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民事信託による資産管理と継承⑥ 司法書士・髙橋宏治

2026年04月24日

〇民事信託と成年後見制度の相違点


 前回、成年後見制度は、裁判所の関与が大きく、民事信託は、当事者の契約に基づくので、裁判所の関与が極めて少ないという説明をしました。

 さらに重要な相違点を説明します。成年後見制度は、被後見人等の全財産を対象と

〇民事信託と成年後見制度の相違点


 前回、成年後見制度は、裁判所の関与が大きく、民事信託は、当事者の契約に基づくので、裁判所の関与が極めて少ないという説明をしました。

 さらに重要な相違点を説明します。成年後見制度は、被後見人等の全財産を対象とし、加えて成年後見人等は、財産管理だけではなく身上保護も担っています。それに対して、民事信託は、財産管理しかできず、その対象財産を委託者の一部財産とすることも可能です。財産管理のみを行いたい場合、民事信託制度は、より柔軟な運用が可能な制度です。信託に対して、成年後見制度は、判断能力が低下した者の人権をしっかり守れる制度です。

 逆に成年後見制度は、監督や保護がなくてもうまくいっている家族にとっては重荷となることもあります。成年後見制度の使いづらい点として、次のような点が指摘されています。①後見人等が選任されると原則として後見人制度の利用を止めることができない。②家庭裁判所が後見人等を決定するので候補者を推薦したとしても選ばれるとは限らない。③士業専門家が選任された場合、本人の存命中は、永続的に報酬が発生する。④本人の財産は、本人の生活維持のため利用することが原則であるため、それ以外の支出や(ぜい)(たく)品の購入などは後見人等が行わない、もしくは、行えない傾向がある。

 それに対して民事信託は、当事者の合意があれば解約をすることも容易です。また、契約締結時に契約書作成費用など比較的高額な支出がかかりますが、締結した後の費用は多くかかりません。受託者の行う法律行為を縛るのは契約なので、その内容によっては、信託財産を担保に借り入れを行うなど、柔軟かつ積極的な財産管理を行うことができます。

 以上のように現状では、成年後見制度に比べ民事信託は、柔軟な資産管理ができます。ただ、成年後見制度は、現在法改正の議論がされており、大きく改正される予定です。

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