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連載

つれづれ農日記

米農家の根っこのある暮らし momo farm 栃木・大田原市 西岡智子氏

2026年06月12日

 先日、友人が「スローライフなのかどうか少々疑問」と書いていた。ニシンのサンショウ漬けや紅しょうがづくり。季節の恵みを追いかけるような暮らしの投稿に、思わずくすっと笑いうなずいてしまった。

 わが家も同じ。田植えも半ばを過ぎたころ。里山にも目

 先日、友人が「スローライフなのかどうか少々疑問」と書いていた。ニシンのサンショウ漬けや紅しょうがづくり。季節の恵みを追いかけるような暮らしの投稿に、思わずくすっと笑いうなずいてしまった。

 わが家も同じ。田植えも半ばを過ぎたころ。里山にも目を向けると、サンショウのやわらかい葉が次々と開き、タケノコやわらびがにょきにょきと顔を出す。柿の若葉、タラの芽、ウドの葉。季節の恵みが次々現れる。本当はその一つ一つをゆっくり味わいたい。けれど1年で最も忙しい時期のお米農家には、全てを味わい尽くすことは難しい。

 ハウスでは苗がどんどん育ち田植えを待つ。ビール麦は黄金色の波を広げていく。気付けば日が傾き、次の日がやってくる。「スローライフ」なんてすてきな言葉。けれど実際の暮らしは、決してゆっくりではない。サンショウの葉が堅くなる前に。タケノコが小さいうちに。梅が香り始める前に。季節は少しも待ってくれない。

 ただ、「追われる」という言葉ひとつでも、何に追われているのかで暮らしの景色はずいぶん違うように思う。時計や効率ではなく、季節の移ろいに背中を押され、今しかない香りや味わい、景色を受け取りたくて手を動かす。

 春作業に追われる中、農泊に訪れてくださったお客さまと、柿の若葉とサンショウの新芽、ニンジンの花を味わった。

 「これもこんなにおいしく食べられるんですね」と声が上がり、摘みたての葉を手に、美しく広がる田んぼの風景を眺めながら季節の話をした。里山の恵みを味わうために手を動かし時間をかける豊かさを感じた。

 麦刈りが終わるころ、今度は梅が香り始める。季節は次の手仕事を静かに運んでくる。慌ただしい毎日ではあるけれど、その忙しさの中でしか出会えない香りや味わい、風景がある。そんな季節の移ろう里山の中で、今年もまたできる限り手を動かしていたい。

 ◇次回は7月10日付

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