仁義なき戦い 桂川町・古野隆雄氏⑥


8月初旬、中干しのため田んぼの水を落とした翌朝、大変なことが起きました。いつものように畦に立ってアイガモを呼んでも返事がありません。おかしいと思ったその時、2匹の野犬が高さ1.5㍍の網を飛び越え悠然と去って行きました。田んぼのあちこちにア
8月初旬、中干しのため田んぼの水を落とした翌朝、大変なことが起きました。いつものように畦に立ってアイガモを呼んでも返事がありません。おかしいと思ったその時、2匹の野犬が高さ1.5㍍の網を飛び越え悠然と去って行きました。田んぼのあちこちにアイガモの死骸が転がっていました。
すぐに置田さんに電話すると「野犬の多いところでは無理です」との返事。落胆しましたが、試行錯誤を重ねてきて、ここで尻尾を巻くわけにはいきません。今まで雑草が相手だったが、今度は犬と闘えばいいと気持ちを切り替えました。
野犬と私の〝仁義なき戦い〟が始まりました。敵を制するには、敵をよく観察し生態を知り、自分の頭で作戦を考えトライ&エラーを繰り返すこと。幼少期、山や川で鳥や魚を捕る経験を通じて学んだことです。
野犬は、アイガモを1、2羽は食べますが、残りはかみ殺して遊ぶだけでした。犬の先祖はオオカミ。アイガモを見ると野性の本能がよみがえるのでしょう。狩りを終えた野犬の勝ち誇ったような表情は、今も忘れられません。
翌年、アイガモ用の網を、田んぼの2㍍内側に張りました。犬は水にぬれるのを嫌うと思ったからです。実際に、水を張った田んぼに犬がいる光景は、一度も見たことがありませんでした。
しかし、それは私の「思い込み」でした。最初に放鳥した100羽のうち90羽が、1週間で殺されました。獲物がいれば、犬は水の中でもどこでも喜んで走るのです。次はキュウリネットを網の前に垂らしてみました。犬が足を絡ませて逃げると考えたのですが、犬はネットをズタズタに切って侵入し、ヒナは全滅。完敗でした。
今度は、より丈夫な海苔の養殖用ネットに変えました。すると、夜中にやって来た3匹のうち1匹がネットに足を絡ませ、危険を察知して3匹とも逃走。勝った!と思いました。しかし翌朝、やはりヒナは全滅。1匹がもがいた時に網がずり落ち、そこから再び侵入していたのです。
どうすれば徒党を組んだ野犬に勝てるか。考えあぐねていた時、星野村(現・八女市)の義姉に「気分転換に梅ちぎりに来んね」と誘われました。そこで偶然、イノシシ対策の電気柵を見ました。一瞬で「これで勝てる」と思いました。
構成 榊田みどり








