【石油王の12カ月】忘れてはならないこと 小泉ファーム・小泉輝夫氏

2026年09月04日

 9月、収穫の季節だ。しかしこの原稿を書く手が重い。


 お盆の最中、千葉県を未曾有の豪雨が襲った。線状降水帯が発生し、想定をはるかに超える被害となった。

 農家仲間のライスセンター、大型機械、収穫期目前の水稲や大豆が泥水に飲み込まれた。1年をか

 9月、収穫の季節だ。しかしこの原稿を書く手が重い。


 お盆の最中、千葉県を未曾有の豪雨が襲った。線状降水帯が発生し、想定をはるかに超える被害となった。

 農家仲間のライスセンター、大型機械、収穫期目前の水稲や大豆が泥水に飲み込まれた。1年をかけた積み上げが、一夜にして消えた仲間もいる。


 私自身も被害を受けたが、仲間の惨状の前では軽微と言うしかない。

 被害の全容は、まだ見えていない。同じ境遇の仲間として、言葉がない。無力感以外、今は何も出てこない。できることから、していくしかない。


 水は足りなければ飢え渇きに苦しみ、多すぎれば今回のような豪雨災害を引き起こす。農業とは常に自然と隣り合わせの営みであり、その厳しさを改めて思い知らされた。


 近年、地域の人口減少に伴い、慰霊の風習や地域の行事が簡略化され、あるいは静かに廃止されていく光景を目にする。

 しかしそこには、長い時間をかけて積み上げられた歴史と、学ぶべき知恵が宿っていたのではないか――。

 災害列島に生きる私たちは、先人が自然と向き合いながら刻んできた記憶を、地域とともに受け継いできた。

 その記憶が薄れていく今、地政学的不安も増す世界の中で、私たちは本当に大事なものを忘れてはいないだろうか。


 農は国の礎――。


 農業とはつくづくリスキーな営みだと再認識する。天候ひとつで、農政ひとつで、積み上げてきた1年が消えてしまうのである。

 

 天候はどうにもならない。しかし農政は人が考え、人が決めることだ。だからこそ、現場の声を届け続けなければならない。

 

「忘れてはならないこと」を胸に刻みながら、人生の時間軸の転換点とも言える秋に、稲を刈る。



 ◇次回は10月2日付

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