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民事信託による資産管理と継承③ 司法書士・髙橋宏治

2026年04月03日

 今回は、利用例に基づいて具体的な説明をします。

 前に民事信託は認知症対策によく利用されるという説明しました。高齢者が資産を所有している場合、もし認知症になったらその資産を利用、また処分することが困難となります。それを避けるために資産管理を

 今回は、利用例に基づいて具体的な説明をします。

 前に民事信託は認知症対策によく利用されるという説明しました。高齢者が資産を所有している場合、もし認知症になったらその資産を利用、また処分することが困難となります。それを避けるために資産管理を子どもなどの若年者に任せる場合もあると思いますが、そういった場合に法律の仕組みにのっとり、かつ比較的安価に資産の管理処分権限を他者に移すことができる方法が民事信託なのです。

 利用されるケースとして、高齢者の所有しているアパートを信託財産にするケースがよく見受けられます。アパートは、入居率を上げるために大規模な修繕を一定期間で行う必要があります。入居者とのトラブルなど予期せぬ事態に対応する必要もあります。売却をすることもあるでしょう。また、そのアパートを金融機関からの借り入れで取得した場合、更新や借り換えなど借入金に伴う法律行為も行わなければなりません。頻繁に対応すべき事案のある不動産を高齢者が所有し管理することはリスクがあります。しかし生前贈与では贈与税なども高額になるため行えません。そのような場合に民事信託を利用し、管理処分権限のみ子どもなどに移転するのです。受託者となった子どもは、原則として自身の判断により、信託財産であるアパートを管理処分することができます。大規模修繕や、入居者とのトラブル対応のみならず、当該物件を担保に金融機関より借り入れを行ったり、当該物件の売却も可能となります。

 自宅のみを信託財産とする場合にも民事信託を使えます。例えば父親が独居する実家がある場合、万が一父親が認知症になり施設に入ってしまった時、実家を売却することは困難になったりします。実家を空き家にするリスクを回避したり、実家を売却して施設の入居費に充てたりするなどあらかじめ実家を信託しておけば対策をとることができます。

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