新たな人員と予算を投じる必要あり-重責を担う農業委員会(後編)-安藤光義氏
制度的な場作りや業務量増加に対応を
2022年の農地関連法改正から5年後の見直しの課題は、⑴策定が法定化された地域計画のブラッシュアップにおける農業委員会の役割や権限をどのように設定するか⑵⑴の推進に当たって農業委員と農地利用最適化推進委員
制度的な場作りや業務量増加に対応を
2022年の農地関連法改正から5年後の見直しの課題は、⑴策定が法定化された地域計画のブラッシュアップにおける農業委員会の役割や権限をどのように設定するか⑵⑴の推進に当たって農業委員と農地利用最適化推進委員の併存配置状況をどうするか⑶農地中間管理機構のあり方(市町村の利用集積計画が機構の農用地利用集積等促進計画に統合されたことに伴う問題への対応、特に機構と市町村・農業委員会との役割分担の整理)⑷農地の取得に係る下限面積要件の廃止に伴って発生する問題への対応――の4点だと考える。⑶と⑷は前回に記したので、今回は⑴と⑵について論じることにしたい。
ブラッシュアップを進める余裕はない
地域計画のブラッシュアップを進めるに際して農業委員会が担う役割は、農業経営基盤強化促進法では第21条(農業委員会による利用権の設定等の促進等)として、「農業委員会は、地域計画の区域内において、当該地域計画の達成に資するよう、当該区域内の農用地等について所有権、地上権、永小作権、質権、賃借権、使用貸借による権利又はその他の使用及び収益を目的とする権利を有する者(以下「所有者等」という。)に対し、当該農用地等について農地中間管理機構に利用権の設定等を行うことを積極的に促すものとする」と記されている。現行、農業委員会はこのようなかたちで市町村を支援するだけにとどまっている。
しかしながら、市町村は地域計画の策定で精いっぱいだったというのが実情ではないだろうか。今後ブラッシュアップを進めていくだけの人的・予算的余裕は市町村の現場にはない。ここにどのようにしててこ入れをするかが政策に問われている。
制度的な場と人員・予算が必要
例えば、農業委員会が主体的に取り組むことができるような法的な枠組みを設けることは一つの考え方かもしれない。地域計画を実行していくための制度的な場を設置し、そこに農業者の代表者である農業委員を参画させてはどうだろうか。
現在は完全に忘却のかなたとなってしまったが、「集団的自主的自己選別」(今村奈良臣)を遂行する場とされた農用地利用改善団体のような地域農政推進の拠点の設置が必要不可欠だと考える。
以前であればそれは集落であった。だが、弱体化した集落に代わる拠点を何に求めたらよいのかというのが現在直面している課題であり、難題なのである。これは「人・農地プラン」以来続いている、地域農政の執行体制に関わる問題とすることができる。この点はともかく、こうした制度的な場を設置し、そこに人員と予算を投じないことには地域計画のブラッシュアップは望み得ないことだけは確かである。
また、そうした制度的な場は単なる話し合いに基づく合意形成を超えて、そこに一定程度の強制力を持たせることが必要になるかもしれない。
土地持ち非農家が多数派となり、さらに不在村農地所有者、所有者不明農地が増加しているため、話し合いの開催自体が困難になっていることに加え、そこでの合意を地域の規範として機能させることが難しくなっているからである。
思い付きにすぎないが、地元での話し合いを行う制度的な場に対して、かつての特定利用権のような、農地利用のあり方について何らかの権限を付与することが、地域計画に実効性を持たせるためにも求められているように思う。
委員と事務局職員の十分な確保を
地域農政推進の拠点に十分な数の農業委員を配置することも不可欠である。その場合、問題となるのが農業委員と推進委員が併存している状況への対応である。基本的には推進委員を農業委員に一本化する方向が望ましいと考えるが、推進委員がしっかりと機能している農業委員会もあり、現実的ではないかもしれない。
最も注意しなければならないのは、制度改正に乗じて農業委員会の人員が減らされてしまうことである。もし、推進委員だけが減らされ農業委員の数が増えなければ、現場で「農地を動かす人」は減ってしまう。そうなると地域計画のブラッシュアップは進まないことは政府も十分承知しているとは思うが、こればかりは何が起きるか分からない。一定の農地面積あたりに最低1人以上の農業委員の設置を義務付けることも検討してはどうだろうか。
繰り返しとなってしまって恐縮だが、新たな人員と予算を投じないことには地域計画のブラッシュアップは望み得ないのである。また、農業委員会の業務量の増加に対応できるだけの事務局職員の確保・育成が不可欠であることを記して本稿を終えることにしたい。
<筆者プロフィール>
1994年東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。博士(農学)。2015年から同大学大学院農学生命科学研究科教授。










