守り人 momo farm 栃木・大田原市 西岡智子氏
この夏、北海道を旅した。アイヌの人々が大切に守り続けてきた森を歩き、ウポポイでは祈りの歌と踊りの響きに包まれた。縄文の遺跡に立ち、こんこんと湧き続ける水に触れた。深い森が雨を受け止め、その水をゆっくりと大地に蓄え、命を育む。その営みは、人
この夏、北海道を旅した。アイヌの人々が大切に守り続けてきた森を歩き、ウポポイでは祈りの歌と踊りの響きに包まれた。縄文の遺跡に立ち、こんこんと湧き続ける水に触れた。深い森が雨を受け止め、その水をゆっくりと大地に蓄え、命を育む。その営みは、人が生まれるずっと前から続いてきた。
北海道で出会ったのは、地球が育んできた美しさに抱かれながら、人が時を重ね、祈り、歌い、感謝しながら守り育ててきた美しさだった。歌は、その土地に刻まれてきた記憶だった。
旅を終えて田んぼへ戻ると、1粒のお米の見え方が少し変わっていた。
今年も、お米の価格が話題になっている。価格は大切である。農家が営みを続け、次の世代へ田んぼをつないでいくためにも、適正な価値は必要だ。
けれど、1粒のお米は価格だけでは語れない。空があり、森があり、水があり、土があり、虫や鳥がいて、人がいる。そのすべてがつながって、1粒のお米になる。
旅をして気づいた。それぞれの土地には、それぞれの土地を守り続けてきた人たちがいる。森を守る人。海を守る人。山を守る人。川を守る人。そして、田んぼを守る人――。
その人たちの姿を思い浮かべたとき、ひとつの言葉が心に浮かんだ。
地球が育んできた美しさ。人が時を重ねながら守り育ててきた美しさ。歌や祈り。日々の暮らし。土地に刻まれてきた記憶。そのすべてを、未来へ手渡していく人。
以前、大切な方から、こんな言葉を手渡していただいた。「風景は、意識を向けて見続けることで美しくなる」。その言葉は、北海道の森でも、田んぼでも、静かに響いていた。
だから今日も田んぼに立つ。まだ会ったことのない誰かが、この風景の中で暮らせるように。未来を信じて、1粒の種をまく。
◇次回は9月11日付








