【想像力のある文化】 women farmers japan㈱・佐藤可奈子

2026年06月12日

 先日、「ワンサミット2026in新潟」に参加した。全国から実践者やスタートアップ、自治体、企業、金融機関、そして農林水産業のキーパーソンなど150人以上が集結する、食と農林水産業に特化したカンファレンスだ。

 他と違うのは、登壇者・参加者の

 先日、「ワンサミット2026in新潟」に参加した。全国から実践者やスタートアップ、自治体、企業、金融機関、そして農林水産業のキーパーソンなど150人以上が集結する、食と農林水産業に特化したカンファレンスだ。

 他と違うのは、登壇者・参加者の境界なく、対話し「協創を生み出す場」であること。今回、私自身は登壇者として参加した。

 印象的だったのはある学生さんのコメント。「おじいちゃんが続けてきた農地が、『負の遺産』と家族から言われている。どうにかしたい」とのことだった。

 そのとき、もう亡くなってしまった農業の師匠たちの顔が次々と浮かんでは消えていった。熱中症になりかけながら、赤銅色に焼けた首、青々とした田んぼ、その背中。そして食を、農家自身それで食っていけるはずもない消費者の求める価格で、届け続けてきた。そんな農家の矜持(きょうじ)ともいえる場を、負の遺産だと?

 農業のリスクは起業以上だ。そもそも労働負荷は高く、さらに負荷をかける異常気象。災害・獣害などで投資が0になることもある予測不能な莫大(ばくだい)なリスク、そして定期的に数百万円以上の農機具の更新。人一人簡単に(つぶ)せてしまうリスクを、地方の小さな農家が、たった一人で背負っていることも多い。

 政策、草の根、どこからでも改革は必要だが、だからこそ私はゆらぎ・変化・成長を味わえる食文化をつくりたい。それは想像力のある文化だ。想像力のある文化は、多様なものや変化(農産物の気象由来、または生産者自身の成長による)に包容力があり、見えないものに気づける世界だ。誰が一番耐えてくれているのか。誰が一番泣いているのか。農家が生み出している尊い価値が、尊厳が、正しい対価として届くことこそ一丁目一番地だ。1袋100円上がるだけでも、大きく変わる。誰かが変えてくれるのを待つのではなく、自分たちから心動く世界をつくる。だからこそ今回のワンサミットで、同様にままならない現実を()み締め、前に進める多様な仲間の存在に勇気をもらった。

◇次回は7月10日付

有料会員に登録すると会員限定の有料記事もお読みいただけます