米農家の根っこのある暮らし momo farm 栃木・大田原市 西岡智子氏
彼との縁
この春、一人の若者がこの地を離れる。
地域おこし協力隊としてこの地に関わってくれた彼との付き合いは、まだ学生だった頃、今から10年前にさかのぼる。あの頃から、たくさんの人をここへと連れてきてくれた。そして、農泊をイメージできたのも
彼との縁
この春、一人の若者がこの地を離れる。
地域おこし協力隊としてこの地に関わってくれた彼との付き合いは、まだ学生だった頃、今から10年前にさかのぼる。あの頃から、たくさんの人をここへと連れてきてくれた。そして、農泊をイメージできたのも、彼の存在がきっかけだった。
人とのご縁は、どうつながり、どう深まっていくのか。不思議に感じることがある。場所とのご縁も、きっと同じなのだと思う。
ここで生きていくと決めた私とは、どこか違う感覚が彼の中にはあった。その在り方に触れるたびに、あたりまえだと思っていた足元が、静かにひらかれていく感覚があった。
私は、なぜこの地を選んだのだろう。そう問い直す時間もまた、彼がここにいてくれたからこそ、生まれてきたものだった。
人が暮らし、ともに生きるものたちがいて、やがて離れていく。その繰り返しの中で、見えない重なりが残っていく。
新しい場所へと歩む彼へ
旅人のようにここを訪れ、静かに関わり、響き合い、軽やかに去っていく。10年という歳月も、16代続いてきた営みも、長さではなく、ひとつの連なりとして息づいている。
手の中にある、やさしく、やわらかな光。受け取り、渡していくもの。そこで生まれたものは、その土地に残り、大地に刻まれていく。それらは決して消えることなく、静かに受け継がれていく。残そうとしなくても、失われることなく、ただそこに、あり続けるものなのだと思う。
新しい場所へと歩みを進めていくその先でも、またどこかで、やわらかく重なっていくのだろう。だから安心して、そのまま進めばいい。手放すことは、失うことじゃない。巡りの中で、またちゃんとつながっていくから。そしてその歩みが、やさしく、力強く、広がっていくことを願っている。
ありがとう。
◇次回は5月15日付








