【真昼のビール】小説家・瀧羽麻子
〇春限定
先日、台湾出身の友人に、おすすめの台湾料理店に連れていってもらった。どの料理も本格的な味つけで大変おいしい。ただし日本通の彼女いわく、台湾には四季の変化があまりないため、和食ほど季節感を楽しめないのが玉に瑕らしい。今の時季
〇春限定
先日、台湾出身の友人に、おすすめの台湾料理店に連れていってもらった。どの料理も本格的な味つけで大変おいしい。ただし日本通の彼女いわく、台湾には四季の変化があまりないため、和食ほど季節感を楽しめないのが玉に瑕らしい。今の時季はなにが一番おいしいかと質問され、しばし悩む。カツオ、いちご、貝類、どれも甲乙つけがたいが、春限定といえばやはり山菜だろうか。
山菜というものの存在をはじめて知ったのは小学生のときだ。出会いの場は、家の食卓でも飲食店でもなく、国語の授業だった。教科書にふきのとうの物語が載っていたのだ。よいしょ、と懸命にふんばって重い雪を押しのけ、地上に頭を出す。春の訪れを告げる存在として、擬人化して描かれたふきのとうの姿はいかにも健気でいじらしく、食べられるものだなんて当時はよもや思わなかった。むろん、これほどの美味だとも。
〇即断即決
おとなになったわたしは、お品書きに山菜料理を見つけたら必ず注文する。そういうお客は多いようなので、即断即決が基本である。ぼやぼやしていると品切れになって、それはそれは悔しい想いをさせられる。山菜愛(と欲)が嵩じて、今では自分でも料理するようになった。しろうとには難しそうで躊躇していたが、近所の八百屋さんによれば、天ぷらなら、特にアクの強いもの以外は下ごしらえが要らないので初心者向きだという。ふだん揚げものは面倒で家ではやらないけれど、背に腹はかえられない。がんばってくれたふきのとうに敬意と感謝を表し、こちらもがんばるのが筋だろう。
先日は長野のお土産物屋さんで、郷土菓子や地酒にまじって生のワラビが並べられていて、思わず買い求めた。レジで「このあたりで採れたんですか?」とたずねると、店員さんは笑顔で答えた。
「ええ、そのへんで」
ええ? そのへんで⁉
店を出た後、道端に生えている草がどれもおいしそうに見えてきて弱った。
◇次回は5月29日付








