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コラム・社説

たにし閑話

ウオッチングされるヒト プチ生物研究家・谷本雄治

2026年07月10日

「こらっー!」


 大声で叫ぶと、ギィッと鳴いて飛び立った。なけなしのブルーベリーの実を横取りしていたのは、ムクドリだ。


 春には、イチゴが犠牲になった。奇形果や未熟果には目もくれず、良質果が熟すまで待って食べていく。すました顔つきだが、なかなか

「こらっー!」


 大声で叫ぶと、ギィッと鳴いて飛び立った。なけなしのブルーベリーの実を横取りしていたのは、ムクドリだ。


 春には、イチゴが犠牲になった。奇形果や未熟果には目もくれず、良質果が熟すまで待って食べていく。すました顔つきだが、なかなかの知能犯である。


 それならとプランターのまわりに、キラキラ光るテープを張った。花を咲かせていたブルーベリーの木のまわりにも張りめぐらせ、CDもつり下げた。それでも平気でやってくる。


 あわてて木全体を網で覆ったが、収穫時にはひと苦労だ。網を外して中に入り、ほんの数個取ってからまた網をかけ、すそをとめなければならない。


 「あいつ、何やってんだ?」

 「ふん。ヒマなのさ」


 仲間とそんな会話でもするように鳴きかわし、マン・ウオッチングを楽しんでいるように見える。優位にあるのは鳥の方で、われわれヒトは彼らの観察対象になり下がっている。


 ムクドリによる食害は耳にしていた。ゆかりのあるムクノキの実を食べるのは秋の一時期だけで、ほかの季節には果樹や野菜、虫など、なんでも口にする雑食性の鳥なのである。


 とにかく、ヒトをよく見ている。危害を加えられないと判断したら手が届きそうなところにまで近づき、チャンスをうかがう。それに数羽で寄りつくから、身ひとつでは防ぎきれない。


 昭和には、犬の言葉や気持ちがわかるという玩具があった。最近は、シジュウカラやカラスの鳴き声を解析する研究も進んでいる。ムクドリと会話できる日だって来るかもしれない。


 それでも、ごちそうを目の前にしての説得は難しかろう。対抗するには、鳥に負けない観察力を身につけるしかない。

 そんなことをぼーっと考えているからヒマ人とみられ、観察対象にされているのかも。


 追い払った鳥がとりこぼした実を拾って口に入れた。悔しいことに、甘くて美味だった。


◇次回は8月14日付

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