湛水直播と乾田直播 幸手市・船川 由孝⑨
近年、農水省が稲の直播技術の普及に力を入れていますが、直播栽培自体は新しい技術ではありません。1960年代の高度成長期に田植えの労働力が不足し、その対策として農水省が乾田直播を推進しました。当時はわが家も、田植えの労働力不足から乾田直播に
近年、農水省が稲の直播技術の普及に力を入れていますが、直播栽培自体は新しい技術ではありません。1960年代の高度成長期に田植えの労働力が不足し、その対策として農水省が乾田直播を推進しました。当時はわが家も、田植えの労働力不足から乾田直播に転換しました。
ただ、雑草がすごくてね。高校生の頃、除草剤のミスト散布で大変な思いをしたのを今も覚えています。
62年に始まった農業構造改善事業にも、直播試験が組み込まれました。神扇地区の圃場整備で1~2㌶の大区画が造成されたのも、そのためだと思います。ただし、その後は田植機の登場や育苗施設の普及に伴って、全国的に移植栽培が再び主流になりました。弊社も、すべて移植栽培になり、周辺農家の要望で苗販売もしていました。
理由はいろいろあると思いますが、私の経験では、乾田直播の場合、何よりも雑草対策と地力の消耗が最大のネックでした。
十数年前にも改めて試験しましたが、乾田直播は、代かきをせずに播種するので、雑草が抑えられず、除草剤の使用量が移植栽培の2倍以上に増えました。日本人は米の消費が多いので、減農薬栽培を志向してきた立場としては、それだけでも抵抗があります。
除草剤だけでなく、地力を補うため肥料の投入量も増えます。省力化技術に見えて、良質米を生産するためには、手間もコストも移植栽培以上にかかったというのが実感です。
とはいえ、規模拡大に伴って、今の育苗施設では対応が難しくなったこともあり、近年は、湛水直播の試験をしています。レーザーレベラーの登場で均平化技術が安定したこともあり、湛水直播なら、除草剤の使用量も移植栽培とほぼ同じですみます。
ただし、適応する種もみの研究には時間がかかりました。例えば、鉄コーティング種子は、第1葉期まで水をはれず、その間は除草剤を散布できないため、やはり雑草対策に手を焼きました。
3年前に新たに導入した湛水直播用のコーティング種子では、その課題を解決でき、ここ2年、反収も移植栽培を上回る結果が出ています。まだ課題はありますが、うちの場合は、今後、湛水直播が有望かもしれません。
構成 榊田みどり









