二つのつながりで生きる~農村の自然と仲間
島根県の農村部で、福祉関係の役場職員から次のような話を聞いたことがあります。
最近、一人暮らしになった高齢の母親を、東京や大阪などに出た息子などが呼び寄せることが増えてきた。しかし、その後あまり良い話を聞かない。暮らしは便利で草刈りもしな
島根県の農村部で、福祉関係の役場職員から次のような話を聞いたことがあります。
最近、一人暮らしになった高齢の母親を、東京や大阪などに出た息子などが呼び寄せることが増えてきた。しかし、その後あまり良い話を聞かない。暮らしは便利で草刈りもしなくて良いものの、やることもなければ知り合いもいない。その結果、早くに病気や認知症になったりする事例が増えている。逆にいったん都会に出たものの、こんなところには住めないとひと月くらいで元の農村に帰った方が、かえって元気で長生きしている。
この話には、妙に納得させられるものがあります。先日も新潟県上越市の山間部で、90代の一人暮らし女性のお話を聞いてきました。さすがに買い物などは市内に住む娘さんが助けられていますが、今も自分で周りの畑を手入れして、送迎のある高齢者のサロンにも毎週出かけられます。
都会と違って、こうした農村での暮らしの中には、二つのつながりが生きています。一つは、自然とつながり、生命を育んでいることです。もう一つは、仲間とつながり、共感を育んでいることです。人間には、この二つのつながりが同時に存在することがとても大切なのではないでしょうか。
自然とつながり、自分の身体を使って自ら何かを生み出すことは、根源的な自信を培います。仲間とつながり、日々の喜びや悩みを分かち合うことは、心の安らかさをもたらします。そして、この二つのつながりが重なり、自ら育てたものを仲間にあげることもできるのです。もし都会の真ん中で何かをあげようすれば、お金を払って買うしかありません。
生み出しかつ贈ることのできる暮らし。農ある村に生きる素晴らしいところだと思います。そしてそれは、安易に高齢者を農村から引き離してはいけない理由でもあるのです。
◇次回は10月23日付









