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連載

つれづれ農日記

【石油王の12カ月】静かな激動 小泉ファーム・小泉輝夫氏

2026年07月03日

 7月。今年はスーパーエルニーニョの発生が予測されているという。


 2019年9月のことを思い出すと、背筋に冷たいものが走る。「令和元年房総半島台風」と命名された台風15号により、格納ハウスを含む7棟が、一晩で全壊した。


 米づくりは、年にたっ

 7月。今年はスーパーエルニーニョの発生が予測されているという。


 2019年9月のことを思い出すと、背筋に冷たいものが走る。「令和元年房総半島台風」と命名された台風15号により、格納ハウスを含む7棟が、一晩で全壊した。


 米づくりは、年にたった1度しか結晶を結べない。世間が目にするのは、その瞬間の米価という「結果」だけだ。SNS的な瞬間の刺激には残りやすいが、そこに至るまでの数十年、私たちが粛々と積み上げてきた時間は写らない。基盤整備も土づくりも、地味すぎてインスタ映えしない。


 その間にも、向き合うべき課題は尽きない。異常な高温と干ばつ、台風、水害、獣害、駆逐できない難防除雑草や害虫の大群。道路沿いの圃場に捨てられるゴミ。浚渫(しゅんせつ)されない水路と川。重要な局面でたびたび動かない最新のスマート農機――。一つ一つに長く向き合い、戦ってきた先人たちが、声も上げずに静かに辞めていく。


 農業は経済合理性が良くない。今この瞬間の生産性で測れば、割に合わない仕事だろう。経済のスピード感と、農業が積み上げてきた時間の速度は、根本的にかみ合わない。それでも、食が国の礎であることは揺るがぬ事実だ。


 幸いなことに、最近は前向きでバイタリティーに(あふ)れた経営者や関係者の方々と意見交換する機会が続いている。立場も業種も違うのに、行き着く結論はいつも同じだ。学び、知ろうとする姿勢。決断し、実行する行動力。そして失敗談まで腹の底から笑い合える仲間の存在。この三つが、静かな激動を生き抜く者に共通する力なのだろう。


 私が続けてきた基盤整備も、目的ではなく手段にすぎない。地味な土台を整えることは、ようやくそこから始まるスタートラインに立つための準備作業だ。今年もまた、外的要因という不確実性におびえながら、見えない積み上げを続けていく。

◇次回は8月7日付

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