民事信託による資産管理と継承⑧ 司法書士・髙橋宏治
〇農地・農業における民事信託の活用
~農地所有適格法人を設立して信託という方法も~
最終回となる本稿では、農地および農業において民事信託がどのように活用できるかを検討します。
農地の所有権移転登記を行うためには、農地法所定の許可もしくは届出が
〇農地・農業における民事信託の活用
~農地所有適格法人を設立して信託という方法も~
最終回となる本稿では、農地および農業において民事信託がどのように活用できるかを検討します。
農地の所有権移転登記を行うためには、農地法所定の許可もしくは届出が必要となります(農地中間管理機構の農地売買等事業を除く)。残念ながら、農地法第3条第2項第3号の規定により信託の引き受けによる所有権移転には、許可はすることができないとなっており、農地を農地のまま信託の受託による所有権移転登記をすることはできません。農地法第5条には同条第2項第8号を除いて類する規定がなく、農地転用を伴う所有権移転については民事信託の手法を利用することが可能と思われます。
農地は物理的な不動産の価格が低いため信託により所有権移転をさせなくても贈与などで移転させればそれでいいのではないかとの考え方もあります。ただ、例えば農地以外の財産を信託の手法で管理、承継しようとした場合、農地だけ他の財産と管理、承継方法が異なってしまい財産の承継が複雑になってしまうなどの弊害があります。
また、認知症対策で民事信託を利用しようとした場合、農地のみ認知症対策ができなくなってしまいます。農地中間管理機構を利用した賃貸借も10年未満など比較的短期間の契約が行われる傾向にあり、その期間に賃貸人が認知症になってしまった場合は契約更新が危うくなってしまいます。
会社を利用して農地の信託に類する効果を得ることはできます。農地所有適格法人を設立し、その法人に農地を取得させ、その法人の株式を信託により後継者に受託させるという方法です。後継者が複数人いて後継者が決定していない場合などはこの手法が有効に活用できると考えられます。
信託を利用すると、他の法律行為に比べ柔軟な財産管理、承継が可能となります。農地についても信託の手法が利用できるといろいろな管理、承継方法が考えられると思われます。
この項はおわり








