍した。温度や湿度、日射量などを常時計測できる環境モニタリング装置「ハッピィ・マインダー」をハウス内に設置し、収集したデータを地道に解析。苗木と成木では適正な栽培環境が異なること、花芽の分化を促すため冬季に一定期間低温にさらす必要があることなど、安定生産には欠かせない情報が蓄積した。
こうした栽培実証を積み重ねた結果、研究開始から10年目を迎えた20年夏に初めて果実を実らせることに成功した。収穫した果実は1個40㌘を超える大玉のものが多く、糖度も15~19度と高い。ハウス内の環境を適切に制御することで、収穫期間を従来比で1カ月程度長期化できることも明らかになった。
さらに、24年には機能性関与成分のGABAが100㌘当たり約100㍉㌘と豊富に含まれることを解明(高含有とされるトマトは同50~60㍉㌘)。「肌の弾力維持」「ストレスや疲労感の緩和」「高血圧の抑制」の効果が期待できる機能性表示食品として届け出を行った。
美の紅果と名付けブランド化 普及に向けコンサル開始
栽培技術にめどがついた段階で、ライチのブランディングにも力を入れた。香川大学創造工学部の協力も得ながら、同社が独自に開発したライチのスマート栽培技術を「美の紅果」と命名。ブランドロゴやイメージキャラクター、Webサイトといった広告ツールの開発、実装を進めた。
一般顧客の認知度を高めようと、21年からは試験販売も始めた。県内の商業施設などにスポットで出荷し、4個入り1500円で販売。贈答用を意識した高めの価格設定だが、ここ数年は完売する日も増えるなど売れ行きは好調だという。工藤さんは「『美の紅果』が浸透してきていることに加え、ライチの注目度の高さも実感している」と手応えを口にする。
同社の目的はあくまでも「栽培技術の社会実装」で、そのための準備も進めている。誰もが栽培に取り組めるよう、長年の研究で蓄積してきた知見をマニュアル化。苗木が成木になるまで3年ほどかかることを踏まえ、苗木の育成にも着手している。今後は栽培ノウハウと成木の供給をセットにしたコンサル事業に注力していく考えだ。
コンサル事業はすでにスタートしており、24年には同県綾川町で産業廃棄物処理業を手がける㈱富士クリーンと契約を締結した。同社はハウスの環境制御にかかるエネルギーを、産業廃棄物を原料にしたバイオガス発電で賄う仕組みを検証中。資源を循環させながら収益性の高い農作物を生産するという、持続可能性の高い農業の実現に期待が高まっている。
一般の農家への技術展開も当然視野に入れている。工藤さんは「既存の作物を柱にして経営に組み込むなど、まずは小面積から始めることを推奨していきたい。夏場の新たな収益源にしてもらえれば」と期待を込める。
















